『フェイト/エクストラ CCC Foxtail』連載10周年記念特別対談! 「Fate」シリーズ原作者・奈須きのこ×コミカライズ著者・たけのこ星人が語る制作秘話【前編】

マンガ

公開日:2023/10/26

フェイト/エクストラ CCC Foxtail

フェイト/エクストラ CCC Foxtail
フェイト/エクストラ CCC Foxtail』(TYPE-MOON/マーベラスAQL:原作、たけのこ星人:漫画/KADOKAWA)

 アプリゲーム「Fate/Grand Order」(以下FGO)の大ヒットにより、幅広い層に認知されている「Fate」。そのシリーズのひとつであるコンシューマ用RPG「Fate/EXTRA CCC」のスピンオフ漫画『フェイト/エクストラ CCC Foxtail』(KADOKAWA、以下FoxTail)が、『月刊コンプエース』(KADOKAWA)で連載10周年を迎えた。物語が終盤に差し掛かったいま、著者・たけのこ星人氏と「Fate」シリーズの原作者・奈須きのこ氏の対談が実現。『FoxTail』制作裏話だけにとどまらず、前編の本稿では「FGO」の期間限定イベント「サーヴァント・サマーフェスティバル2023!」の振り返りトークなど、幅広い内容で語ってもらった。

取材・文=福西輝明

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「サーヴァント・サマーフェスティバル2023!」の思い出

――たけのこ星人さんがデザインを担当した鈴鹿御前〔サマバケ〕が登場した、「FGO」の期間限定イベント「サーヴァント・サマーフェスティバル2023!」(※1、以下サバフェス2023)を振り返ってみたいと思います。たけのこ星人さんは、このイベントをプレイして、どんな感想をお持ちになったでしょうか?

たけのこ星人(以下:たけのこ):水着アルキャス(アルトリア・キャスター)や水着モルガン、そして水着妖精騎士の3人が登場している点から「サバフェス2023」を第2部第6章の後日談でもあると捉えると、悲劇的だった第2部 第6章と比べて「サバフェス2023」はみんな仲良くをテーマとした幸せな内容で、ファンが求めているものをお出ししてくれてごちそうさまです! という感じでした。

 鈴鹿御前のデザインや設定を担当した僕としては、南の島で夏を心行くまで満喫してくれて本当に嬉しかったです。今までは清少納言をはじめとする日本のサーヴァントとのドタバタはあったんですけど、今回はメリュジーヌなどいろいろなサーヴァントと絡ませてもらえましたし、『FoxTail』でもやりとりのあったガウェインと組ませてもらう場面もあって、ワクワクしながら遊ばせてもらいました。僕の方で鈴鹿の設定まわりの監修をさせていただきましたが、シナリオには触れていなかったので、内容を読んだときに改めて奈須さんの鈴鹿に対する解像度の高さに驚かされましたね。ありがたい!

――「FGO」の夏イベントで2回目の「サバフェス2023」を描くにあたり、奈須さんはどんな内容にしようとお考えになったのでしょうか。

奈須きのこ(以下:奈須):もともと、2023年の夏イベントは2度目の「サバフェス」で行こうとは考えていました。そこで武内(※2)が「水着アルキャス描きたい」「水着モルガン描きたい。トネリコも別の霊基段階で描きたい」「そうなると妖精騎士の3人も必要だよね!」と言い出しまして。この面子がそろってしまったら、あまりにも「妖精國」の要素が強くなりすぎてしまう。妖精國アフターの要素は盛り込むけど、基本的には「サバフェス」がメインであることを忘れてはいけない。そこで、カルデアから主人公に同行する「サバフェス」要員として、鈴鹿とクロエ(※3)に頑張ってもらおうと思ったんです。

 初期プロット段階では、物語は1~5フェイズに分かれていました。フェイズ3の「レース編」で鈴鹿が主人公の仲間として電撃参戦。そしてフェイズ4では、同人誌原稿の締め切りに間に合わなかったイリヤをフォローするためクロエが奮闘する、という形でした。でも、その後に上がってきた水着鈴鹿と水着クロエの立ち絵を見たら、じつに素晴らしい出来で、これは物語の冒頭のファーストインパクトで使わない手はない、と。そこでプロットを大幅に変更して、物語冒頭からふたりに同行してもらうという流れにしました。そうしたら200KBで終わらせる予定のシナリオが350KBにまで膨らんでしまいましたが……。

たけのこ:そうだったんですか!? いやー、ありがたいなぁ……。

――上がってきたイラストの内容によって、シナリオの内容を大幅に変えるということはよくあることなのですか?

奈須:「FGO」の場合は、その時に登場した新規サーヴァントが欲しい、このサーヴァントと一緒に冒険したい!と思っていただくのが重要なので、上がった絵に合わせてプロットを変更することはたまにあります。今回の鈴鹿とクロエに関しては、登場タイミングは早まったけれど、プロットの大筋はあまり変えていません。たけのこ星人さんの鈴鹿〔サマバケ〕を見たとき、「この鈴鹿なら自分の欲求を押し殺している主人公をフォローできる」と感じました。物語序盤から中盤まで、主人公は諸事情で同人誌制作に参加できず、夏をエンジョイしきれていない「仕事人間」になってしまって。そんな主人公に大切なことを気づかせ、ともに「アースマンレース」に参加して思い切り夏を満喫し、新たな気持ちで再び立ち直らせる。その重責を担えるのは、見た目も中身もテンションアゲアゲな鈴鹿が相応しいだろうと。一方クロエですが、こちらはひろやまさん(※4)からの設定で「執筆業ではなく、作家さんたちの執筆作業を助ける編集者」という属性を与えられていました。『サバフェス』に合わせてクロエのキャラ付けを決めてくれて、こちらも助かりました。結果、レース方面は鈴鹿、サバフェス方面をクロエという形で、ふたりのかわいらしい「黒ギャル」が中盤までの物語を引っ張ってくれました。

――「サバフェス2023」でレース要素を入れたのはなぜですか?

奈須:ハワイといえば、青い海と空以外にも有名なトライアスロンの大会「アイアンマンレース」があります。前回の「サバフェス」では盛り込めなかったので、今回レース展開を入れてみたかったんですが、サーヴァントたちが行うレースなので普通のトライアスロンではなく、F1風をやる予定ではありました。なので、たけのこ星人さんには、鈴鹿のデザインをお願いするときに「レースクイーン風に」とお願いしました。その後、いろいろあって乗り物ならなんでもOKの「アースマンレース」になったのですが。

たけのこ:そういう流れだったんですね! 武内さんから「鈴鹿はレースクイーン、もしくはレーサー風でお願いします」と言われて「水着なのにレーサー……?」と(笑)。僕は車やバイクの知識がまったくないので、とりあえずセクシーなレースクイーンぽい水着でお茶を濁そうかと思ったんです。でも、「鈴鹿」が「レース」に参加する……これはレーサーから逃げるわけにはいかないな! と決心して、レースクイーン雑誌やバイク雑誌などを読んで自分なりに勉強して、水着の他にバイクもデザインしてみたんです。かなり苦心しましたが、イベントでは活躍してくれて嬉しかったですね。

フェイト/エクストラ CCC Foxtail

――鈴鹿〔サマバケ〕をデザインするにあたって、どのような思いで臨まれましたか?

たけのこ:もうプレッシャーしかなかったです。というのもデザインの依頼を受けた後、水着クロエ担当のひろやまさんからDiscordに誘われて「たけのこさんは他の水着キャラが誰なのか聞きました? アルキャス、モルガン、妖精騎士の3人、それにオベロンの水着霊衣が来るそうです」と言われて、これはヤバいことになってるぞと……。それで僕らはふたりで「この人気サーヴァントたちと並び立つためには、相当気合入れないといけない」と決死の覚悟でデザインに臨みました。ピックアップ召喚で鈴鹿を引いてくれた方に喜んでもらうためにも、絶対かわいいキャラクターに仕上げなければ、と。それでいろいろなパターンの表情差分を用意するなど、自分ができることはなんでもやろうと思ったんです。

奈須:ひろやまさんも同じ思いだったようで、今回の水着サーヴァントで表情差分が一番多かったのが鈴鹿とクロエでした。あ……いえ、最終的にアルキャスやミコケルもとんでもない差分数になったけど……。自分の場合、シナリオ執筆時はどの表情を使おうか見ながら作業するんですけど、特に鈴鹿はほにゃっとしたギャグ顔がとてもかわいくて、事あるごとにあの表情を使っていました。それでも鈴鹿の表情差分は32もあったので、イベントのシナリオではすべて使いきることはできませんでしたが、マイルームではシナリオ中に見られなかった他の表情も見られます。鈴鹿の表情差分をご覧になりたい方は、マイルームでじっくりご鑑賞いただければと。

フェイト/エクストラ CCC Foxtail

たけのこ:今回は鈴鹿の宝具演出のアイディアも出させていただきました。「FGOアーケード」の鈴鹿御前〔サンタ〕の宝具演出は自撮りで締める形だったので、サンタと対になっている鈴鹿御前〔サマバケ〕にも自撮りさせてみたいなと。それで武内さんに「鈴鹿のカットインのイラストも僕に描かせてください」とお伝えして、鈴鹿のキメ顔をラストに入れさせていただきました。鈴鹿のレアリティはSRになるだろうけど、宝具演出も凝ったものにして、ほかの水着サーヴァントたちとの差を少しでも埋めたかったんです。

 僕のわがままを受け入れてくださった奈須さんと武内さんのご英断には、感謝しかありません。そして、実際に完成した鈴鹿の宝具演出は、僕がイメージしていたものの10倍カッコよかったので、めちゃめちゃテンション上がりました! ラセングルの制作スタッフの方々にも、この場を借りて感謝したいです。

フェイト/エクストラ CCC Foxtail

※1 サーヴァント・サマーフェスティバル2023!
2023年8月11日~9月1日に「FGO」内で開催された期間限定イベント。2018年に行われた「サーヴァント・サマー・フェスティバル!」に引き続き、南の島で行われる同人誌即売会で巻き起こる事件を解決することになる。

※2 武内崇
TYPE-MOONの代表取締役であり、「Fate」シリーズ一連のキャラクターデザインや原画を務めてきたクリエイター。「FGO」ではアートディレクション、キャラクターデザイナーとして参加。

※3 クロエ
クロエ・フォン・アインツベルン。「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」の登場人物のひとりで、主人公であるイリヤの分身ともいえる存在。「サバフェス2023」では水着姿で登場した。

※4 ひろやまひろし
「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」シリーズの作者。コミックスは3シリーズ通巻20巻という長期連載となっている。

鈴鹿〔サマバケ〕デザイン秘話

たけのこ:じつは鈴鹿のデザインには裏話がありまして。ひろやまさんとDiscordで話している場に、三輪士郎さん(※5)もいらっしゃいまして。「こんな感じでどうですか?」とその場でさらさらと、めちゃめちゃオシャレな鈴鹿の水着のデザインを描いてくれたんです。三輪さんは「この絵は好きに使ってもらっていいですよ」と言ってくれたんですけど、そのまま使わせてもらうのは気が引けたのと、水着鈴鹿を自分でデザインできるまたとない機会だったので、残念ながら三輪さんのデザインはお蔵入りとさせていただきました。

 ただ、出来上がったものは全然別物ではあるのですが、自分の中でめちゃくちゃ参考にさせていただいてるんですよね。自分だけで堪能するのはもったいないので、みなさんにも見ていただきたい!

フェイト/エクストラ CCC Foxtail
三輪士郎による鈴鹿御前〔サマバケ〕水着案

奈須:三輪さんはクロエのデザインもパパっとその場で描いて、「こんなのどうですか?」ってやったそうじゃないですか。天才め……!!!

たけのこ:ほんとにすごいですよねぇ。そんな三輪さんのデザイン画を横目に、自分でデザインをするという恐怖! そういえばお蔵入りにしたと言いましたが、三輪さんからいただいた「ピンクパンサーのイメージとか、いかがですか?」というアドバイスは、ありがたく活かしました。

奈須:ああ! 鈴鹿の水着がピンクなのは、ピンクパンサーから来ていたのか! 今さらながら納得しかない!

――鈴鹿〔サマバケ〕はファンの間でも「かわいくて、普通に強い」「宝具演出のカットインが最高」と、かなり評判が良かったようです。

奈須:改めて振り返っても、SRからSSRにするべきなのではと思うくらい、鈴鹿〔サマバケ〕はデザインが良かったし、宝具演出も凝ってるし、性能面も優秀だし、どの再臨のバトルモーションも映えるんですよね。

たけのこ:ありがとうございます。僕としては「なんとか妖精國の人たちに見劣りしないように!」みたいな気持ちで必死でしたが、結果的には沢山のお褒めのお言葉を見かけてホッと胸をなでおろしていますし、なによりみなさんに喜んでいただけて「鈴鹿よかったねー!」って思いました。

――奈須さんご自身が「サバフェス2023」全体を振り返っていかがでしたか?

奈須:「サバフェス」は「サーヴァント×コミケ」という、とち狂った組み合わせのため、まともな精神では乗り越えられないんです。また、TYPE-MOONはもともとコミケからスタートしたサークルなので、「サバフェス」に対して特別な思い入れもあって、絶対に成功させなければという意気込みもありました。制作当時は体調不良に悩まされたりもしましたが、なんとか乗り切ることができましたし、終わってみたら楽しいイベントだったなと思います。

「FGO」は参加クリエイターのみなさんにいろいろな無茶ぶりをしているイメージがあるかもですが、「とにかく楽しい!」系のイベントでは、イラストレーターさんたちの「あれを描きたい! これも描きたい!」という情熱があふれることも多い。「この熱量をどうやって一つのお話の中でまとめればいいんだ……?」と悩むのも、ライターの苦しみでもあり、楽しさでもあります。

※5 三輪士郎
漫画家・イラストレーター。「FGO」ではブリュンヒルデやシグルドのデザインを担当している。小説『Fate:Lost Einherjar 極光のアスラウグ』(桜井光/TYPE-MOON BOOKS)のイラストも担当。

漫画『FoxTail』誕生のきっかけ

――ここからが本日でちょうど連載10周年を迎える『FoxTail』についての話題に移りますが、たけのこ星人さんがTYPE-MOON作品のコミカライズを描くことになったきっかけを教えてください。

たけのこ:僕は「Fate」の桜が好きで何冊か同人誌を出していましたが、とはいえあまり多くの同人活動もしてなかったですし、TYPE-MOON好きとしての露出は多くなかったと思うんです。そんな中、作家友達のほた。さん(※6)がKADOKAWAの編集さんに「Fate」作品のコミカライズを描ける漫画家がいないかと聞かれて、「たけのこさんなら喜ぶと思いますよ」って僕を推してくださったそうで。それでKADOKAWAさんから「Fate/Prototype」や「魔法使いの夜」のアンソロジーに参加してほしいというご依頼をいただいたのが、そもそものきっかけですね。

奈須:僕の宝物のひとつに、当時たけのこ星人さんが出した数少ない同人誌がありまして。アンソロジーの企画をいただいたときに、作家リストにたけのこ星人さんのお名前を見つけて「ぜひこの方に依頼してください!」とお伝えしたんです。

たけのこ:えっ、そうだったんですか! その話、初めて聞きました!! うわー嬉しい!!

奈須:「Fate/EXTRA CCC」のスピンオフ企画『FoxTail』の候補作家としてたけのこ星人さんを推したのは武内でした。彼はたけのこ星人さんが描かれたアンソロをとても気に入っていて、「あれだけ漫画力の高い人なら大丈夫」と断言していました。とはいえ、アンソロ1本描くのと雑誌連載とでは土俵がまったく違うので、まずは『コンプティーク』(KADOKAWA)誌で「CCC」の短編プレコミカライズを描いていただいて、実力を測らせていただくことになりました。そうしたら抜群のものを描いていただけたので、正式に『FoxTail』の連載をお願いすることにしたんです。

フェイト/エクストラ CCC Foxtail
「Fate/EXTRA CCC」発売直前の紹介漫画として描かれた短編(コミックス1巻収録)。本作ではキャス狐(キャスター)でなくセイバーを描いている

――『FoxTail』とはどんな作品なのか、改めてご説明いただけますか?

たけのこ:ざっくり説明すると、「Fate」シリーズ初のRPG「Fate/EXTRA」(※7)の続編で「Fate/EXTRA CCC」(※8)という作品がありまして。「EXTRA」は相棒となるサーヴァントを選んでともに戦う事になるんですが、『FoxTail』はそのうちのひとりであるキャス狐(キャスター)を主役として「CCC」の別側面・別ルートを描いたオリジナルストーリーの漫画となります。設定だけ存在してゲームで未登場だったサクラファイブと、漫画ならではのオリジナルキャラクターである坂神一人とそのサーヴァントの鈴鹿御前を絡ませ、膨らませた形です。

フェイト/エクストラ CCC Foxtail

奈須:「CCC」は「Fate/EXTRA」のアンサー的なRPGとして作ったもので、当時の奈須きのこ作品の中では最高点をあげたい作品だと思っています。ただ、「Fate/EXTRA」から連なる世界をもう少し広げたいという思いもありました。あの頃、岸波白野と赤セイバーを主人公に描いた「Fate/EXTRA」のコミカライズをろび~なさん(※9)が連載されていましたが、それが終わったら引き続き「CCC」のコミカライズが始まるだろうし、そうなるとキャス狐の出番は完全になくなってしまう。なので、なんらかの形でキャス狐を主人公にした「CCC」のコミカライズを描いてもらえないだろうか、という考えがありました。それで、武内と相談して「CCC」のスピンオフ作品として『FoxTail』の企画を作りました。たけのこ星人さんに連載をお願いするとき、設定だけはあったけれど「CCC」の作中では結局使えなかった「サクラファイブ」の設定を何かの形で使ってもらえたらとお渡ししたんです。

たけのこ:ご依頼を受けた当時、僕は成人向け漫画家としてはそれなりに活動していましたが、一般向けでは知名度がゼロでした。そのため「たけのこ星人」という変な名前の漫画家が「CCC」のスピンオフを描くといっても、どれだけの読者が信頼してついてきてくれるだろうか……という不安がありました。でも、設定だけ明かされていた「サクラファイブ」を物語にガッツリ組み込めば、TYPE-MOONファンなら追いかけてくれるだろうと思ったんです。少なくとも自分ならガッツリ食いついて楽しーってなるでしょうし!

――『FoxTail』のストーリーは、ほぼたけのこ星人さんのオリジナルだそうですね。

たけのこ:そうですね。とはいえ、当然自分ひとりの力で作っているワケではなくいろんなフォローをしていただいていますよ! 当初、僕としてもTYPE-MOONさんの作品のコミカライズをやらせてもらえるのは嬉しかったし、奈須さんや武内さんの企画に乗らせてもらって漫画を描くことにワクワクしていました。でも、「ストーリーとオリジナルサーヴァントはたけのこ星人さんが考えてください」と言われて、あれ?思ってた以上に大変なことになりそうだぞと。責任の重さに尻込みもしましたが、TYPE-MOONファンのひとりとして、その世界の一翼を担える嬉しさは大きかったです。

奈須:たけのこ星人さんの力は、それまでの作品を拝見して把握していましたし、この方なら僕らが主導でやるよりもご自分で物語を考えた方が絶対に面白いものになる、という確信があった。たしか最初の打ち合わせで、シンプルに「CCC」のキャス狐ルートを描くか、それとも「CCC」を題材にキャス狐を主人公にしたまったく新しい作品を描くか、どちらがいいですか?という重たい選択をたけのこ星人さんに迫りました。

たけのこ:そうでしたね。せっかくだから面白そうな道を行こうということで、オリジナル展開をやることになりましたが、プレッシャーは計り知れないものでした。

奈須:第1話は前後編仕立てだったんですが、最初は学園ものかと思わせておいて、ラストで「これガチのやつじゃん!」と驚かせる構成はお見事でした。第1話のネームを拝見したとき、すごくインパクトがあって面白くて、たけのこ星人さんにお願いして本当に良かったと感動したのを覚えています。たけのこ星人さんの絵はとても緻密できれいなので、あのときいただいたゲラ原稿は今も保存してありますよ。

たけのこ:そんなに気に入っていただけていたとは、作者冥利に尽きます! 『FoxTail』は「CCC」の生みの親である奈須さんに一番に楽しんでもらいたい、そしてかつて漫画を描かれていた武内さんに認めてもらいたい、という気持ちで描いていました。おふたりに喜んでもらえていたのであれば、いろいろな苦労も報われます。

フェイト/エクストラ CCC Foxtail
当初学園ラブコメというふれこみでスタートした本作だが、月海原学園をキングプロテアが強襲し、学園での日常が一気に崩壊する

※6 ほた。
漫画家・イラストレーター。『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』のコミカライズなどを連載。

※7 Fate/EXTRA
2010年7月22日に発売したPSP専用ソフト。主人公の相棒となるサーヴァントを「剣を携えた、男装の少女」「赤い外装に身を包んだ武人」「妖艶な半獣の女性」の3人の中から選び、月の聖杯戦争に立ち向かう。現在リメイクとなる「Fate/EXTRA Record」が開発中。

※8 Fate/EXTRA CCC
2013年3月28日に発売したPSP専用ソフト。Fate/EXTRAの続編。主人公のサーヴァント候補に「ギルガメッシュ」が加わった。月の裏側を舞台としたBBとの戦いが描かれている。

※9 ろび~な
『フェイト/エクストラ』(全6巻)、「フェイト/エクストラCCC」のコミカライズを担当。「CCC」のコミックスは現在第6巻まで発売中。「FGO」ではドブルイニャ・ニキチッチのデザインを担当している。

■対談の後編は10月27日(金)に配信予定!

©TYPE-MOON / Marvelous Inc.
©TYPE-MOON / FGO PROJECT

プロフィール
●たけのこ星人 漫画家。2013年より本作『Fate/EXTRA CCC FoxTail』を手掛ける。「FGO」では本作のオリジナルサーヴァントである鈴鹿御前のキャラクターと設定を担当。また間桐桜好きでも有名。

奈須きのこ TYPE-MOON所属シナリオライター。「Fate/stay night」をはじめとする一連の「Fate」シリーズでシナリオを手掛けている。「FGO」ではメインシナリオライターとして、参加作家が執筆するシナリオの監修も行う。