万葉集を令和言葉で訳してみた。「てゆーかさー人として生きるより酒だるとして生きるほうがよくね?」の元なる歌は?

文芸・カルチャー

更新日:2023/12/1

太子の少年 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集2
太子の少年 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集2』(佐々木良/万葉社)

 ある万葉集に収録されている和歌を、今風の若者現代語に訳すと、次のようになる。

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【訳文】

愛の弓で
君のハートを狙ってるでぇ
くんのかい? こんのかい!
こんのかい? くんのかい!
くんの? こんの?
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 上記は、テレビや新聞でも話題になった、令和言葉・奈良弁で訳した万葉集『愛するよりも愛されたい 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集』(佐々木良/万葉社)に収録されているもの。この本を紹介した下記レビューが好評だったことからも、収録されたユニークな訳文の数々が大いにウケているとわかる。

 あの和歌を現代風にしてみた→「くんのかい? こんのかい! こんの? くんの? いや こんのかい!」令和言葉・奈良弁で訳した万葉集が面白すぎる

 さて、シリーズの第二弾が登場した。タイトルは『太子の少年 令和言葉・奈良弁で訳した万葉集2』(佐々木良/万葉社)。前作は大伴家持の歌を中心にしたものだったが、本書はタイトルから推察されるとおり、聖徳太子、ならびに飛鳥京の歌が中心となっている。

 本書は、万葉集に聖徳太子の歌が一首だけある、として明かしている。原文から紹介したい。

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【原文】

家ならば 妹が手まかむ
草枕 旅に臥やせる この旅人あれ
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 この歌は、本書がたとえるに、困っている人を助けるために自己の危険を顧みず、食べ物をわけ与えるアンパンマンのような内容。聖徳太子はお腹をすかせて倒れている旅人を見つけ、持っていた飲み物と食べ物をわけ与えたそうで、それを歌にしたものだ。本書流の訳文は、次のようになる。

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【訳文】

旅人が お腹をすかせて倒れている
家にいたなら 恋人と寝てたんやろうに…
悲しいなぁ…
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 本シリーズは、このように令和言葉・奈良弁で難しそうな万葉集を若者にも読みやすくしているのが特長だ。そして、本書には数多くの「愛の歌」が収録されている。「愛」にも様々な形がある。先に紹介した聖徳太子の歌は人間愛によるものと解釈できそうだが、もっと直接的な異性への愛を綴った歌としては、次のようなものがある。

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【訳文】

やすちゃんのLINEゲットした……
みんな無理って思ってたやろ〜
オレは… やすちゃんのLINEゲットした!! (ッシャ)

【原文】

我れはもや 安見児得たり
皆人の 得かてにすといふ 安見児得たり
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 本書によると、「やすちゃん」とは天皇のもとで采女(うめね)として働く女官「安見児(やすみこ)」。采女は天皇以外の人との恋が禁じられており、アタックした藤原鎌足が禁断の恋に溺れていた様子がわかる。

 失恋の歌もある。

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【訳文】

庭に 草生えてんねんけど 
失恋中のオレには 草すら生えん www

【原文】

我が宿は 軒にしだ草 生ひたれど 
恋忘れ草 見れどいまだ生ひず
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 長旅中の夫を家で待つ妻は、苔を生やす。

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【訳文】

別れるつもりないから ずっと 待ってんねんけど 
帰ってこなさすぎて 苔生えた w

【原文】

結へる紐 解かむ日遠み 
敷栲の 我が木枕は 苔生しにけり
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 子どもへの無条件も愛も歌われている。

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【訳文】

メロン食べる子 めっちゃかわいい〜~ 
マロン食べる子 めっちゃかわいい〜~ 
子どもって 不思議やんなぁ 
いつまでも見てられるから 寝られへん 

#奈良漬 #瓜の粕漬 #種類いろいろある #メロン奈良漬 #スイカ奈良漬

【原文】

瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ 
いづくより来りしものぞ まなかひにもとなかかりて 安寐し寝さぬ
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 愛はなにも人だけに向けられるものではない。酒などにも向けられている。次の大伴旅人による歌を、本書は「酔っぱらって書いたのか…?」とツッコんでいる。

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【訳文】

てゆーかさー 人として生きるより 
酒だるとして 生きるほうがよくね?

【原文】

なかなかに 人とあらずは 
酒壺に なりにてしかも 酒に染みなむ
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 このように、本書はありとあらゆる愛とユーモアの歌に溢れており、読んでいて情感が揺さぶられる。辛辣な現代を生きる私たちは、愛に飢えているのかもしれない。最後に、物価上昇や増税で苦しむ私たち民草の心を揺さぶる一首を紹介して、本記事を終えたい。庶民が愛のない役人や政治家に苦しめられるのは、古今東西、変わらないようだ。

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【訳文】

政治家たちは 今日も 弱いもんイジメして ヘラヘラしてんねやろな!

【原文】

さす竹の 大宮人は 今もかも 人なぶりのみ 好みたるらむ
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文=ルートつつみ
@root223