虐げられて育った少女には、龍神の許嫁の証があった…『鬼の花嫁』作者の描く、新たな和風シンデレラストーリー!

文芸・カルチャー

PR 公開日:2023/10/28

龍神と許嫁の赤い花印
龍神と許嫁の赤い花印 ~運命の証を持つ少女~』(クレハ/スターツ出版)

 毎晩のように、夢に出てくる人がいる。優しく微笑むあの人を見かけるたび、夢だと分かっていても、胸のドキドキが抑えられない。どうしてこんな夢ばかり見るのだろう。悲惨な現実が妄想を生み出しているのか。——いや、もしも、そんな夢を見続けているのだとしたら、もうすでにあなたの運命は動き出しているのかもしれない。

 夢の中で出会った人が、実は、運命の人だとしたら……。そんな運命の恋を信じずにはいられない物語が『龍神と許嫁の赤い花印 ~運命の証を持つ少女~』(クレハ/スターツ出版)。シリーズ累計150万部突破の『鬼の花嫁』の著者・クレハによる新たな和風シンデレラストーリーだ。幻想的な世界観の中で紡がれていくラブストーリーはひたすら胸キュン。読めば読むほどウットリとした気分にさせられる。

 天界に住まう龍神とその伴侶となる人間を引き合わせるために作られた、龍花の町。そこから遠く離れた山間の村に生まれた女の子がこの物語の主人公だ。彼女の名はミト。生まれた時からミトの手には、龍神の伴侶の証である椿の花印が浮かんでいた。本来なら花印は誇るべきものだが、この村に限ってはそれは凶兆の証。ミトは周囲から「忌み子」と呼ばれ、16歳になった今でも虐げられ続けている。このままでは、運命の相手である同じ花印を持つ龍神とは永遠に会えそうにもない。だが、ミトは夢の中で、ある男に出会う。その名は波琉(ハル)。ふたりの間にある見えない壁をものともせず、彼らは交流を深めていく。そして、ミトは、夢の中で出会った波琉に確かな恋心を抱き始めていた。

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 ミトを取り巻く現実はあまりにも悲惨だ。ミトには戸籍すらない。本来ならば花印を持つ子は国に報告義務があるが、村長がそれを許さなかったのだ。だから、ミトは学校にも通えない。村人たちはミトをいじめるのはもちろんのこと、両親にも嫌がらせをしてくる。どうして、そこまでするのか。それには、過去の出来事が影響しているようだが、ミトとは無関係のはず。だが、大切な人たちまで虐げられる現状に、ミトは幾度となく「自分が生まれてこなければ」と思わずにはいられなかった。

 そんなミトはどのように救われていくのだろう。あまりにも理不尽な出来事を目の当たりにするたびに、早く救いが来てほしいと思わずにはいられない。そして、ミトの良いところは、決して受け身ではないところだ。現状をどうにか変えたい。そんな思いが、ミトを突き動かしていく。

「やっと会えたね」——その言葉に、ミトだけでなく、私たちも思わず、ジーンとくる。どんな困難があっても、惹かれ合うふたりは決して引き離すことはできない。そんな運命の恋の力強さを感じさせられる。

『鬼の花嫁』同様、本作はコミカライズ化される。電子版が10月から先行配信中だというから、こちらも見逃せない。この甘美でロマンチックな世界を、小説はもちろんのこと、コミックでも、ぜひとも体感してみてほしい。つい心が弾んでしまう。ときめいてしまう。惹かれ合うふたりの物語に、きっとあなたも、運命の恋への憧れを感じずにはいられないだろう。

文=アサトーミナミ