黒柳徹子「今でも寝る前に本を読む」42年ぶりの続編『続 窓ぎわのトットちゃん』執筆に至った想いを語る
公開日:2023/10/28
国内で800万部、世界では2500万部を売り上げた黒柳徹子氏の自伝的小説『窓際のトットちゃん』。「落ち着きがない」という理由で小学校を退学になったトットちゃんこと黒柳氏が、自由な校風のトモエ学園へ転校。のびのびとした毎日を過ごす様子を綴った一冊です。
その42年ぶりの続編として先日刊行されたのが、『続 窓ぎわのトットちゃん』。黒柳氏がまだ小学生だった頃の、幸せな生活から本書はスタート。次第に戦争の影が忍び寄り、父は出征、母とトットたちは青森へ疎開します。父の出征の日、疎開先へ行く列車での出来事など、辛い毎日の中でも黒柳氏独特のユーモラスでチャーミングな着眼点は健在。独自の視点で当時の出来事がまるで昨日のように鮮やかに描かれるからこそ、日常を壊していく戦争のむごさが際立ちます。
終戦後、トットは東京へ戻って女学校へ入学。自分の才能がどこにあるのかと悩みながらも「子どもに上手に絵本を読んであげられるお母さんになる」ためにNHKのオーディションを受験します。そこから女優の道を進み始め、ニューヨークへ留学に行くまでで本書は幕を閉じるのですが、こちらも読みごたえ満載。ひとりの女性として将来に悩む黒柳氏の姿に親近感を覚えました。
本書の発売日には記者会見が行われ、黒柳氏が登壇。続編を書こうと思った理由から黒柳氏が考える読書の魅力まで、多くのことが語られた会見の様子をインタビュー形式でお伝えします。
まず黒柳氏は会見の冒頭で、42年経ったいま、続編を書こうと考えた理由について以下のように語りました。
黒柳:ウクライナの侵攻があったことが、この本を書こうと思ったきっかけかもしれません。やはり子どもにとって一番嫌なことは、自由じゃないことだと思うんですね。私にとっては一番自由じゃなかったのが戦争中。何をやっても「いけない」って言われて逃げ惑った戦争中のことは、思い出すのも嫌だったんです。でもそのことを考えて、続きを書こうかなと思ったわけです。
――前作『窓際のトットちゃん』は黒柳さんの人生にとってどんな存在ですか?
黒柳:あの本は随分いろんな国の方が読んでくださって、いろんな国からお手紙をいただきました。私よりも年上かもしれない人が英語版を読んで、「泣いた」って手紙をくださったんですね。そのときに、「ああ、何かそういうものがあるのかな」と。子どもとか大人とか関係なく、何か子どものときの清らかな感じのものが相手の方の胸を打ったのかなと。ベストセラーになったおかげで、前から作りたいと思っていた耳の聞こえない聾唖者の方たちの劇団を作れたし、ユニセフの親善大使になったのも、緒方貞子先生があの本をアメリカのユニセフの事務局長に渡してくださったからなんです。「これだけ子どものことがわかっていればいいだろう」と親善大使に選ばれた。そういう意味ではとってもありがたい本でした。
――今回の感想が届くのも楽しみですね。
黒柳:(書き終えた)続編を読んで「私は何て変わらない人間なんだろう」と思ってびっくりしました(笑)。何かにつけて問題児だった私が何かいい方に変わっているのかと思っていたら、「何も変わってないんだな」と。でもそんなに変わっていなくても、一応芸能界というところでこれだけ何十年と仕事ができたんだから、「まあいいか」と思って。自分を納得させています。
――本作をきっかけに『窓ぎわのトットちゃん』の世界を知る若い世代が増えるかと思いますが、黒柳さんの思う読書の魅力を教えてください。
黒柳:私、子どもの頃足が悪かったので病院に入院していることが多くて。それで本をいっぱい読んで「本っていいな」と思ったんです。昔の本は例えば『暗夜行路』にも“あんやこうろ”って仮名が振ってあったから子どもも読めたんですね。どんな本でも読めると、子どもというのは面白くて読むものだと思うんです。私もそういうふうにして本をたくさん読んで、それによって知的になったかどうかはわかりませんけども、いろんな想像力を持つことができましたね。自分が知らない世界だったり、感じたことのない感覚だったりを教えてくれる。今でも寝る前に本を読むんですけど、どんな本でも読んでみると面白いことが多く、そこからいろんなことを学んでいると思います。
独特の口調で、笑顔を絶やさず語ってくれた黒柳氏。『窓ぎわのトットちゃん』シリーズの、そして彼女自身の魅力が改めて伝わってくる会見となりました。