大企業のエリートは「派閥争い」の相談を占い師にしている? 選択肢の多い現代、判断材料の一つとして考えたい「教養としての占い」
更新日:2023/12/1
私は占いが好きだ。
ちょっと気になる人ができると星座占いをするし、ちょっと仕事の動向が怪しくなるとタロット占いをする。女性は占いを肯定的に受け止め、男性は逆に否定的だという。しかし、武田信玄や徳川家康といった戦国武将は「手相占い」や「占星術」で戦いや政治の戦略を立て、松下幸之助やビル・ゲイツは「風水」の考え方を取り入れていたそうだ。占い師でありキャリアコンサルタントでもある著者の早矢が記した『世界のビジネスエリートが身につける教養としての占い』(クロスメディア・パブリッシング)は、占いを「予言」ではなく「助言」とし、運勢の変え方・生かし方を解いた一冊である。
先に「男性は占いに否定的」だと書いたが、本書によると昨今は男性の相談者が増えているという。著者はその理由に「現代が「先の見えない時代」であることが大きく関係している」と書く。多様化が進み、選択の自由の幅が格段に広くなった一方、模範を失って「生きるための指針」が定まらない人が多くなってきているのだ。また、現時点での占い業界の市場規模は1兆円に達していると言われている。整体やマッサージといった業界の市場規模は約1200億円、エステ業界でも約3500億円であるから、いかに占いの需要が高いかがわかる。
女性の占い相談は「結婚」「出産」、そして「派遣で働く女性の相談」が多くなってきている一方、男性で多いのは「転職」に関する相談だという。特に大企業のエリートの中には社内の派閥争いに直面して「誰についていけば、自分の将来が開けるのか?」という相談をする人が増えており、著者は次期社長候補の人々の生年月日を聞き、星配置からその人の資質や性格を読み解くという。また、キャリアコンサルタントの視点からもアドバイスを付け加えるようにし、占いとカウンセリングのハイブリッドを心がけているという。
本書では「占星術に科学的な根拠はあるのか」といった疑問や、占いや占い師の選び方も指南してくれている。著者は「絶対に大丈夫」という占い師を信じてはいけない、と書く。「天気予報を見るときと同じような視線で占いと接するのがいいと思っています」「天気予報は外れる可能性があるから見ないと決めつけるのではなく、自分では想像のできない今後の可能性を持つこと」だと説く。
当たるも八卦、当たらぬも八卦、その通り。しかし先行きの見えない現代社会において、占いを活用し、ポジティブな気持ちで明日に備えることも、生活をより良くする手段のひとつなのではないだろうか。
文=高松霞