シチューや揚げ物まで! 電子レンジ、フライパン、炊飯器を使って初心者でも気軽に挑戦できる米粉レシピの本
公開日:2023/11/3
健康志向、食料自給、小麦代替などの観点から、改めて注目が集まっている「米粉」。米粉を使ったパンは、もっちりとした独特の食感、ほのかに感じるお米の甘みが魅力だ。和のおかずとも合わせやすく、近年はスーパーなどでも手軽に購入できるようになった。グルテンフリーでGI値も低い米粉は、小麦粉に代わる食材として、パン以外にもさまざまな使い方が模索されている。また、小麦アレルギーの人のお助け食材としても人気が高い。
だが、米粉料理を自作しようと思うと、どうしても「小麦粉より扱いが大変なのでは?」「ちゃんと膨らんでくれるか心配」とハードルが高く思えてしまう。『今日からはじめる米粉レシピ』(高橋ヒロ/ワン・パブリッシング)は、米粉の専門家として活動している高橋ヒロ氏が、そんなハードルを極限まで低くし、日常的に使えるレシピを提唱している一冊だ。
本書はベーキングパウダーを使用したり、電子レンジやフライパンを活用したりすることで、「時間がないときにそんなことしてられるか!」といった手間や工程をショートカットしながら作ることができるレシピが満載。これでグルテンフリー、小麦粉より低GI値の食生活が送れるのなら、ぜひともチャレンジしてみたい。そこで、実際に作ってみることにした。
「プレーン豆腐パン」(P.38~P.41)
外はカリッ、中はもっちりとした食感で、ずっしり重みのある生地。それでいてしっかりふんわり感もあって、ちゃんと「パンを食べている」という感覚が楽しめる。およそ半分は豆腐だからダイエット中でも罪悪感少なめなのが嬉しい。フライパンでいくつかまとめて焼けるため、家族分まとめて作りたいという希望も叶えてくれる。
「米粉ホワイトソースで作るクリームシチュー」(P.78~P.79)
二つめは、「レンチン米粉ホワイトソース」を使って作る「米粉ホワイトソースで作るクリームシチュー」。まずはホワイトソース作りから。耐熱ボウルに米粉、コンソメ、塩を入れて泡立て器で混ぜ、牛乳を加えながらダマにならないようさらに混ぜる。電子レンジで2分加熱し、混ぜて1分半再加熱したら、あとはバターを加えてよく混ぜればできあがり。シチューは、鍋で鶏もも肉、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもを炒め、作った米粉ホワイトソースと水、塩を加えて弱火で20分煮込めば完成だ。
米粉でホワイトソースは想像がつかなかったが、言われなければ分からないくらい普通のおいしいシチューに仕上がった。小麦粉も片栗粉も一切使っていないのに、とろみの具合は完璧で、舌ざわりもとても滑らかで驚いた。具材を変えたり、チーズをかけてグラタンやドリアにしたりしてもおいしそうなので、アレンジも楽しそうだ。
「さばの竜田揚げ」(P.84)
最後は、衣に米粉を使用した「さばの竜田揚げ」。骨を取ったさばの切り身を、にんにくと生姜を加えた麺つゆに20分ほど漬け込み、水気を切って米粉をまぶす。あとはフライパンに1センチほど油を入れ、全体がこんがりするまで揚げ焼きにすれば完成。最後にお皿に盛りつけ、大葉とすだちを添える。
片栗粉で作ったときと同様にサクサクとした食感で、米粉だと言われなければ分からない。むしろ片栗粉で作るより軽い口当たりで、時間が経ってもサクサク感が失われにくいような気がした。揚げ物の衣はこれからずっと米粉でもいい気さえしてきた。ちなみに一品目で紹介したプレーン豆腐パンに、大葉と一緒に挟んでもおいしそうだ。
パン、シチュー、揚げ物と3種類作ってみたが、どれも「健康的だしまあ許せる」というレベルではなく、「本来の作り方と遜色なく本当においしい」域に達していた。手間もまったく増えていない。本書には、より米粉料理を極めたい人向けに、ドライイーストやサイリウム(水を含むとゼリー状になる、オオバコ属の植物由来の素材)を使って作るパンも紹介されている。が、こちらもお手軽レシピであることに変わりはない。
このほかにも、レンチンで作る米粉パン、うどん、ハンバーグ、カレー、ケーキ、きな粉団子など、作ってみたい米粉料理がまだまだたくさんある。本書を見る限り、ほとんどの料理で小麦粉から米粉への置き換えが可能なようだ。米粉を使う際の注意点は、同じ米粉でも種類によって吸水率が大きく変わってくるということ。その結果、使う米粉によっては仕上がりに大きな差が生まれてしまう。だがその点についてもしっかり言及されているので、まさに至れり尽くせりだ。
筆者ももっと気軽に米粉を活用して、無理のないところから体をいたわり、10年後、20年後の自分のために備えていきたいと思う。
調理、文=月乃雫