「通用しない日本語とは?」「なぜ血液型で性格が分かる?」東京での暮らしは不思議の連続!『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』
公開日:2023/12/1
「日本が外国人からどう見られているのか」つい気になってしまう。そういったテーマのTV番組や書籍は、私たち日本人にとって何気ない日常について改めて考え直すきっかけになるからだ。
『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』(オーサ・イェークストロム/KADOKAWA)もまた、当たり前に思っていることが当たり前じゃないと気づかせてくれるコミックエッセイである。
2011年から東京で暮らすスウェーデン人のオーサさんが、日々暮らすなかで感じるカルチャーギャップや日本の習慣、ときには体当たりで体験する日本の文化などをさまざまな角度から切り取って紹介している。
本作のポイントは、オーサさんの「日本が大好き」だという気持ちが作中に溢れているところだ。だから日本に戸惑うことがあっても、基本的に文化の違いを楽しめているように見える。この異文化理解の面白さを感じられることも大きな魅力だ。
アニメ・漫画に憧れて来日した北欧女子の毎日は“不思議”の連続?
オーサさんは13歳のときに日本のアニメに衝撃を受け、日本に憧れるようになった。母国でイラストレーター・漫画家になった彼女は、日本へ移住。オーサさんは文化と習慣についての驚きや発見、日本とスウェーデン文化の違いなどを4コマ漫画形式で描くようになった。最初はこれらの作品をブログで発表していたが、2015年に本作『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』として書籍化し現在5巻まで刊行。「北欧女子オーサ」シリーズはその後も続き、累計28万部を突破。2023年には最新作『北欧女子オーサ、日本で恋をする。』も発売されている。
オーサさんが日本で感じる“不思議”はスウェーデンとの文化や習慣の違いから生まれるもの。日本人にとっては当たり前のことでも、彼女にとっては新鮮で驚くべきことがたくさんある。本稿ではその一部を紹介したい。
・血液型についてのエトセトラ
「血液型で性格が分かる」や「血液型占い」が当たり前のようになっているのは世界でも日本だけだそう。ヨーロッパでは星座占いが一般的というのが面白い。
・まるで日本人のようなふるまい
外国人が日本に慣れると、ふるまいが明らかに日本人化する。電車の乗車時にドアの前を空ける、電話で話しながらおじぎをするなど、これらは外国人から見ると日本人化のサインだという。
・外国人の変な日本語
アニメや漫画は外国で受け入れられている文化ではあるが、そこに描かれてる言葉や話し方は現実の日本社会では使えないことも。
・快適になる便利グッズを持ち歩くのは楽じゃない
オーサさんが日本で知った便利なものたち。脂取り紙、魔法瓶、マスク、電子辞書……これらで生活が快適で楽になるはずなのに、持ち歩くためにバッグはどんどん重くなってしまう。
オーサさんの“不思議”を描いたエピソードは、どれもクスッと笑えるユーモアたっぷりの内容。そこには私たちが気づいていなかった日本文化の奥深さが提示されているのだ。
スウェーデンとの違いを楽しめる、日本大好きオーサさん
オーサさんの母国、スウェーデンの文化や習慣についても紹介されている。スウェーデンは、先進的な社会制度を併せ持つ北欧の国だ。教育や福祉などの社会制度が充実し、平等意識や環境意識が根付いているのも特徴。男女平等法が制定されており、環境保護にも積極的だという。そんな国で育ち、そもそもオタクだったオーサさん。ファンタジー小説、ディズニー、アメリカのアニメなどにハマっていた彼女は、友達から勧められた『セーラームーン』に出会い、衝撃を受けた。当時、彼女は「女性のための漫画・アニメ作品」というものを初めて見たからだ。
オーサさんによれば、文化や習慣が大きく違うにもかかわらず、基本的には真面目でシャイという点で、日本人とスウェーデン人には似ている部分もあるらしい。彼女が日本に馴染めている理由のひとつなのかもしれない。
スウェーデンの“コミック”と“漫画”の違いも興味深い。オーサさんが知っていた“コミック”とはアニメのスクリーンショットに吹き出しをつけたもので、“漫画”とは日本スタイルで描かれているコミックを意味する。オーサさんは“漫画”を好きになり、やがて自分で描くようになるのだ。
本作は日本的な“漫画”の形式で描かれている。「外国人が日本スタイルで漫画を描くということは、日本の漫画への強い愛情をもっているはず」と3巻のあとがきで語っているが、作品を通してオーサさんのとめどなく溢れる日本の漫画やアニメへの愛、そして日本への敬意が伝わってくる。日本の魅力に改めて気づくきっかけになるだろう。
文=古林恭