つんく♂「自分が天才じゃないことに気づけたから」 自らの経験から語る、凡人だからこそできる人生を大逆転させる方法
公開日:2023/11/8
ロックバンド・シャ乱Qのヴォーカルで、ハロー!プロジェクトを築き上げたつんく♂氏の著書『凡人が天才に勝つ方法 自分の中の「眠れる才能」を見つけ、劇的に伸ばす45の黄金ルール』(東洋経済新報社)は、何ひとつ才能がないと嘆く凡人の私たちを勇気づけてくれる。
アーティストとしてはもちろん、音楽プロデューサーとしてモーニング娘。の楽曲をはじめ、ヒット曲を数々生み出してきたつんく♂氏ですら「僕は『天才』ではありません」と公言するのは驚きだ。しかし、たとえ凡人であっても突破口はある。経験から編み出されたマインドセットは、ビジネスパーソンにとっての大きな学びになる。
他人への嫉妬、環境への愚痴は「できない人の言い訳」
つんく♂氏は、結果が出せたのは「自分が『天才』じゃないことに気づけたから」と振り返る。アマチュアとして大阪でバンドを組んだ当時、メディア出演するバンドを見て「俺もこのくらいの曲、真剣にやったら、いつでも書けるわ!」と嫉妬していた時期もあり、プロデビュー後も作った曲を評価してくれないスタッフに「あの程度のスタッフに俺の才能をあやつる能力はないね」と、愚痴もこぼしていたという。
誰かをうらやみ、環境に不満を漏らす。いかなる仕事でもよくある話で、分野が違ってもその心情は想像にたやすい。
ただ、当時を振り返る中でつんく♂氏は「他人や環境のせいにするのは、できない人の言い訳だ」とさとす。「俺には、神様から与えられた才能がある」といううぬぼれを捨てて、「自分は天才でも何でもなく、平均的な能力しかない」と認めたのが人生の転換点に。あとは、自身の「好きなこと」をやり続ける「努力」を重ねれば、いずれ、結果が付いてくると私たちの背中を押す。
自分を高められる人が使っている「いい質問」とは?
自身は凡人だと悟ったのち、自分の実力をいかに引き上げるか。本書でとりわけ興味を持ったのは、伸びる素質のある人は「具体的な質問」をしていたというつんく♂氏の経験だった。例えば、過去にプロデュースした中では、メンバーから以下の質問を受け取ったことがあったそうだ。
ダメな質問
「どうやって歌えばいいですか?」
いい質問
「この場面、歌い方としてAとB、どちらですかね?」
「このセリフは○○のあとだから、もう少し大きめの声がいいですか?」
つんく♂氏いわく、前者のように「どう歌えばいいですか?」と抽象的な質問をされると、回答者も「いい感じで!」などの返答しかできなくなってしまう。
しかし、後者は具体的に返せる。「このセリフは○○のあとだから、もう少し大きめの声がいいですか?」と聞かれたら、「うん、もう少し大きめで」など、回答者は具体的に返答できる。「この場面、歌い方としてAとB、どちらですかね?」と聞かれて、回答者が「C」の答えを用意していた場合。たがいの議論が白熱し、ひいては質問者が「得られる情報」が増える可能性もある。
すなわち、「いい質問」ができる人は「具体的な答え」「よりよい情報」を手に入れられる。質問できる時間を絶好の機会として、サッと手を挙げて具体的な質問ができる人こそ、自身をより高められるのだ。
ほとんどの人は凡人だ。しかし、「才能がない」わけではないとつんく♂氏は述べる。モヤモヤした気持ちを抱えながら嘆いているだけの時間はもったいない。本書を手に取った瞬間から、未来はきっと明るくなるはずだ。
文=カネコシュウヘイ