写真に向いている人の2つの特徴 。好奇心旺盛なことと、行動力があること/うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真
公開日:2023/11/15
ケータイ、スマホのおかげで身近になった写真。カメラを買って本格的に始めたいと思っている人は多いのではないでしょうか。
誰でも写真の才能がある。でも、多くの人が写真を誤解している――写真家・幡野広志氏が大人気のワークショップをベースに、写真の撮り方から心構えまでを書き下ろした「写真の本」が本書です。
いい写真とうまい写真は違う。だめな写真とへたな写真も同じ意味じゃない。うまくてだめな写真もあるし、ヘタだけどいい写真もある。写真に対する価値観が変わる、写真初心者必読の1冊です!
※本作品は『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』(幡野広志:著、ヨシタケシンスケ:イラスト/ポプラ社)から一部抜粋・編集しました
向いている人と向いていない人
写真には向いている人と向いていない人がいます。写真はシャッターを押せば撮れるから誰でも簡単に撮れます。だけど誰にでも向いているものではないと思います。音楽や運動や勉強と一緒で、誰だってできるけど誰もが向いているわけじゃないです。やりたいこととできることは違うし、得意なことと好きなことも違う。そういうものです。
写真が向いていない人の特徴はあります。間違いなくコレって特徴がある。そういう人が写真を仕事にしたり写真家を目指そうとすると大変だ。ボロボロになって辞めるだけだと思う。どんな仕事だって向いている人と向いていない人はいる。
写真に向いていない人の特徴が何かといえば……それは書けません。間違いなく大炎上するからです。書こうかどうか迷ったけど……書けません。ぼくもぽっちゃりした我が身がかわいいのだ。だけどマジで向いてない人っています。
仕事じゃなくて趣味でやるなら向き不向き関係なくたのしめばいいと思う。向き不向きはあっても、誰がやっていいとかやってはいけないなんてことはない。誰でもシャッターを押せば撮れるから写真はやさしくて、人によって違いが出るから写真はおもしろいのだ。
向いていない人のことは書けないけど、写真に向いている人については書ける。向いている人の特徴は2つある。でも、これがないからって写真に向いていないってわけじゃないからね。
まず1つめは好奇心が旺盛な人だと思う。日常にあるいろんなものをおもしろいと思える人だ。おもしろさの感度が高くて、感動のハードルが低い人だ。おもしろいと思える思考があるから、視点もおもしろくなる。そうなると写真もおもしろくなる。
わかりやすいのは子どもだと思う。公園にいるアリにすらおもしろさを感じる。大人は公園のアリにおもしろさを感じないかもしれないけど、海外に行って見慣れない景色や料理を見ると写真を撮るものだ。見慣れたものをつまらないと思わずに、日常のすべてをおもしろいと思える人は写真に向いている。
2つめは行動力がある人。何かをやりたいなって思ったときに、すぐに実行できる人。映画を観たい、本を読みたい、どっかに行きたい、誰かに会いたい、何かをしたい。そういう気持ちになったときに、口だけじゃなく行動にうつせる人だ。
そういう人は勉強したいと思ったときに勉強もする。写真の勉強量と撮影量が多くて必然的に知識と技術が高くなる。こういう人は被写体のことも勉強する。ただ撮るだけじゃなくて、被写体のことをしっかりと勉強するから被写体へのアプローチも違うので写真も違う。写真や被写体のことを説明する言語能力も高い。
好奇心が強く行動力の高い人が写真に向いている。現場でプロを見ててもそう。だけどそういうフォトグラファーのアシスタントをするとマジで疲弊する。ろくに食事も休憩もとらずに朝から深夜まで撮影することになる。ほどほどであることは大切だ。
ダニング゠クルーガー効果というものがある。「なぜ能力の低い人間ほど、自分自身を素晴らしいと思い込むのか」という研究から生まれたグラフだ。できる人ほど謙虚になって、できないほど傲慢になる現象だ。
このグラフの「馬鹿の山」にいる人は写真に向いてないわけじゃないけど勘違いしてウザったい時期だ。ここから「絶望の谷」を経て「継続の大地」までいけばいいけど、そういうことはあまりない。ただの自信だけある馬鹿はとてもウザい。自戒の念にダニング゠クルーガーを練り込めたい。
だけど、「馬鹿の山」を転げ落ちて「啓蒙の坂」にいければかなりいいことだ。写真家はだいたいみんなこれを経験している。落ちたり負けて苦しんだ経験をしているからだ。大切なことは適切な勉強をすることだ。趣味で写真をたのしむにはほどほどの量の勉強でいい。人生は長いし、写真はテクノロジーで進化する。ぼくだってそんなに勉強してないし。写真で苦しむ必要はないと思う。
<第2回に続く>