異世界のラスボスに転生したけど、スローライフを過ごしたい。チートスキルを活かしダンジョンで美味しいグルメライフを!

文芸・カルチャー

公開日:2023/11/15

転生してラスボスになったけど、ダンジョンで料理屋はじめます
転生してラスボスになったけど、ダンジョンで料理屋はじめます ~戦いたくないので冒険者をおもてなしします!~』(ぼっち猫:著、朝日川 日和:イラスト/KODOKAWA)

 異世界に転生してチートスキルで無双する。自分だけの特別な能力で魔王や強敵を倒して世界を救う。異世界転生ものの定番だが、いまでも人気が絶えないのは最強への憧れや困難を軽々と突破していくストーリーの痛快さだろう。そんな誰でも最強になれるチートスキルが与えられるのに、あえて選ばなかったら?

転生してラスボスになったけど、ダンジョンで料理屋はじめます ~戦いたくないので冒険者をおもてなしします!~』(ぼっち猫:著、朝日川 日和:イラスト/KODOKAWA)は、異世界にラスボスとして転生した主人公が、チートスキルを駆使し第二の人生を全力で楽しむスローライフ&グルメ系異世界ファンタジー。

 どこにでもいる平凡な会社員だった主人公の小鳥遊蒼太は交通事故に遭い、異世界のラストダンジョンのラスボスとして転生する。蒼太を転生させた女神は好きなチートスキルを選ばせて冒険者たちと戦ってもらうつもりだったが、戦いたくない蒼太は戦闘に関係のない生産系スキルばかりを選び、ダンジョン内で自分の夢だった料理屋の開店を目指す。

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 蒼太の転生した異世界は、ほとんどの動物や植物に毒があり、貴族などの富裕層を除いて貧しい人々は粗末な食料しか口にできない過酷な世界だった。そんな世界で蒼太は転生特典で選んだチートスキル「浄化」と「料理」によって、ほとんどの動物や植物、さらにはモンスターまでも安全な食材にすることが可能に。スライムはスルメに、モンスターは食肉に。ラスボスだけど、ダンジョンやダンジョン外で食物を採取したり、魔物を狩って食材の調達をしたり、ダンジョン最下層のボス専用フロアを改装しお店を建てたり、畑を作り農業まで開始してしまう。

 そんな食材調達の折に、蒼太は冒険者に見捨てられた奴隷の少女を魔物から助ける。彼女は生まれつきスキルを持たないノーアビリティであったために奴隷として家族に売られた悲しい過去があった。お人好しの蒼太は、彼女をリュミエと名付けて一緒に暮らすことに。異世界で初めて作った料理「スルメとセリの山芋の塩炒め」を美味しそうに食べるリュミエの笑顔を見て、人々を料理で幸せにしたいという思いが強くなっていく。

 採取した食材を使って、ジャムやホットケーキ、クロックムッシュ、チキングラタンなど、現代知識を活かし異世界になかった料理を思いつくまま作り上げていく。さらには醤油や味噌といった調味料、お茶やコーヒーなどの嗜好品までも自作してしまう凝りようは趣味の域を越えている。なによりもひとつひとつの工程を丁寧に、実に楽しげに料理を作るのだ。異世界の住人たちは、蒼太の作る未知の料理の見た目や匂いに興味津々、一口食べれば皆たちまち笑顔に。

 ラスボスエリアに作った農園を冒険者に手伝ってもらいつつ、冒険者ギルドのギルド長の公認を得て、多くの人々に支えられながら、いよいよ念願の料理屋《ラスボスの家》の開店へ──。

 次はどんな食材を見つけるのか、次はどんな料理を作るのか、次はどんなお客様がやってくるのか。チートスキルでやりたい放題好きなことをしまくる主人公・蒼太の異世界ライフはこれから始まる。読んでいると思わずお腹が鳴ってしまう、楽しくて美味しい作品をぜひ堪能してほしい。

文=愛咲優詩

◆書誌情報『転生してラスボスになったけど、ダンジョンで料理屋はじめます ~戦いたくないので冒険者をおもてなしします!~』(カドカワBOOKS)