いまどきの若者は“不燃性”! やる気を表に出すことが苦手な世代と向き合うためには/部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです
公開日:2023/11/17
新卒の約30%が3年以内に離職する時代。厳しくしたらいいか、優しくしたらいいか…。最近の若手社員のことがよくわからず、接し方に悩んでいる方は少なからずいるはず。
日頃から「どうすれば若手社員に火がつくか」と考えている、最近の若手は「自分から動こうとしない」と思っている、若手と仲良くなるために「趣味の話」から入っているーーそんな上司の方はいませんか? 実は、これらはNGです。
若手社員育成専門コンサルタントである著者の伊藤誠一郎さんが、最近の若手部下の「傾向」と「対策」を教えます。いかにやる気を出して仕事に取り組ませるか、声のかけ方・動かし方・伸ばし方を解説! この本で若手を変えるのではなく、上司である自分を変えていきましょう!
※本作品は『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(伊藤誠一郎/日本実業出版社)から一部抜粋・編集しました
若手社員は「火がつかない」という前提でいること
若手に火をつけようとする上司たちの空回り
「最近の若手社員はどうしたら火がつくのか?」
これは管理職向けの研修で、上司たちから頻繁に耳にする言葉です。
ちなみに「火をつける」とは、外部から刺激を与え感情を高ぶらせ、やる気を爆発させるように促すということです。つまり、若手をある瞬間を境にして変身させたいのだけれど、上司たちは何がそのきっかけになるのかわからないと言っているのです。
まず、はっきり認識しておかなければならないのが、最近の若手社員は不燃性だということです。そもそも彼らに火はつきませんので、火をつけようという考え自体を変えることです。
とくに苦労や困難などで「外部から刺激を与える」というのは、最近の若手社員には良い影響を与えません。1人残らず若手全員に火がつかないというわけではありませんが、彼らのほとんどが苦労や困難といった刺激を自らが成長するために必要な壁、乗り越えるべき壁ととらえられないのが現実です。
若手にとっては、苦労はただの苦労、困難はただの困難であり、「できない」「わからない」「不安」「無理」という負の感情だけが頭の中に渦を巻いてしまい、精神的に疲弊の一途をたどっていきます。
むしろ若手は、上司が良かれと思って与えた「困難」を「できないことがわかって与えた試練」と受けとめたり、「自分は期待されていないのかもしれない」という疎外感や敗北感にまで勝手に広げてしまったりするケースもあります。
このことは、子どもに対する世の中の関わり方が大きく変化したことも影響しています。すでによく知られていることですが、今や親も先生も地域社会の大人たちも声を荒げて子どもを叱る場面をほとんど見かけなくなりました。
たとえ叱りつけることに正当性があったとしても、公共の場で声を荒げようものなら虐待を疑われてしまう時代です。若手社員は幼少期からそうした育てられ方をしてきたわけですから、外部からの刺激に対して耐性を持ち合わせていないのは当然と言えます。
したがって、彼らが社会人になったときにも、その延長線上にある受け入れ方をしなければなりません。
最近の若手は「そういうものだ」と受けとめる
ただし、最近の若手社員はやる気自体がないわけではないのです。
外部からの刺激に慣れていないために、やる気を表面に出すことに不得手なだけであり、内面では周囲の期待に応えたい、社会人として一人前になりたいという思いを静かに燃やしているのです。
したがって、火をつけようとする、すなわち、あるきっかけによって感情を高ぶらせよう、やる気をアップさせよう、変えさせようという発想自体を持たないようにするのが、今の若手社員に対する現実的な対応方法であると言えます。
若手は日々少しずつ、徐々に、緩やかに成長していくものだと上司が考え方を変えることです。そして、温かい視線で見守ることで、最近の若手社員は安心してやる気を成長へと昇華させていきます。
大事なことは「最近の若手はそういうものだ」と冷静に受け入れることです。
「火がつかない」「なかなか変わらない」といった否定的な感情を抱かないことが若手との友好な関係性づくりの第一歩となるのです。
今、上司でいる人は、かつては自分が上司や先輩から火をつけられてきた経験があるので、最近の若手に対して、どこか物足りない、弱いといった思いを抱くかもしれません。
しかし、上司や先輩が若手社員は「火がつかない」という前提でいることは、諦めでも迎合でもありません。もちろん軟化でもありません。あくまでも「適応」なのです。
若手社員は不燃性、日々少しずつ緩やかに成長する姿を見守る