若手社員の序盤の教育は”子育て”だと割り切る。最初の3か月で指導するべきこととは/部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです
公開日:2023/11/22
新卒の約30%が3年以内に離職する時代。厳しくしたらいいか、優しくしたらいいか…。最近の若手社員のことがよくわからず、接し方に悩んでいる方は少なからずいるはず。
日頃から「どうすれば若手社員に火がつくか」と考えている、最近の若手は「自分から動こうとしない」と思っている、若手と仲良くなるために「趣味の話」から入っているーーそんな上司の方はいませんか? 実は、これらはNGです。
若手社員育成専門コンサルタントである著者の伊藤誠一郎さんが、最近の若手部下の「傾向」と「対策」を教えます。いかにやる気を出して仕事に取り組ませるか、声のかけ方・動かし方・伸ばし方を解説! この本で若手を変えるのではなく、上司である自分を変えていきましょう!
※本作品は『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(伊藤誠一郎/日本実業出版社)から一部抜粋・編集しました
社会人教育の前に「子育て」のスタンスを持つ
ティーチング以前のことからの指導も必要
人材教育では、「ティーチング」と「コーチング」という考え方があります。
「ティーチング」とは文字通り教えること。「コーチング」とは質問や問いかけを通して、相手が自ら考えることで能動的な発言や行動を引き出すことです。
若手社員の育成は、最初は「ティーチング」で丁寧に教えていき、若手が徐々に力をつけながら最終的には自分で考えて行動できる「コーチング」を目指すのが理想です。
しかし、最近は「ティーチング」と「コーチング」だけでは十分に対応しきれず、新たに「子育て期」という初期段階を設ける必要が出てきました。これは、若手社員の常識の欠如や未熟さが原因であり、配属先の上司や先輩をはじめ会社全体までも悩ませるという事態が多くの職場で起こっています。
ここで、これまで私が見聞きした常識の欠如や未熟さの代表例を挙げてみます。
□ペンの持ち方がおかしいのでお客様の前に出せない
□余裕を持った事前の行動ができずに指定の時間に遅れる
□睡眠不足によって寝坊、遅刻をする。業務に集中できない
□お客様や取引先にタメ口や若者言葉を平気で使ってしまう
□上司や先輩を自分のほうに呼びつける
心当たりのある方も少なくないのではないでしょうか。これらは、社会人の仕事以前のすべて日常習慣や生活管理、あるいは人としての常識の問題です。
そこで「ティーチング」の前に新たに「子育て期」を設けます。期間は長くても3か月とし、常識や基本的な行動を優しく教えます。ここでは仕事上の指導役というよりも、彼らの親になったつもりで根気強く取り組んでください。
それに伴って、人事と各現場が密に連携して、若手社員の実務の習得を目指すOJTの指導には余裕を持った計画を立てる必要もあります。そうすることで「こんな状態で若手を現場に送り出すな!」とモメないようになります。
「身についていないこと」への失望よりも「学ぶ機会」となったととらえる
若手社員の「子育て期」の指導では、次の三大禁止事項を肝に銘じてください。
1 どんなに当たり前のことができなくても決して驚かない
2 一度や二度の指導でできるようにならなくても決してあきれない
3 そんなことまでやらなくてはならない現実を決して嘆かない
本来は職場で指導するべき事柄ではないかもしれませんが、これまでとは時代が変わったことを受け入れましょう。また、毎日同じことを言い続けることになるかもしれませんが、この期間中は何度でも教え続けるという覚悟を決めてください。
最初の段階で常識や基本をしっかりと確立しておかないと、ゆくゆくは大きなトラブルやクレームを引き起こしてしまいますから、後で苦労しないためにも腰を据えて取り組んでください。
また、これは一部の関係者が実践するだけでは不十分です。全員参加で指導することによって、配属された部門全体で共有する必要があります。「子育て期」における主な指導のポイントは次の通りです。
□正しいペンの持ち方
□書類、パソコン、筆記用具など仕事で使う道具の整理整頓
□時間厳守とそのための事前準備の徹底
□仕事に支障が出ないような規則正しい生活リズム
□目上の人に対する礼儀正しい言葉づかいと行動
これらは、「すべてできる若手社員」と「すべてできない若手社員」が大きく二極化しているのも最近の傾向です。もし配属されてきた新人にこれらを指導する必要がないとしたら、自分の部下に自信を持って次の「ティーチング」に進んでください。
大事なのは、どんな若手社員が配属されてきても受け入れる心と体制を準備しておくこと。それも上司の仕事の1つです。
社会人としての常識や基本行動を親になったつもりで根気強く教える
<続きは本書でお楽しみください>