「そこそこの美人」にイラッとしてしまう理由とは? 群れの中の自分の序列を守るために発達した女性脳を解剖する
更新日:2023/12/12
男性の世界と女性の世界は違うらしい、とはよく聞かされてきた。個を尊重するジェンダーレスの時代になっても、それはさほど変わらないらしい。
男性から見るとちょっと不思議な世界、女性から見ると当たり前の世界。『女女問題のトリセツ(SB新書)』(黒川 伊保子/SBクリエイティブ)は、男には分かりづらい女性の世界を、脳科学で切り込み、説得力ある解説を試みている。
本書が掲げるわかりやすいテーマは、「なぜ、女は女にイラつくのか」。その原因と対処法を示している。男性も女性も、本書を読めば女性の言動が腑に落ちるはずだ。
本書いわく、女性は男性とは違う「女性脳」をもつ。女性脳の特長は、群れで子育てをする動物の本能を備えているため、「周囲に大切にされていないと命が危ない」という危機感をもっていることだという。だからこそ、共感意欲が高く、感性が似ている友達がだんぜん心地よいらしい。ちなみに「男性脳」は、「仲間のために自己犠牲する覚悟」をもっていることが特長である。子育てという本能によって自分自身を守るために生きる女性と、他者のために生きる男性。男性同士の友情はスムーズだが、女性同士の友情はそうはいかない理由が、ここにあるという。
本書によれば、女性は「圧倒的な美人」は好きだが、「そこそこの美人」にはイラッとする。なぜなら、圧倒的な美人には敵わないため賞賛や憧れの対象となるが、そこそこの美人に対しては「群れの中の自分の序列が危うくなる」という焦燥感が生まれ、それがイラつきに変わるらしい。
ということで、女性が女性にイラつく場合の多くは「自分の優位性が脅かされるから」なのだが、本書は「女たちよ。自分の人生と友情を、生殖本能なんかに翻弄されないで、うまくやろうよ」とエールを送っている。人生100年時代の今、女は生殖のためだけに生きているわけではないからだ。
では、何とか欠点を探し出して「あの人のここが嫌」と脳がこじつけがちな「そこそこの美人」同士が仲良くするためには、どうすればよいのか。本書は、「自分の優位性を保ったまま、その人と付き合う方法を考えればいい」と述べる。
例えば、自分は「ウエストは60センチ以内じゃないと」と思い込み、必死にキープしているとする。58センチの友人にイラッとするのは当然、「自分の優位性が脅かされている」からだ。同時に、70センチの友人にもイラッとする。「自分が死ぬほど大事に思っていることを、おろそかにしている」からだ…と本書は解説する。
しかし、男性の中には「ウエストなんて80センチでもいいから、ヒップが100センチ以上あってほしい」という人もいる。つまり、自分の価値観を多様化させ、自分の魅力を最大限に引き出す方向で考えれば、女同士のイラつきは減る、と本書は述べる。
ところで、人は対話において、思考スタイルが2つあるそうだ。一つは「ことのいきさつ」派、もう一つは「今できること」派。「ことのいきさつ」派は、様々な情報を収集しながら「ことのいきさつ」を反芻して、根本原因に触れようとする回路であり、「今できること」派は「今できること」に意識を集中して、できるだけ早く動きだそうとする回路だという。お察しのとおり、女性には「ことのいきさつ」派が多く、男性には「今できること」派が多い。異性の友達、職場の異性、家庭でのパートナーを思い浮かべるとわかりやすいかもしれない。
本書によれば、この回路には優劣がない。しかしながら、両者は相手が愚かに見えて衝突しがちである。「ことのいきさつ」派から見れば、大事な話をしているのに、頭ごなしに結論を突きつけられてイラつく。「今できること」派から見れば「自分のことばかりしゃべり全体が見えない、話が長い人」であり、やはりイラつく。
脳の違いからこのような差が生まれるのだが、本書は対話の奥義も示している。
【人の話は共感で聞き、自分の話は結論から話す】
共感で聞くことで「あの人、わかってくれる」、結論から話すことで「話が早くて頭がいい」と思われるそうだ。
世界の半分は女性である。男性も女性も女性脳の仕組みを理解することで、日常生活のイライラが激減するはずだ。なにしろ、人が抱える悩みの多くは、人間関係によって生まれるといわれるのだから。
文=ルートつつみ
(@root223)