人にわかってもらうって難しい。名前がつけられない関係に感じる、温かさと痛み『煙たい話』/斉藤朱夏のしゅか漫画㉒
公開日:2023/11/18
久しぶりに本屋に行けた。
並んでいる本を見渡していたら、どうしても目を離すことができない一冊があった。
帯に「この関係に、名前はまだない。」と書かれていた。
その言葉と、表紙のふたりの男性に惹かれて手に取った作品。
今回ご紹介するのは、林史也先生の『煙たい話』(光文社)。
高校卒業以来、一度も会うことがなかった男性ふたりが、ある雨の中一匹の猫を拾ったことから関係が変わり始める。
恋愛感情ではないけれども隣にいて心地がいい。
そんな気持ちに向き合い、答えを探していく。
ふたりの日常の空気が穏やかでなんだか心地よさもある。
けど少しチクチクと痛いものもある。
彼らの関係は、まわりから知らぬ間に名前をつけられていたり、勝手に話が進んでいたりする。
人の思い込みって怖いなって思ったし、
ちゃんと本人から聞かないと事実とは違う話になることがある。
とはいえ話しても意図とは違う言葉のチョイスをされ、伝えたかったことのニュアンスが異なることも……。改めて思う、人に伝えるって本当に難しい。
もし持っている言葉が少なかったとしたらしっかり話すべきことではないと思うし、自分たちだけがわかっていればいいこともある。
ふたりの関係を簡潔に伝える言葉がないから、読んでいて少しチクッとするのかな?とも思った。
自分たちだけがわかっていればいいことはきっとたくさんあるけれど
第三者からは「この関係はなんなの?」と言葉を求められる。
言葉で説明をしないといけないこともわかるけど
それは名前をつけて伝えられたらみんな理解してくれるものなのかな?
ひとりひとりがもう少しラフに考えられたら
少し窮屈だと思えることもきっと楽になるのかな。
でも現実はきっとそううまくはいかないんだとも思う。
だから関係って難しいと感じることもあるのかもしれない。
ずっと風通しがいいのも違和感ではあるから。
たとえその関係に名前がないとしても、答えが出なくても、
私的には自分の大切な人がただ元気に毎日を生きてくれたらいいなって、
そんなことを思える存在がいるだけでいいんじゃないかと思う。
家族にも恋人にも友達にも愛してるっていう気持ちがあれば、
その関係に名前なんて必要ないのにね。
これからふたりがどう歩んでいくのかとても楽しみ。
温かい空気を感じたいけど少しチクッともしたい人に読んでほしい。
あなたはこの関係、自分がそうなったり見たりしたら、どう感じるでしょうか?