「漢字を何度も書いて覚える」必要はない!? 子どもの漢字嫌いを克服する新たな学習メソッドとは?

文芸・カルチャー

公開日:2023/11/22

 漢字学習といえば、「何度も同じ字を書く」「毎日ひたすらノートに練習する」といった「根性論」のようなイメージを持っている方も少なくないのではないだろうか。実際、そのような学習法は何十年も変わらず今でも主流である。しかしそのやり方では、何度も書かせることが目的になってしまいがちで、漢字を覚えることには直結しないように思う。何より、単調に何度も書かせる学習のせいで、漢字学習が嫌いになってしまう子どもは少なくない。

 そんな従来の学習法に疑問を抱き、現場で実践を重ねて、新たな漢字学習法を確立させた神奈川県川崎市公立小学校教諭の土居正博先生の学習メソッドを詰め込み、子どもが大好きな漫画と、倦厭しがちなドリルを組み合わせた学習ドリル『どっちが強い!?身につくドリル』(土居正博:監修/KADOKAWA)が誕生した。シリーズ累計450万部を突破し、楽しみながら自然科学を学べると子どもたちに大人気の「どっちが強い!?」シリーズのキャラクターが活躍。子どもたちが夢中になる仕掛けが盛りだくさんな1冊だ。

どっちが強い!?身につくドリル
どっちが強い!?身につくドリル』(土居正博:監修/KADOKAWA)

 読売教育賞や博報賞を受賞した土居先生の新たな学習メソッドは、どのような学習法なのか。『どっちが強い!? 身につくドリル』を見ながら確認してみた。

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 当ドリルは、「読む」「正しく書く」「使いこなす」の3ステップで構成されている。漢字学習ははじめから書かせる指導をしてしまいがちだが、土居先生の学習メソッドではそれをしない。漢字が苦手な子どもを分析すると「そもそも漢字が読めていない」ということが分かり、書きより先に読みの指導をしたところ、効果てきめんだったそうだ。

ステップ1 「読む」

どっちが強い!?身につくドリル
繰り返し読んで、見慣れる。読めるようになる。

 まず、その漢字が使われている言葉を知り、読み方を覚える。本書では、「どっちが強い!?」のキャラクターが活躍する漫画と動物が登場する例文で楽しみながら漢字を読めるようになる工夫が施されている。

ステップ2 「正しく書く」

どっちが強い!?身につくドリル
正しい形が分かり、書けるようになる。

 漢字が読めるようになると子どもたちは自信をつけ、書きも意欲的に取り組むようになるという。漢字が読めるようになったところで、とめ・はね・はらいなどを意識して、正しい書き方で、丁寧に書けるようになるよう練習をする。ここまでで、漢字の基本的な読み書きができるようになる構造だ。

ステップ3 「使いこなす」

どっちが強い!?身につくドリル

 この学習メソッドは「書けるようになったら終わり」ではない。漢字自体を書けるようになったら、漢字のさまざまな使い方を理解し、日常で作文や日記などを書くときなどに自在に使いこなせるように学習していく。紙面をダウンロード・印刷して使える二次元コードもついていて何度も繰り返し学習できる。

どっちが強い!?身につくドリル

 チャレンジ問題では、迷路やパズルも多く、子どもが楽しく漢字を使いこなすための工夫が盛りだくさんだ。小学生にしては少し難しい言葉も扱われている点にも注目したい。漢字をさまざまな言葉の中で使いこなすことができると同時に、思考力や語彙のアップも期待できそうだ。

どっちが強い!?身につくドリル
漢字を「使いこなす」ということがどういうことなのかも漫画で分かりやすく解説。

 漢字学習の最終的な目的は、漢字テストで満点を取ることではなく、漢字を日常で使いこなし、語彙を増やし、やがて思考力を高めていくことだ。土居先生は「この指導で、私のクラスでは、抜き打ちテストをしても高得点が取れる子どもが続出するようになりました」とコメントしている。

 土居先生が積み重ねてきた漢字学習メソッドが全て詰まっているというこのドリルで、漢字嫌いを克服する子や漢字が得意になる子が増えることを期待したい。

文=梶塚美帆(ミアキス)