「文学フリマ東京」の短歌・俳句・川柳を軸にレポート。尾崎世界観も寄稿して長蛇の列ができた「胎動短歌」など見どころ満載

文芸・カルチャー

更新日:2023/11/24

 2023年11月11日「文学フリマ東京」が東京流通センターにて行われた。文学フリマは評論家の大塚英志氏の呼びかけによって2002年に始まった文学作品の展示即売会である。全国各地で開催されており、プロ・アマチュア問わず誰でも出展できる。販売物の条件は「自分が文学と信じるもの」である。

 今回の「文学フリマ東京」では、「短詩(短歌・俳句・川柳)」の出展が目立った。筆者の体感的にも過去最大となった「文学フリマ東京」の極私的イベントレポートをお届けする。

 前回の「文学フリマ東京」では長蛇の列ができるなど話題になった「胎動短歌」のブース。今回の新刊『胎動短歌Collective vol.4』では、尾崎世界観、GOMESS、木下龍也など名だたる作家が短歌を寄稿している。歌人になったきっかけについて、ikomaさんによると「後輩たちをいじめている歌人がいたんです。1人で怒っていたら、木下(龍也)くんから電話がかかってきて。『ikomaさんも歌人になればいいんじゃないですか?そうすればその後輩たちに別の場所をつくってあげられるかもしれない』それで、短歌の活動と言えば歌集と思って、みんなに声をかけて作った。2017年に作ったVol.1は250部完売。そこから期間が空きながらも刊行して今号でvo.4。1000部刷りました」とのこと。

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文学フリマ

 短詩集団「砕氷船」は短歌・榊原紘、俳句・斉藤志歩、川柳・暮田真名のユニットで、イベントなどを行っている。ブースにはそれぞれの著作が並び、榊原さんによると「文学フリマには3回目の参加です」とのこと。活動に関してはそれぞれのSNSから。

https://x.com/hiro_geist

「凧の糸」は、歌人の山階基のブース。山階さんの新刊『夜を着こなせたなら』の煌びやかさが目を引く。商業出版物を文学フリマで販売することの意義について、山階さんは「文学フリマは書き手=制作者=売り手の頒布物が大半だが、書き手自身が売り手になることのできる場という意味合いが作者と読者双方にとって大きいのでは」と語る。

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「はるのもりばん」では、俳人の箱森裕美さんが第一句集『鳥と刺繍』を販売している。箱森さんによると「私の場合は、出版社経由で句集を出すこと(短詩の業界ではほとんどが自費出版である)が金銭的に難しかったんです」それで自分で作りました、と語る。『鳥と刺繍』は通販で購入できる。

https://x.com/zurume

 歌人の秋山ともすさんは、文学フリマには3回目の参加だ。新刊『バターロールがまた焦げている』を販売。誰かの気持ちを代弁するように書いたという。今回初めての個人参加となる理由は、「過去の自分に挑みたいから」と意気込む。

https://x.com/kiyama_co

「サザンカネット句会」は自由律俳句のブースだ。大きな垂れ幕に掲げられた「自由律俳句」の文字が目を引く。超結社の会で、月一でイベントを行っているという。文学フリマには3回目の出展。石川聡さんは、「自由律のブースも若干だが増えている。冊子の売れ行きも良い。人の流れが違いますね」と語る。

https://x.com/satoshi_iskw_p

「Otona Alice Book」ロリィタなどの原宿ファッションをフィーチャーするOtona Alice Bookのブースは、歌人の川野芽生さんとコラボ。川野さんが紙に手書きした短歌を様々なモチーフとともともに撮影し、ロリィタの世界観を詰め込んだ『地上のアリス』や『火事のやうに』を販売。ロリィタについて川野さんは「身体と精神の抵抗。他者からの視線に抗うものです」と語る。

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文学フリマ

「オルガン」は俳人の田島健一、鴇田智哉ら、5人のメンバーが集結した同人誌だ。ブースでは最新35号、バックナンバーやメンバーの句集を販売。通販や書店で購入できる。シンプルな装丁だが中身は濃く、ファンも多い同人誌だ。

https://x.com/organ_haiku

「ねじまわし」は、文学フリマ6回目の参加。俳人の大塚凱、生駒大祐の俳句ユニットである。毎号挑戦的な試みを行い、勢いのある同人だが、生駒さんは不思議そうに「そうなんですかね? 注目されていてもいなくてもそんなに変わらないです」と語る。

https://x.com/dwsk_w

文学フリマ

「現代川柳の最先端のブースです」と語るのは川柳人のササキリユウイチさん。高く積まれた第二句集『飽くなき予報』が飛ぶように売れていく。「読んだ人が、なんて言っていいかわからない……となってしまうような句集です」という。

https://x.com/you_rissk

『みやざきぽかぽかたんか』を販売するのは宮崎県さんだ。文学フリマには3回目の出展。2022年の2月に埼玉から宮崎に移住。今回は宮崎県発信で短歌の同人誌を作ったという。通販で購入できる。

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文学フリマ

 歌人、評論家の瀬戸夏子さんのブースでは、短歌、詩、散文、日記などの個人誌が並ぶ。「ひとつに特化しなくてもいい、雑多な売り方をしてもいいと思ったんです」と語る。作品は通販で購入できる。

https://setonatsuko.booth.pm/

「川柳スパイラル」は川柳人、連句人の小池正博さんのブースだ。同人誌『川柳スパイラル』ほか『石田柊馬の川柳カード』『川柳と連句 蕩尽の文芸』など貴重な書籍が並び、購入は「私にメールしてもらえれば……」とのことだ。

https://x.com/koikemasah

 学生短歌会のブースも目立った。理科大、筑波大、國學院などが並ぶ。大きな看板を作っていた上智大学詩歌会は、文学フリマ2回目の参加。同人誌の『上智詩歌』やフリーペーパー、会員の個人誌などを販売していた。活動はSNSで追うことができる。

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 出版社の出展もある。詩歌の書籍を多く出版している「ナナロク社」のブースでは、既刊ほかフリーペーパーや、新刊『これより先には入れません』(谷川俊太郎 木下龍也)が並んだ。出版社が文学フリマに出展する意義について、代表の村井光男さんは「個人の創作物を個人に手渡していく。いろんな人と出会う上で、そこに価値が生まれるか?という実験だと思うんです」と語る。

https://x.com/nanarokusha

 会場入り口のメッセージボードには、「短歌のブースが多かった」との言葉があった。しかし盛り上がりを見せているのは短歌だけではない。俳句、川柳などの短詩の人口が、ひそりひそりと増えているのだ。今回ピックアップしたのはごく一部のブースだが、気になった活動はフォローし、追ってみることをおすすめしたい。

文学フリマ

取材・文=高松霞