プリキュア78人大集合! デザイン20年分の秘密を徹底取材した『プリキュアコスチュームクロニクル』
PR 更新日:2024/3/12
プリキュア第1作『ふたりはプリキュア』(2004)がスタートしてから、今年2023年で20年目を迎えた。最初はたった「ふたり」から始まった、プリキュア。放送中の最新作『ひろがるスカイ!プリキュア』(2023)まで歴代シリーズのレギュラーを合計すると、総勢78人を数えるまでになった。
プリキュアは登場以来ずっと子どもたちの憧れ、「なりたい存在」であり続けた。そして子どもたちのみならず、大人たちにも勇気と希望を与え続けてきた。時は流れ、いまや、幼い日にプリキュアに憧れ、その夢を持ちつづけたまま成長した人が、声優やアニメーターなど様々な立場でアニメ『プリキュア』シリーズに作り手として参加するまでになっている。公開中の映画プリキュア最新作『映画プリキュアオールスターズF』のテーマは「繋ぐ―。」だが、プリキュアとはまさに、多くの人の思いや願いによって脈々と繋がれてきた存在なのだ。
10月31日に発売された「プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル」(講談社)は、そんな歴代プリキュア78人の20年間に及ぶコスチュームデザインの秘密にファッションという観点からアプローチするファン待望の一冊だ。
奇跡の大集合! 78人はプリキュア!
本書を開いてすぐに目に飛び込んでくるのが、巻頭のプリキュア78人大集合イラストである。
本書では個々のプリキュアたちのメインビジュアルとしても掲載されている、これらのイラスト。歴代それぞれのプリキュアを生み出した製作当時のキャラクターデザイナー本人たちによって、プリキュア20周年のために直々に描き下ろされたものだ。
こうして一堂に会すると、それぞれの世代ごとにデザインも絵柄もバラエティに富んでいることに気付かされる。1つの作品中に登場するプリキュアたちもそれぞれに個性が際立っているが、異なる作品同士を比べてみても、それぞれの作り手たちの個性が大切にされてきたことが見てとれる。シリーズの歴史と伝統を大切にしつつも、大胆な変化を遂げる。これもまた、プリキュアを20年以上にわたる長期シリーズへと繋げてきた要素の1つだろう。
あの子は何色? 「ファッションファイル」!
「かわいさの理由別♡ プリキュア ファッションファイル」では、「色」と「ディテール」という切り口からプリキュアのファッションを分析している。
色別コーナーでは、歴代プリキュア78人のうち扉ページを飾る初代2人を除いた76人を、ベースとなるカラーごとに「ピンク」や「ブルー」など8系統に分類している。
色ごとに並べたことによって、同系色中での細やかな個性の違いがあること、そして補色など見た目にもインパクトのある差し色が効果的に配されていることが目でわかりやすくなっている。
また細やかな配慮として、黄色系統のプリキュアが集まったグループの名称を単純に「イエロー」とせず、「イエロー・オレンジ・ゴールド」と並記している点が挙げられる。特に「ゴールド」として『デリシャスパーティ♡プリキュア』(2022)のキュアフィナーレが入っており、「金色のプリキュア」という彼女の個性に丁寧に向き合ってくれていることが、この上なく嬉しい。
ディテール別コーナーではプリキュアの衣装パーツを「リボン」や「羽」、「フリル&レース」といった18種類に類型化している。そしてそれらのパーツが全体のビジュアルに対してどのような効用をもたらすかについてまで、丁寧に説明してくれている。
衣装のどんな要素が、「プリキュアらしさ」を形作っているのか。ビジュアルだけでなく言葉で改めて説明されることで、腑に落ちる点が多い。趣味でイラストを描いたり裁縫をしたりする人にとっても、どのようなデザイン要素が子どもたちの憧れの的になってきたか知る上で大いに参考になりそうだ。
プリキュア78人を徹底解説! 「コスチュームミュージアム」!
本書のメインとなるのが、東映アニメーション総合監修による「プリキュアオールスターズ コスチュームミュージアム」である。歴代20シリーズごとに、78人のプリキュアを1人あたり見開き2ページを割いて紹介しているボリュームたっぷりのコーナーだ。
たとえば『ハートキャッチプリキュア!』(2010)に登場した、月影ゆり/キュアムーンライトのページを見てみよう。
鋭い眼差しと物静かな立ち居振る舞いからクールなイメージが強いけど、本当は泣き虫で、とても優しくて、そして時折見せる笑顔がすごく可愛くて、心が折れてしまいそうな辛い境遇に何度も見舞われながらも決してくじけず、信じる仲間とともに立ち上がる強さを持った、そんなプリキュアだ。
同作でキャラクターデザインを担当したのは、馬越嘉彦さん。『おジャ魔女どれみ』シリーズのキャラクターデザインでも知られるアニメーターだ。彼が描き出す線の強さと勢いには、国内外から強い定評がある。その馬越さんご本人によるキュアムーンライトの20周年描き下ろしイラストが、右ページいっぱいに大きく掲載されている。本放送から13年を経てなお、当時と少しも変わらない、あるいは当時以上のかっこよさと美しさ。当時からのファンとしては、万感の喜びが去来する。そのようなプリキュア好きにはたまらないページが、この本には全部で78箇所も掲載されているのだ。プリキュアをたくさん見てきた人であればあるほど、本書が持つ「重み」はずっしりと増していくことだろう。
20周年イラストに加えて、変身と名乗りの口上、そして登場作品タイトルロゴ。英文綴りや変身前後のプロフィールに、変身前の姿と本名。これ単体でも十分に“プリキュア図鑑”として成立しており、きっとプリキュアを知らない人にとっても心強い味方となってくれるだろう。
その上で本書はさらに、向かい合わせのページにきめ細かいファッションやデザインにまつわる重要な情報を満載している。アニメーション製作時に各スタッフが参照した設定資料であるキャラクター三面図に、人物設定やデザインのコンセプト概要、そして様々なパーツに何箇所ものファッションポイントと、それにまつわる経緯や秘話などが絵付きで解き明かされている。子どもの頃に憧れたプリキュアのデザインにどんな意図や願いが込められているか、じっくりと本書で紐解いてみてはいかがだろうか。
さらにはプリキュアを演じた声優さんご本人にインタビューした「パワーをもらえるキュア○○のコトバ」「キュア○○のファッションここがスキ!」も、全員分が掲載されている。プリキュアは演じる声優さんからもリアルタイムに影響を受けながら1年間を通して成長していく。担当プリキュアとともに1年間を駆け抜けた声優さんたちの言葉は、プリキュアをさらに深く知るための大きなヒントになるだろう。
また登場が複数年度にわたったプリキュアについては、シリーズ別のデザイン変遷についても網羅されている。たとえば、『Yes! プリキュア5』(2007)と続編『Yes! プリキュア5GoGo!』(2008)より、夢原のぞみ/キュアドリーム。
とにかく元気で明るくて、他人の喜怒哀楽に全身全霊で共感してくれて、弱い存在を虐げる者には激しい怒りを隠さず立ち向かい、それでいて自分が戦っている相手を救うため手を差し伸べるような慈愛に満ちている、そんなプリキュアだ。
同作でキャラクターデザインを担当したのは、川村敏江さん。プリキュアシリーズで女性として初めてキャラクターデザインに起用され、ほかに『スマイルプリキュア!』(2012)や『HUGっと!プリキュア』(2018)、そして大好評公演中の舞台プリキュア「ぼくプリ」こと『Dancing☆Starプリキュア』(2023)のキャラクターデザインも手がけている。
キュアドリームをはじめ、公開中の『映画プリキュアオールスターズF』(2023)やEテレで放送中の『キボウノチカラ〜オトナプリキュア23〜』(2023)で活躍するプリキュアたちも、もちろん全て掲載されている。この秋、懐かしいプリキュアと再会を果たした方々にとっては、幼き日の思い出を振り返るためのガイドブックとなることだろう。
このまま78人全員をひとりひとり紹介していきたいところだが、そういうわけにもいかない。ご自身の“推しキュア”がどんな姿でどう掲載されているか。ぜひ実際に本書を手に取って、再会を果たしていただきたい。