小島よしおの「ピーヤ」のギャグには深い2つの意味があった!? 大人にも刺さりまくる子どもの悩み相談連載の秘密を聞いてみた

暮らし

更新日:2023/12/4

 小学生から届いた「いじめ」や「宇宙人が怖い」や「有名人になりたい」などの様々な悩みに、「おっぱっぴー」でおなじみの小島よしおさんが全力で回答する連載が話題だ。子どもだけでなく大人からの反響も多く、このたび『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)として発売されることになった。

 なぜここまで反響を得る回答をコンスタントに出すことができたのか? 「ピーヤ」や「おっぱっぴー」などのギャグにはどのような意味が隠されているのか? 注意深く掘り下げてみると、そこには生き方の哲学があった。

小島よしおさん
撮影/松永卓也(朝日新聞出版)

(取材・文=奥井雄義)

advertisement

悩み相談連載のPVが1300万超えの反響だったが、子どもの頃は能天気で悩みなんてなかった!?

――令和ならではの悩みや、昔も今も変わらぬ悩みも様々ありますが、相談全体を通して感じたことなどを教えてください。

小島よしおさん(以下、小島):全体的に感じるのは、昔も今も子どもたちの悩みは本質的には同じなのかなと思いますね。ただ、オンラインだったり今ならではの環境が重なったりして生まれたものもあるのですが、子どもたちの純粋な部分などは変わっていないとは思いつつ、僕が小さい頃に比べると周りを気にしている子が多いのかな、という印象がありますね。

――小島さんご自身は、小さい頃は能天気であまり悩みのない子だったと伺いましたが、悩みに答えるのに難しかった点などはありますか?

小島:そうですね。僕一人だったら答えるのが難しいものも多かったとは思うのですが、後輩やスタイリストさんなどに話を聞いてディスカッションしてみたり、テーマになっている本を読んでみたりすることで、色々な答えを提案できるようにしていました。

――悩み相談に対する熱意を感じました。1つの悩みに対してどれくらい時間をかけていましたか?

小島:早くて1週間前くらいから考え出して、テーマに関連する本を読んでみたり、後輩と集まってディスカッションして、1回じゃ足りなかったら2回集まったり、スタイリストさんなどに聞いたりしていましたね。やはり、熱意をかけたほうが良い答えが出せるし、読んでくれた人たちから「子どもに読ませようと思った」や「まさにこの問題で悩んでいました」などリアクションが良かった、というのがモチベーションになっています。

面倒くさいをうまく伝えるために「オメンドール」というキャラを作る

――難しい本の内容を、より子ども向けにわかりやすく書く時に気を付けた点はありますか?

小島:たとえば執着や嫉妬だとわかりづらいので「心の握手」という表現にしたり、面倒くさい「オメンドール」というキャラクターを使ったり、グラフにして見せたり、ギャグにしたりすることでわかりやすくするように心がけています。

 本当に謙遜でも何でもなく僕自身、理解力が低いので、たとえば『7つの習慣』などの本を読む時でもまずマンガから読んで、文字の原作を読んだりすることもあるんです。なので、自分がわかりやすいと思うことを心がけているので、自然とこの文章も子ども向けにもわかりやすくなっているのかもしれないですね。子どもとは何か波長が合うんですよね。

小島よしおさん

「ピーヤ」のギャグには深い2つの意味があった!? ギャグについて聞いてみた

――「ピーヤ」というギャグは、比べるのを止める「比止」という漢字だと本書に記載がありました。これはギャグを作る前から考えていたのですか?

小島:いや、もうそんなことは全然なかったです(笑)。ギャグだけが10年くらい先行していましたね。2008年くらいから、ただの語感で「ピーヤ」と言っていたのですが、何年か前のテレビ番組で書初めをする企画があってそこで自分のギャグを漢字にして書こうと思ったんです。そこで「比べるのを止める」で「ピーヤ」でいいやとなって、そこからですね。

――「おっぱっぴー」が「Ocean Pacific Peace」と「All People Happy」の略というのもありましたが…

小島:それも後付けですね。「ダイジョブダイジョブ」や「そんなの関係ねえ!」というのはその時の気持ちをやったのですが、擬音系のギャグは後付けが多いですね。ただ、後からこういう意味もあるな、というのがあったりします。

 たとえば、飛行機に乗っていた時に隣になった人に「そんなの関係ねえ!」は仏教ですよね?」と言われたことがあるんです。そういうつもりはなかったのですが、そういうことにしていこうと思いましたね。

――プラスの意味が後からついてくることが多いんですよね。

小島:自分次第、自分の心持ち次第だなと思いますね。「そんなの関係ねえ!」を言い始めた当時は、やぶれかぶれ的な気持ちだったんです。でも今は、壁にぶち当たってしまっている人や、周りで困っている人がいたら「そんなの関係ねえ!」を言ってあげてね、とライブで言ったりしています。使い方次第で人を傷つけることにも、人を救うことにもなるのが言葉だと思いますね。

――「そんなの関係ねえ!」の動きには意図はありますか?

小島:意図は特にないですねえ。たまたまああいう風に動いていたという。ただ、あげた拳をどこに下ろしていいかわからない、という気持ちがあるが、誰かを叩くわけにはいかない…という思いを、ギャグにして振り下ろしていたのではないかと思います。

――「ピーヤ」についてもう一つだけ聞かせてください。悩み相談をしてくれた子どもの名前の後に「ピーヤ」をつけて愛称として呼んでいます。この意図を教えてください。

小島:サインを書く時に、相手の名前の後に「ピーヤ」をよくつけていたのですが、実は英語で書くと「peer」になり、「同僚」や「仲間」という意味があることを後で知ったんです。なので、相談者に対しても「お友達だよ」という感覚で書いていますね。後は、ライブなどで壇上にあがってもらった時に、「~ちゃん」や「~君」よりも「ピーヤ」をつけたほうが笑ってくれるんですよね。ちょっと肩の力を抜いてくれるような効果があるんです。

どんなギャグにもプラスの意味がどんどんついてくるギャグの引き寄せとは

――ギャグ全体にプラスの意味が多いように感じます。

小島:やってみて実際良かったというのが多いですね。自分に言い聞かせているという部分も多いと思います。仕事が全然ない時に「そんなの関係ねえ!」と言ってみたり、すごいスベった時に「ダイジョブダイジョブ」と言ってみたり、悩んでいる時に、悩んでいても「何の意味もない」や、テレビでひな壇から前に出られない時に「前へ前へ」など、自分に言い聞かせているのかなと思います。

 あと僕の大好きなミスチルの桜井さんがよくライブで「この曲もみんなの思い出や愛情をいっぱい吸い取って大きい歌になるといいな」と言うんですが、僕もちょっとそれを真似るような感覚があります。僕のギャグも、みんなの愛情や思い世と共に大きくなってほしいですね。「つらかったときにダイジョブダイジョブで乗り越えました」とか「周りの雑音をそんなの関係ねえ!で吹き飛ばしました」とか(笑)。

本で得た知識などは、親鳥のように一回咀嚼してから子に話す

――大腿筋は動かすとやる気が出る、や、ピーマンは切ると苦みが出る、など大人でもへえー! と思うような話がありました。こうしたインテリな部分の見せ方についてはどのように考えていますか?

小島:言葉でっかち(頭でっかちの言葉版)にならないようには意識しています。文献からそのまま持ってきて文章にするということはせず、自分で話してみて、それを文章にすることで柔らかく聞こえるというのはあると思います。ちょっと汚い話ですが、親鳥や動物の親みたいに、子どもに食事をあげる前に、一旦自分の中で咀嚼することで消化しやすくするみたいな。そんなイメージだと思います。

――本で読んだ知識は、ライブ用などによくメモされているのですか?

小島:スマホに「よしおの語」と書いて「よし語」というメモ欄を作っています。

――いくつか教えてもらってもいいでしょうか。

小島:排水口を洗っている時に、排水口を洗うスポンジに自分を重ねる。磨けば光るのは排水口だけじゃなくてスポンジも磨かれる。これって、自分磨きなどにたとえられないかな、と考えたりしました。

 あとは、「才能」というものを「自転車」にたとえられないかなと考えたり。たとえばプロ野球選手で考えた時に、自分の持っている自転車のサイズ=才能は、ある程度決まっていて、その自転車のペダルを漕ぐ力は、努力の力なのかなと。めちゃくちゃ頑張ってもプロ野球選手になれない人もいます。もともと持っている才能の大きさというものはそれぞれあって、野球に関する自転車のサイズは小さかったかもしれない。でも、君が頑張ってペダルを漕いでついた足の筋肉は、別の分野の自転車を見つけられたら、そこで活かせるかもしれないよ、と。漕ぐこと=努力が無駄ではない、ということをどういう風にたとえたらわかりやすいかなと考えたりしていますね。

小島よしおさん
撮影/松永卓也(朝日新聞出版)