70歳おじいちゃんが“バ美肉”して美少女VTuberに大変身! 思わず応援したくなると超話題の『バ美肉おじいちゃん』著者・魔木氏にインタビュー【今月のバズったマンガ】
公開日:2023/12/12
今どき面白いマンガはSNSにあり! ということで、本連載ではSNSで話題になった面白いマンガをピックアップし紹介していきます。
提供:Minto編集部
「このおじいちゃん、可愛すぎる」VTuber人気が止まらない昨今、「おじいちゃん×美少女VTuber」を描いた異色の作品が話題を呼んでいる。『バ美肉おじいちゃん』(魔木)の主人公は70歳のおじいちゃん。幼い頃からの女装願望を叶えられずにいたおじいちゃんはある日「バ美肉VTuber」に出会う。「バ美肉」とは「バーチャル美少女受肉」の略称で、主に男性が美少女のアバターを纏って、バーチャルの世界で活動することを指す。おじいちゃんも長年の夢をバーチャルで叶えるためVTuberデビューを決意するのだが――。
ホラーゲーム実況で意識を失ったり、ガチ恋勢が現れたり、配信を切り忘れたり……。インターネットの世界を手探りで冒険しながら、おじいちゃんは大人気VTuberへの道を駆け上がっていく。一生懸命活動するおじいちゃんに、作中でも現実でも、気付けばハマってしまう人が後を絶たない。
『魔法中年』(ヤングアニマル)でも大人気の著者・魔木さんに、思わず「頑張れ!」と応援したくなるバ美肉おじいちゃんの誕生秘話と、マンガ家としての展望について伺った。
思わず応援したくなる!バ美肉おじいちゃん誕生秘話
――本作では、おじいちゃんがバ美肉美少女VTuberになるという意外な設定が、多くの反響を呼んでいますね。作品のアイデアが生まれたきっかけを教えてください。
魔木さん(以降、魔木):おじいちゃんのようにVTuberをやりそうにない人がVTuberを始めたら面白いかなと思ったことがきっかけです。元々、ヤングアニマルで連載している『魔法中年』という作品で、主人公の中年のおじさんが魔法少女や魔法少年になるギャップを描いていて、それと似た雰囲気でギャップを出せる題材を探していました。以前から作業中にVTuberの配信を聴くことが多かったので、自然とVTuberというテーマに繋がっていったんです。
――思わずおじいちゃんを応援したくなります!
魔木:「おじいちゃん頑張れ!」という感想を沢山いただきます。おじいちゃんですから、何をするにも大変そうに見えるんだと思うんです。そんなおじいちゃんが頑張っている姿を思わず応援したくなるのかなと。応援したくなるキャラクターにしたいので、できるだけ素直で優しい人物として描きたいと思っています。
現実で叶えられないことも、バーチャルなら叶えられる
――読者の方から愛されている「バ美肉おじいちゃん」という設定が生まれたきっかけを教えてください。
魔木:おじいちゃんがVTuberをやるという、動機づけはかなり悩みました。悩んでいるうちに、おじいちゃん世代って女装願望がなかなか受け入れられなかったのではないかと思いつきました。
その願いが今のテクノロジーで実現できたら面白いのかなって。だんだんおじいちゃんが長年の女装願望をVTuberになって叶える設定になっていきました。
――おじいちゃん以外にも、現実の姿とVTuberとしてのあり方にギャップがあるキャラクターが登場しますね。
魔木:この作品の裏テーマとして、現実で実現できないことをバーチャルで実現させている姿を描きたいなと思っているんです。キャラクターを作る上でも、現実とバーチャルのギャップを大切にしています。
――おじいちゃんがVTuberとして活動をするにあたって、高齢者だからこその困難もありそうです。
魔木:今おじいちゃんは3Dライブの開催を目標にしているんです。でも、おじいちゃんが歌って踊るってなかなかハードルが高い。そういった困難なことを丁寧に描いて、解決していけたらと思っています。そしたら、高齢者の希望みたいなことを伝えられるのではないかと思うんです。
バーチャル霊園のPR案件……って何!?
――作品の中で、特に気に入っているエピソードやシーンはありますか?
魔木:おじいちゃんがお墓のPR案件を受けて配信をする回が気に入っています。
――VR上のバーチャル霊園の案件配信をする回ですね! 古墳やピラミッドのような現実だと建てられないお墓が登場して衝撃的でした。
魔木:お墓という題材にコメディ要素を入れることができて、描いていて楽しかったです。なかなか描くことのない題材なので、『バ美肉おじいちゃん』だから描ける内容だなと思います。
――まさかおばあちゃんのお墓があんな姿だとは! おばあちゃんは、おじいちゃんの初配信の時にもおじいちゃんを助けてくれましたね。
魔木:おじいちゃんのキャラが穏やかな分、妻であるおばあちゃんはぶっ飛んだ性格にしようと思っていました。
――本作はおばあちゃんのように、おじいちゃんを取り巻くぶっ飛んだキャラクターたちも魅力ですよね。
魔木:おじいちゃんがサラリーマンにガチ恋される回があるのですが、そのガチ恋しているキャラも好きですね。おじいちゃんが常識的なキャラクターなので、ネジが外れたキャラは描いていて楽しいです。またどこかで登場させられたらいいなと思っています。
25歳までマンガを描いたことがなかった
――ぜひ魔木さんご自身についてお聞かせください。マンガを描き始めたきっかけは何ですか?
魔木:マンガを初めて描いたのは25、6歳の時だったんですよ。その頃、20代も半ばになって、やりたかったことに挑戦する最後のタイミングかなあと思っていたんです。そんな時に、子供の頃、マンガ家になりたかったことを思い出して。これが人生最後のチャレンジだと思って、挑戦してみようと思ったんです。
それまで絵は趣味で描いていたんですけど、マンガは最後まで完成させることができませんでした。まずは頑張って1作完成させることにして、マンガ賞に応募したのがきっかけですね。
マンガ家になってちょうど4年くらい。マンガ家としては遅いスタートだったかもしれません。子供の頃と違って、大人になって色々な物語に触れていたからこそ、1作描き切ることができたのかなと思っています。
――マンガ賞に出すってなんだかハードルが高い気がします。
魔木:マンガを描くと決めた時から、マンガ家になることを目標にしていたので、まずは賞に出して、出版社の編集者さんとの繋がりを作ることから始めようと思っていました。初めて賞に出した時はかなりドキドキしたことを覚えています。
当初は今とは違う出版社さんに出していたんですけど、賞に出しながら、SNSでマンガを発信するようになっていって。今連載している『ヤングアニマル』は、SNS経由で連載のお話をいただきました。
――それまでSNSでの作品の発信はされていなかったんですか?
魔木:X(旧:Twitter)ってやったことがなかったんですよ。25、6歳でマンガを描き始めるようになって初めてアカウントを作って投稿したんです。
――そうなんですか!?
魔木:はい。マンガを最後まで描き切れたことがないので、始める機会がなくて。
最初の頃は、読み切りマンガなどを投稿していて、だんだんと伸びていきました。『魔法中年』の連載のお誘いの連絡がSNS経由で来た時にはかなり驚きました。本当にこういうことあるんだって。単行本を初めて出せましたし、紙雑誌でも連載させていただいて、本当に良いご縁だったと思います。
――今後挑戦したいジャンルや、テーマはありますか?
魔木:少年が主人公の作品にもチャレンジしていきたいです。僕は、主人公らしくないキャラクターをいかに主人公にするかを考えるのが好きで、おじさん×美少女のようなギャップのある主人公を描くことが多いんです。影響を受けた作品でも、一見主人公らしくないおじいちゃんやおじさんキャラが大活躍するギャップに惹かれる傾向があって。でも、別の切り口でも作品を作っていきたいので、新しいチャレンジとして、主人公らしい少年を主人公にした作品も描きたいなと思っています。
――マンガ家としての目標はありますか?
魔木:近い目標としては、まだ体力があるうちに週刊連載にチャレンジしたいです。あとはやっぱり、大ヒット作を出したいですね。
――最後に読者の方へメッセージをお願いします。
魔木:おじいちゃんを応援してくれる方が沢山いらっしゃってとても嬉しいです。これからも応援してもらえるような物語を描いていきたいと思っています。楽しみにしていてください。
文=Minto編集部 橘田
魔木(まき)
マンガ家、マンガ原作者。 「ヤングアニマル」(白泉社)にて『魔法中年』を連載中。
X(旧Twitter):@inknoshimi(https://twitter.com/inknoshimi)