「憧れの好き」と「恋愛の好き」ですれ違う2人の少女。青春ガールズバンドラブにときめきが止まらない
更新日:2024/1/24
諸説あるが、ひとめぼれをするのは0.2秒、見つめ合って恋に落ちるのは約8秒必要だと言われているらしい。ひとめぼれとはそんな一瞬で起きてしまうのかと驚きつつ、憧れる人もいるだろう。実際に経験がある人もいるかもしれない。ここに高校生活とバンドという青春要素が加わった、ひとめぼれからはじまるラブストーリーがある。『ささやくように恋を唄う』(竹嶋えく/一迅社)では、青春を謳歌する少女同士の恋模様が描かれる。
新高校1年生の木野(きの)ひまりは、新入生歓迎会のバンド演奏で、ボーカリストのカッコよさにひとめぼれする。ひまりは、先輩の朝凪依(あさなぎ・より)にファンとしてほれたと告げるのだが、依はその告白でひまりにひとめぼれしてしまう。しかし、憧れの好きと恋愛の好きという違いで、お互いの気持ちがうまく噛み合っていないということに気付くのだ。
“恋とか愛とか全然興味なくて あたしにはずっと歌だけだった
だから自分が誰かを好きになるなんて想像もできなかった”
得てして恋とは、自分ではコントロール不能なものだ。胸がドキドキして、相手のことをずっと考えてしまう、目で追ってしまう。気付いた時には恋に落ち、感情のコントロールが難しい。その瞬間は突然やってくる。今まで恋とは無縁だと思っていても、いつひとめぼれしてしまうかわからない。依がまさしくそうだ。そして、純粋なひまりは、ストレートな感情表現をぶつけてくる。
“先輩に会うのが一番の楽しみなのでっ!”
キラキラ輝く表情で言われたら可愛すぎて、恋する方はたまったもんじゃない。バンドのボーカルが素晴らしくて一瞬で大ファンになったという、ひとめぼれの意味が異なるひまりの言動に、カッコいい系女子の依が振り回される。クールな時と真っ赤で恋に悩む時のギャップは、まさしく萌え。依が一喜一憂していく様、ひまりが慕う様子が、感情豊かに愛らしいタッチで描かれ、キャラクターたちが輝きに満ちて見える。
そして、依は恋という意味で惚れてもらおうと奮闘していく。
“あたしは木野さんと 本気で付き合いたいと思ってる”
この言葉から、ひとめぼれの意味が違っても相手を振り向かせたい、好きだという強い想いが感じられ、応援したい気持ちになる。彼女らの一挙手一投足にハラハラしているうちに、あっという間に1冊読み終わってしまう。
アニメ化決定!見どころ満載の“ささ恋”の楽しみ方は広がっていく
他の見どころは、舞台が岡山という点だ。作者が岡山出身のため、随所に岡山のスポットが使われており、1巻ではデートシーンでJR岡山駅やイオンモール岡山らしき背景が描かれる。岡山にゆかりのある人は、どこが舞台になっているかチェックしながら読むのも楽しいだろう。聖地巡礼をするのも作品の世界を垣間見るようで楽しい。
さらに、2024年4月からはアニメ化が決定している。桜が咲く頃にはじまった2人の恋物語が、偶然にも同じ時期に放送開始となる。演じるのは木野ひまりを嶋野花、朝凪依を瀬戸麻沙美、依の歌唱は笹倉かな。依を声優と歌手で分ける力の入れように、演技もバンドシーンも期待大だ。画面上で煌めく恋模様を堪能したい。
文=山上乃々