差別のない世界へ――小手鞠るいさん最新作『空と星と風の歌』(童心社)

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/5

今回ご紹介するのは、小手鞠るいさんの最新作『空と星と風の歌』です。

空と星と風の歌

著:小手鞠るい 絵:堀川理万子

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出版社からの内容紹介

だれの心ももともとは、すみきった青い空だったにちがいない。青空には、国籍もなければ、差別もなく、偏見もなく、いじめもなく、戦争もない。日本と韓国、日本と朝鮮半島の間で、過去になにがあったのかを、子どもたちに正しく話すことができる大人になってほしい。そして、過去にあったことがいまなお差別やいじめをうむ根っこを断ち、ひとりひとりの違いを認め、受け入れ、尊重しながら共に生きる社会をつくってほしい。そんな作者の願いが込められた作品。

「わからないだろうなぁ、日本社会で、自分が日本人であるということを、砂つぶひとつほども疑ってみたことのないだろうあなたには、到底、わからないでしょう。ま、わからなくて、当たり前だけれど。」在日朝鮮人二世の男性との出会いが中学生・空奈の心を大きく揺さぶった。「日本社会にはね、朝鮮人に対する根強い差別があるんだね。昔は仲良くつきあっていたこともある両国なのに、なぜなんでしょう。」差別。いろんな差別。腹立たしい差別。醜く、根強い差別。「日本をいい国にしていくためには、差別や偏見や憎悪のない社会を作っていかねばならないのだと。大人にはもう何も、期待していなかった。でも、子どもたちには期待していた。これからの日本を作っていくのは、子どもたちだから……」こんなこと、学校では教えてくれなかった。けれども「教えてくれなかった」ことは「知らなかった」の言い訳にはならない。みずから、知ろうとしなくてはならないのだ……。母が韓国人である、ただそれだけの理由でいじめられた少女。車椅子の少年が日本を離れアメリカで感じた自由。三つの短編が織りなす、差別のない社会を希求する力強い物語。

「わからないだろうなあ、
日本社会で、自分が日本人であるということを、
砂つぶほども疑ってみたことのないだろうあなたには、
到底、わからないでしょう。
ま、わからなくて、当たり前だけれど。」

中学1年生の空奈(そらな)が、在日朝鮮人二世の金洪才(キムホンジェ)さんからかけられた言葉。
空奈の心は大きく揺さぶられます。

空奈の夏休みの宿題のテーマは、「家族の仕事」でした。
母とふたり暮らしの空奈は、フリーライターである母の仕事を体験することに。
インタビューに同行し、そこで金さんと出会ったのです。

空と星と風の歌

著:小手鞠るい 絵:堀川理万子