殺人事件現場に残された“縄状の赤い結晶”は何なのか――異能力バトルで不可解な事件に立ち向かう、新作ミステリ漫画『RED Es』

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PR 公開日:2023/12/13

RED Es
RED Es』(藤井あだし野/白泉社)

 殺人事件現場に残されたモノ。例えば、謎のメッセージや不気味なぬいぐるみ、禍々しい花束など……それが不可解なものであればあるほど、読者は好奇心と怖いもの見たさが刺激され、その物語に一層引き込まれる。だが、『RED Es』(藤井あだし野/白泉社)で巻き起こる殺人事件では、今まで見たことも聞いたこともないようなモノが現場に残されている。それは、“赤い縄の結晶”だ。

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 17年前から全国各地で発生している謎の連続殺人事件。被害者も犯人像もバラバラだが、現場の近くに必ず“赤い縄の結晶”が残されていることから、通称「赤い縄結晶連続殺人事件」と呼ばれている。しかも、この結晶は何を意味するのかはもちろん、成分すらもはっきりしない、全てが謎の物体なのだ。なんだか神秘的な鉱物のようにも見えるが、これは地球外生命体の仕業ではないか? と。得体の知れない気持ち悪さが物語の序盤から付きまとう。

 事件の真相を追い求めるのは刑事課巡査部長・白峰。凛とした表情と、どんな捜査も全力で取り組む力強い姿が印象的な彼女だが、実は「赤い縄結晶殺人事件」によって母親を失ったという悲しい過去を持つ。そんなある日、事件の捜査を進めていたところ、「赤い縄結晶殺人事件」の専門管轄に所属する賽原と出会う。どこか冷めているというか、人間らしい体温を感じない不気味な男だが、この男との出会いによって、白峰の運命は大きく動き出す。

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RED Es

RED Es

 ――刑事コンビが謎の殺人事件の真相を追い求める。『RED Es』のベースにあるのは、シンプルかつ正統派な刑事ものミステリーだ。だが、現場に残されている“赤い縄の結晶”の正体を追うなかで明らかになる、人ならざる「赤縄(せきじょう)」の存在。血管の集合体を思わせるようなグロテスクさ、でもどこか神々しい雰囲気すら感じる赤縄だが、この展開によって今まで見えていた世界が全てひっくり返る……まるでSF作品を見ているかのような衝撃。そして異能力バトルを思わせるような熾烈な戦いが繰り広げられていく。

 本作を読み進めていくと、白峰が冒頭から繰り返し心の中でつぶやくとある言葉が、一層心に突き刺さる。

「心臓(いのち)の使い道を見つけるために生きている」(1巻7ページより)

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 幼少期に受けた心臓移植手術のおかげで今の人生がある彼女だからこその言葉だ。この白峰の心臓、そして血管の集合体を思わせる赤縄の存在……生と死が直結するようなモチーフの登場と、因果関係を感じるストーリー展開によって、ミステリーとしての凄みが一層増し、さらに1ページ、いや1コマずつじっくり見逃さず没頭したくなるような引力を生む。

 さて、赤い縄の結晶、赤縄の真相とは……? その手繰り寄せた“縄”の先にはどうか希望が待っていてほしい。

文=ちゃんめい
?藤井あだし野/白泉社