残り100回しか食事できない女性と“グルメ旅”!? ポプラ社小説新人賞「ピュアフル部門賞」に輝いた『余命100食』に感涙する読者続出!

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/21

余命100食
余命100食』(湊祥/ポプラ社)

 自分はあと何年生きるのだろうと、寿命について考えたことがある人は意外と少なくない。では自分があと何回食事できるのか、そこまで思考を巡らせたことのある人はどのくらいいるだろうか。グルメを楽しむたびに死が刻一刻と迫る、そんな運命と向き合う女性を描いた小説が『余命100食』だ。

 同作を執筆したのは、新進気鋭の作家・湊祥(みなと しょう)。2018年に開催された「『一生に一度の恋』小説コンテスト」で最優秀賞に選ばれた『あの時からずっと、君は俺の好きな人。』でデビューを果たし、人気シリーズ『鬼の生贄花嫁と甘い契りを』も手がけた。

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 そんな湊が手掛けた『余命100食』は、グルメと余命をかけあわせた切なくも温かい物語で、ポプラ社小説新人賞「ピュアフル部門賞」を受賞している。主人公の室崎凍夜はスノーボードのプロ選手であり、過去にオリンピックで銅メダルを獲得したほどの実力者。しかし競技中に発生した事故がトラウマとなり、無気力な毎日を送っていた。

 主戦場としていた雪山からも縁遠くなりつつあるなか、彼の心を支えてきたのは“食事”だけ。「りーのおいしい日記」というグルメブログを頼りに各地を巡っていたある日のこと、神奈川県鎌倉市で偶然にもブログの著者である咲村梨依と出会う。

 凍夜が読者であることを知った梨依は食の趣味が合うと考え、1カ月のグルメ旅への同行を打診。最初は乗り気ではなかった凍夜だが、彼女が「余命百食」という奇病に冒されていることを知り、興味本位で付き合うことになる――。

 ここで語られる「余命百食」とは、食事をするたびに「余命指数」という体内の数値が減っていき、ゼロになると死に至るという病気。治療法は存在せず、絶食による延命も不可能だという。初期症状を訴えてから検査して発覚したころには残り100食程度しか食べられない状態であることから、この名前がつけられたのだとか。

 逃れられない運命に絶望してしまいそうなものだが、梨依は死を恐れる様子も見せずに限られたグルメライフを満喫する。対して凍夜は、一歩間違えれば死んでいたかもしれない事故を経験してしまい、雪山へ戻れずにいた。一度経験した死の恐怖に怯える凍夜と、迫りくる死と向き合う梨依。旅のなかで突き動かされるふたりの心情描写が、同作の読みどころのひとつと言えるだろう。

 またグルメをテーマにしているということで、作中には実在するレストランも登場する。凍夜と梨依が食事する場面では著者の豊かな文章表現が光っており、読んでいるだけでこちらもお腹が空いてしまうはず。

 そして終盤には、涙を禁じえない展開も待っている『余命100食』。手に取った読者からは、「食を通じて育まれていく2人の関係性にほっこりしました」「涙のこぼれるラストに悲壮感だけではない温かさを感じた」「ラストを思い出すだけで泣きそうです…」などの感動の声が続出している。

 ふたりのグルメ旅は一体どんな最後を迎えるのか、ぜひ同作を手にとって確かめてみてほしい。