ゲスすぎる元祖寝取られを描いた問題作。14世紀に描かれた寝取られ現場の絵が笑える/つい人に話したくなる名画の雑学①
公開日:2023/12/14
『つい人に話したくなる名画の雑学』(ヤスダコーシキ/KADOKAWA)第1回【全7回】
「昔の風俗をつぶやくよ」ことヤスダコーシキ氏が、落ちついた語り口をベースに、独自の解釈をネットスラングなども用いてわかりやすく絵画を解説。
名画のモチーフや当時の背景、作家の人生など、絵画にまつわる雑学を誰でも楽しく知ることができます。軽妙で読みやすい文章は、長文でもさらっと読めるほど。ヤスダコーシキワールドに惹き込まれれば、あっという間に1冊を読破してしまいます。
読後感は「おもしろかった!」と充実したものになること確実。絵画に興味がある人はもちろんのこと、絵画に対してハードルが高いと感じている人や、長文が苦手な人でも楽しめる1冊です!
これぞ元祖NTR(寝取られ)
『愛人を見せるオルレアン公』
ウジェーヌ・ドラクロワ
【フランス 1798~1863年】
恐ろしいまでにゲスい修羅場を描いた問題作
NTR(寝取られ)という単語がネットに氾濫していますが、これぞまさに元祖NTRかもしれません。
シーツをペロッとしているのは、14世紀の人、オルレアン公ルイ1世。下半身を露出され恥ずかしそうなのは、愛人マリエットです。そして卑猥な光景に戸惑っているのは、彼の侍従のオーベール。ここまでなら貴族の卑猥な悪戯というところですが、実はこれ、悪戯なんていう可愛いレベルじゃありません。
この真っ裸の女性マリエットは、ルイ1世の愛人であると同時に、侍従オーベールの妻でした。つまりルイ1世は夫に向かって「これだーれだ?」と妻の下半身を見せた訳です、恐ろしいまでにゲスいですね。
この問題作を描いたドラクロワは、フランスを代表するロマン主義の巨匠。『民衆を導く自由の女神』は知らない人がいないでしょう。見た事がある人も多いのではないでしょうか。
アカデミックな作品が多いと思われがちな彼ですが、意外と砕けた、というか世俗的な画題にも取り組んでいた事がうかがえます。
情熱の追求
ドラクロワは自由と情熱を求めるロマン主義の画家とカテゴライズされています。堅苦しく完璧を求める新古典主義とは一線を画していた訳です。そんな彼に強い影響を与えたと言われるのが同時代の詩人バイロン。彼の自然で自由な詩とその情熱的な生活は、ドラクロワの創作意欲を強く刺激しました。