「かわいいは正義」は紀元前から!? 古代ギリシャの高級娼婦が裁判で無罪になった理由/つい人に話したくなる名画の雑学②
公開日:2023/12/15
『つい人に話したくなる名画の雑学』(ヤスダコーシキ/KADOKAWA)第2回【全7回】
「昔の風俗をつぶやくよ」ことヤスダコーシキ氏が、落ちついた語り口をベースに、独自の解釈をネットスラングなども用いてわかりやすく絵画を解説。
名画のモチーフや当時の背景、作家の人生など、絵画にまつわる雑学を誰でも楽しく知ることができます。軽妙で読みやすい文章は、長文でもさらっと読めるほど。ヤスダコーシキワールドに惹き込まれれば、あっという間に1冊を読破してしまいます。
読後感は「おもしろかった!」と充実したものになること確実。絵画に興味がある人はもちろんのこと、絵画に対してハードルが高いと感じている人や、長文が苦手な人でも楽しめる1冊です!
可愛いは正義! 紀元前からあった説?
『アレオパゴス会議のフリュネ』
ジャン=レオン・ジェローム
【フランス 1824~1904年】
一同ガン見の後に「あ、無罪」
フリュネは古代ギリシャのヘタイラ(高級娼婦)でした。超美人な上に頭の良い彼女は大人気でしたが、ある日、祭儀に関する不敬罪で起訴されます(祭儀の内容は不明)。お偉方の糾弾で窮地に陥る彼女。それを見ていた弁護人のヒュペレイデスは何を思ったか彼女の服を剝ぎ、真っ裸にしました。
「あ、無罪」。
お偉方一同はガン見の後、このような判決を下したそうです。こんなに美しい人が、神を冒瀆する訳がないという事でしょう。可愛いは正義という概念は、紀元前からあったようです。
ちょっと女性が眉をひそめそうなこの裁判を描いたジェロームは、画家であり彫刻家。フランスの芸術アカデミーの規範下にある「アカデミック美術」の影響を受けていました。簡単に言うと、古代ギリシャ芸術の上に溢れる情感を乗せた画風ということで、若いギリシャ人の男女を描いた『闘鶏をする若いギリシャ人』は、1847年のサロンに出品し銅賞を獲得しています。
ヘタイラの実態
娼婦とは言え、ヘタイラは教養のある女性たちでした。特定の客と深く長く付き合い、時として詩を口ずさみ政治談議をする。いわば疑似恋人兼友人みたいな存在だったようです。一方ただ単純に不特定多数に体を売る女性は、ポルナイと呼ばれていました。