絵画にハエがついているドッキリ!? 死や腐敗を示すというハエを描いた別の意味とは?/つい人に話したくなる名画の雑学⑦

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/20

つい人に話したくなる名画の雑学
1470年頃 油彩、パネル(板) 537×408㎜ ナショナル・ギャラリー(イギリス、ロンドン)

「おや、蠅が絵に?」
画家が企てたドッキリ企画

『ホファー家の女性の肖像』

シュヴァーベンの画家

死や腐敗を暗に示す「蠅」
ただ、それは建て前で

 絵画技法のひとつに「ムスカの描写」というものがあります。「目が、目がぁ」と言っていた某アニメのあの大佐とは全くの無関係です。ムスカはラテン語で蠅の意味。16世紀頃の絵画には時々、このように蠅がちょこんと絵画に描き込まれる事がありました。これは暗喩とされており、「死」や「腐敗」を意味すると言われます。

 常識的に考えれば、「死を常に思う」(メメント・モリ)などという哲学的な意味が込められていると判断するべきかもしれません。しかし、そうした真面目な理由はあくまでも建前でした。本当は画家が自分の絵の腕前を誇示したくて、このムスカの描写を使っていたというのが真相のようです。その腕前披露の情景を想像するとこんな感じでしょうか。

 絵を見に来た人「おや? 蠅が付いていますよ」(手で蠅を払おうとする)。

 画家(ドヤ顔で)「いや、追い払うには及びません。それは私の描いた絵なのです」。

蠅の意味

 ムスカ(蠅)の描写の意味については、他にもいくつかの仮説が立てられています。肖像画の主が既に死んでいる事を表すという説や、絵画の対象が信仰を捧げるような対象ではない事を表すという説、そして蠅が災いを避けるお守りのような役目を果たしているという説など。正確な意味を特定するのは、何か決定的な資料が出てこない限り難しいでしょうね。

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