人類最弱のハンターがS級モンスターに八つ裂きにされて進化? モンスターを倒してお金を稼ぐファンタジーマンガ
更新日:2024/2/1
思春期の頃、一度は「自分はもしかしたら、RPGやアニメに出てくる勇者のように特殊な能力を宿しているのかも」と、黒歴史レベルの勘違いを妄想したことがあるのではないだろうか。僕は「手から魔法が出せるようになるかも」、「実は自分が気づいていないだけですごい力を秘めた隠れヒーローなのかも」など、思い出せば恥ずかしくなるような妄想を広げていた気がする(僕だけでないことを祈る)。
大人になって振り返ると、そんな能力を持たないといけない世界にならなくてよかったと思うが、『俺だけレベルアップな件』(DUBU、Chugong/KADOKAWA)を読んで、思春期の自分の脳内が如実に再現された世界に、とても懐かしさを覚えた。リアルな世界から大きく逸脱した世界観の漫画は、歳を重ねてもワクワクするものだ。
物語の始まりは、十数年前。現実世界と異次元を結ぶ通路「ゲート」が現れ、ゲートの奥にいるモンスターを倒し対価を得る「ハンター」という職業が誕生した。上級モンスターを倒せば、それ相応の対価が支払われることもあり、主人公の水篠旬は、母親の病院代を稼ぐために仕方なくハンターとして生計を立てている。しかし彼の呼び名は「人類最弱兵器」。S~Eのランクがあるハンターの中でも最低のE級、かつその中でも最も弱いハンターという評価を受けていた。
そんな彼に転機が訪れるのは、比較的優しいD級ダンジョンにハンター仲間と挑戦したとき。通常、1つのゲートで挑戦できるダンジョンは1つだけなのだが、旬が挑戦したゲートにはもう1つダンジョンが隠されていた。それがS級レベルのダンジョンだと気づかず進む旬たち。そこで17人いた仲間は次々と戦闘不能になってしまう。決死の覚悟で仲間を逃がす旬は、ひとりS級のモンスターと戦うことに。ただその勇気もむなしく、彼は八つ裂きにされてしまう……。その時、彼の目の前に「お知らせ」と書かれたデジタルサイネージのような画面が現れる。そこにはこう書かれていた。
“プレイヤーになることができます。引き受けますか?引き受けない場合0.02秒後にあなたの心臓は停止します”
死ぬくらいなら引き受けると決心し、光に包まれる旬。ここから彼のハンター人生は大きく変化していく。
本作のカギとなるのは、旬の目の前に現れた画面だ。どうやら見えるのは旬だけで、他の人には一切見えていない様子。「お知らせ」の他には「メッセージ」や「デイリークエスト」といったコンテンツも表示されるようだ。その中でも旬にとって重要なのは「デイリークエスト」だ。その日にクリアしなければいけないミッションが表示され、達成できないとペナルティクエストが課され、達成するとステータスが上がる能力値ポイントがもらえるという仕組みになっている。彼を取り巻く環境は、現代のRPGゲームの世界そのもの。僕が思春期の頃に思い描いていた世界観とも合致しており、彼がミッションをクリアして強くなるたびに「そうそう、こういう感じだよね!」とワクワクしてしまう。
でも1つ疑問が思い浮かぶ。旬の目の前に現れる画面はなぜ旬にしか見えないのだろうか。彼を強くすることが目的だとしたら何のために? もし僕が画面を出す側だったら「人類最弱兵器」の前にわざわざ出すことはしない。もっと潜在能力が高そうなハンターを選ぶだろう。旬に高い潜在能力が秘められているのかもしれないが、それはそれで展開として激アツだ。彼の今後を見守りたくなる。
ちなみに本作は、2024年1月からアニメ版が放送予定だ。漫画で描かれるモンスターとの躍動感あふれる激しい戦闘シーンが、アニメでどう再現されるのか。とても楽しみで仕方ない。漫画も全話カラーで描かれているので、作品の臨場感をいち早く楽しみたい人はぜひ漫画からチェックしていただきたい。
文=トヤカン