もしもペンギンを飼ったら、家が大変なことに!? “クセ強め”の生態を学べる児童書で、わが子もペンギン博士に!
PR 公開日:2023/12/19
両足を広げてポツンと立つ姿や、羽を広げてトコトコと歩く様子など、独特のかわいさで愛されているペンギン。もし家で飼うことができたら、あの姿を毎日眺めることができるのに…。『もしも家にペンギンが来たら…』(上田一生:監修、ふくのうみ:カバーイラスト/主婦の友社)は、そんなペンギンの面白い生態を知ることができる児童書です。
解説しているのは、40年以上ペンギンの調査や研究、保全活動を続け、ペンギン博士と呼ばれている上田一生さん。この本でペンギンたちの知られざる秘密を知れば、子どもたちも小さなペンギン博士になれるかもしれませんよ。
ペンギンがわが家にやってきたら…? そんな夢のようなシチュエーションが描かれた漫画から、本書はスタートします。
動物が大好きな10歳のコウくんは、パワフルなママ、のんびりマイペースのパパ、ちょっとこわがりで7歳の妹ミナミと4人暮らし。ある時、新しく建ったお家のおふろに大きな穴があいて、そこからペンギンが湧いて出てきちゃった!? こうして始まったペンギンとの不思議な同居生活は、かなり楽しそうに見えますが…。
ペンギンとの同居生活に入る前に、まず読んでおきたいのが「日本で見られるペンギン」の一覧です。ペンギンは18種類しかおらず、そのうち日本で会えるのは12種類だけ。筆者は小学1年の息子と一緒に本書を読んだのですが、12種類の中で最も背が高いコウテイペンギンは全長100~130cmもあり、息子は自分の身長と変わらないことに驚いていました。どのペンギンも形や柄などに特徴があり、物語の中にもさまざまな種類が登場するので、ここで推しペンギンを探しておくと、物語をより一層楽しめるはずです。
物語は、ペンギンとの同居生活を想像したイラストのページとあわせて、彼らの生態を紹介するページが展開しているので、ペンギンに関する知識をしっかりと学ぶことができます。
うちの小1男子がゲラゲラと笑っていたのは、ペンギンを飼っていたら家の中が生ゴミみたいな匂いになった…というエピソード。やっぱり子どもはこういう話題が好きですよね(笑)。ペンギンの体からはいつも食べる生魚の匂いがする上に、お尻の近くにある「尾脂腺」という器官からくさい脂を出し、その脂を全身にぬりたくるので、臭くなってしまうのだそう。さらに、水に入れず、“おふろに入っていない状態”でいるヒナのほうが大人よりもくさいとか。愛くるしいペンギンの意外な一面。これではやっぱり家で飼うのはむずかしそうですね…。
運動会のリレー競走でペンギンが爆走して余裕の一等賞をとった、という話では、「あんなにトコトコ歩いてるのに!?」と息子が驚いていました。ペンギンは走るのが速く、最も俊足なジェンツーペンギンは時速10kmで走ることができ、ジョギングをする人と同じくらい。たしかに、小学1年だと追いつけないかもしれません。じつはペンギンは足が長い、という話にも2人で驚きました。あんなに足が短く見えるのは、足を体の中に隠しているから、らしいですよ。
「オスペンギンがパパに恋しちゃった!?」というページを読んだ息子は、「じゃあ○○くんと僕が結婚することもあるってことだよね?」と男の子の友達の名前をあげ、ペンギンの生態に自分の立場を重ねていたようです。このお話は、「同性同士でも恋をすることはあるんだよ」という多様性についてお話しするきっかけにもなりそうですね。実際にメス同士、オス同士のペアは世界中で見つかっていて、飼育施設では、ほかのペアに放棄された卵を同性ペアがお世話するケースもあるのだとか。
さて、相撲好きの息子が「これ、もっと見たい!」と身を乗り出して読んでいたのは、ペンギン同士がお相撲をとる場面でした。のんびりとしたイメージが強いペンギンですが、その多くはなわばり意識が強く、相手がたとえヒナであっても「近寄るなよ!」と怒り出すのだとか。胸いっぱいに空気を入れてふくらみ、体を大きく見せようとする姿は本当にお相撲さんのよう。気が強い種類になると、相手を追い回し、まわりも巻き込んで乱闘さわぎになるそうで、普段の穏やかな様子からは想像できません!
ここに紹介しただけでも、意外と「クセつよ」なペンギンの生態がわかったのではないでしょうか。その他にも、かつて北半球の海にすんだオオウミガラスが狩りによって1844年に絶滅した話や、海水の温度や気温が高くなるとペンギンの数が減ってしまう…といった大真面目なお話もあり、大人もまた考えさせられました。本書を読み、ペンギンの面白い生態に驚いたり、親しみを感じたりしながら、ペンギンとこれからも共存していける地球について親子で会話してみるのもいいですね。
文=吉田あき