52歳の真面目なオタクおじさんが15歳悪役令嬢に転生。つい出てしまう親目線コメントで好感度爆上がり!?
PR 公開日:2024/1/6
女性向けのWEB小説ジャンルとして多大な人気を集めている「悪役令嬢転生もの」は、今や一大ジャンルとして確立している。主人公が自身のやりこんでいた乙女ゲーム世界の悪役令嬢に転生し、定められた断罪ルートを回避すべく立ち向かっていくのが一般的な流れだが。しかし近年、そのもはや王道となった展開からさまざまな亜種が発生し、読者の意表を突いている。
『悪役令嬢転生おじさん』(上山道郎/少年画報社)も、思わず「そんな展開アリ!?」と思わずつっこみたくなる、笑いありドキドキありのコメディタッチな悪役令嬢転生ストーリー。多数の少年漫画を手掛けているベテラン漫画家・上山道郎氏が描く作品だけあり、老若男女問わず楽しめそうな要素があちこちにちりばめられている。
本作品の主人公は、52歳の真面目でオタクな公務員、屯田林憲三郎(とんだばやし けんざぶろう)。憲三郎は交通事故に遭い、気がつくとなぜか娘の日菜子がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル学園ラブ&ビースト」の、高飛車な公爵令嬢グレイス・オーヴェルヌに転生していた。
だが、日菜子がリビングでプレイしていたのを見ていたとはいえ、自身はやったことのない乙女ゲームの世界。憲三郎は乙女ゲームのセオリーや流れもよく分からないままに、とにかくゲーム主人公のアンナ・ドールと攻略対象のイケメンたちをくっつけるべきだと考え、それに基づいて行動していくが――。
グレイスの体は15歳の令嬢だが、52歳の憲三郎にとって、アンナをはじめとする学園の生徒たちは自身の子どもくらいの年代。そのため、どうしても同級生としてではなく親目線で見てしまう。そして経験の差による達観した考えと器の大きさ、対応力の高さゆえに絶妙にズレた行動を取ってしまい、本来アンナにいくはずの攻略対象イケメンたちからの好感度に加え、アンナからの好感度までもがどんどんグレイスに集まっていく。
そのグレイス(憲三郎)のいい意味でのおじさんっぷりに、不思議なくらいほっこりしてしまうのだ。
また2巻では、生徒たちが授業で従魔(ビースト)を召喚する場面が描かれる。これはその後のシナリオや攻略方法にも関わってくる、つまり自身の魔法属性にも関わってくる重要なもの。ここでもグレイスは、思わぬ形でその場にいる全員の注目を集めることとなる。
これが、ただすごいビーストを召喚したとか、逆に何も召喚できなかったとか、そういうレベルの話ではなく、見ているこちらが思わず「えっ!?」と声に出してしまう衝撃展開なのだ。そしてちょっと可愛い。このあたりの詳細は、ぜひとも本書を読んで確認してほしい。
そして本作品の大きな特徴として、日本に残された憲三郎の家族までもが登場し、「マジカル学園ラブ&ビースト」の世界で活躍することが挙げられる。だが、家族は転生してくるわけではない。ではいったいどうやって活躍するのか――。こうした一つ一つの展開に「そうくるか!」と驚きが詰まっており、次はどういう展開になるのかとどんどん読み進めてしまう。
その後もグレイス(憲三郎)は、憲三郎としての経験やオタク知識を駆使し、次々と周囲の好感度をかっさらい、認識にズレが発生したりしなかったりしながら、あくまで「悪役令嬢」としての姿勢を本人なりに貫き(?)つつ周囲との絆を深めていく。
模擬演習やグレイスの実家である公爵家での出来事、脱出ゲームのようなハプニング、学園祭、ダンジョン探索など、見たい要素も満載! 攻略対象のイケメンたちの強すぎる個性にも注目したい。
また、2024年1月4日には『悪役令嬢転生おじさん』第6巻が発売された。学園祭でちらりと見えるグレイスの母親の不思議、5巻ラストで描かれる気になる展開の行方はどう描かれているのだろうか。まだまだ目が離せない本作を、引き続き見守っていきたい。
文=月乃雫