入社2年目がチームリーダーになり業績13倍のV字回復を実現? Z世代中心のチーム経営の成功例をストーリーで学ぶ

ビジネス

更新日:2024/2/1

チームX(エックス)
チームX(エックス) ── ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方』(木下勝寿/ダイヤモンド社)

 組織にもドラマがある。一時は「絶頂から地獄」に堕ちるも「創業社長の経営からZ世代中心のチーム経営」へ転換。わずか「1年で業績13倍のV字回復」を遂げた企業の顛末を描く『チームX(エックス) ── ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方』(木下勝寿/ダイヤモンド社)は、ビジネス書ながらも、さながらドキュメンタリーのようだ。

 著者は、2000年に創業したeコマース企業・北の達人コーポレーションの代表取締役社長である木下勝寿氏。企業の「最悪期」を乗り越えた木下氏が、信頼するスタッフと共に挑んだ「チーム変革」すなわち「チームX」のリアルとは。本書の内容を一部抜粋の上で、紹介する。

退職者も続出した当時は「組織が機能不全に」

 木下氏が自社への危機感をおぼえたのは、2020年頃。会員向けに「自社ブランドの化粧品、健康食品など」を販売する同社では、新規顧客の集客人数が「全盛期の約6分の1にまで減少」したという。

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 当時は「個々のセンスに任せた野武士集団になってしまい、組織が機能不全に陥っていた」と振り返る木下氏。負の連鎖は続くもので、会社の将来性を見出せず「退職者」も相次いでいたというのもリアリティあるエピソードだ。

 しかしそこで、木下氏は「チームX」に賭けた。タイトルにもある言葉は本書ならではの造語で、「X」が表すのは「変革」を意味する「トランスフォーメーション」のこと。近年よく聞く、デジタル技術によりビジネスモデルの変革を促す「DX」(デジタルトランスフォーメーション)と同様に、チームマネジメントに変革をもたらそうとした。

 自社商品をユーザーへ届けるためには「広告クリエイティブの成果」が鍵になる。業績回復のためには、クリエイティブを生み出す「メンバー」が「自ら動かない風土」から「率先して動く風土」への転換が必要。「本気で『チームX』に取り組もう」と決意した木下氏は、メンバーみずからが考え、動ける環境を作り上げた。

広告クリエイティブ改善のために奮闘

 チームマネジメントを扱う書籍は多々あるが、本書は一線を画す。その理由は、木下氏や会社のメンバーが、業績の危機に陥った企業でいかにして動いていたかが、頭の中でリアルに浮かび上がってくるからだ。

 例えば、自社の広告クリエイティブを改善するべく、木下氏はX(旧Twitter)における自社ツイートの改善を図った。ツイートの「1行目の書き出しだけで成果が2倍以上変わる」のは、分かっていた。成果を上げるためには「応用」ではなく、「基本」に立ち返るのも重要。メンバーがが失ってしまった「消費者目線」を取り戻すべく「新人研修」の開発にも着手し、その一つである「着眼法研修」を作った。

チームX(エックス)

 実際、現場では「新人4~5人」が、たがいに「フィードバック」しあう形で、参考の広告クリエイティブに「目を留めた理由」「読もうと思った理由」「クリックしたいと思った理由」をディスカッション。この研修が、クリエイティブ向上の「小さな息吹」になったという。

 また、入社2年目のメンバー「タツオ」さんを、23歳の「最年少チームリーダー」に抜てきしたエピソードも、本書にリアリティをもたらしている。

 木下氏は企業改革のために、相手が誰であろうと「それって、おかしくないですか?」と持論を「ブレずに」述べ、さらには「実行する力」を持つタツオさんを評価。結果、持ち前の「リーダーシップ」が、広告の「運用チーム」を束ね上げる原動力になった。

 チームを動かすなら「ハードワークに頼るな、頭を使え」と強いメッセージを放つ本書はマネジメント側、現場側の双方に響く。企業で私たちは、いかにして動くべきか。著者たちの経験から、学びとってほしい。

文=カネコシュウヘイ