成功の本質は、他人を喜ばせること! 一流のアスリートたちも実践する簡単メンタルトレーニング

ビジネス

公開日:2023/12/22

『他喜力 新装版』(西田文郎/清談社Publico)
他喜力 新装版』(西田文郎/清談社Publico)

 2023年夏の甲子園で、107年ぶりの優勝を決めた慶應義塾高校。彼らのスローガンは「他喜昇り」だった。「誰かを喜ばせたい」という気持ちが力になることから選んだそうだ。

 このスローガンのもとになった考え方「他喜力」を紹介しているのが、他喜力 新装版』(西田文郎/清談社Publico)。著者の西田文郎氏は日本のメンタルトレーニング研究の第一人者だ。数々の経営者や大谷翔平選手をはじめとしたアスリートたちも実践しているという考え方を紹介しよう。

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他人を喜ばせながら思い通りに動かす「他喜力」

「他喜力」にはさまざまなメリットがあるという。まず、アイデアが生まれやすい。他喜力とは、相手を喜ばせることにいかに気付き、実行できるか、という能力だからだ。

 ある旅館では、宿泊費を1.5倍に値上げしなければ経営が立ち行かない状況に陥っていた。値上げをしてサービスがそのままでは、客に良いことがない。そのため、値上げに見合った楽しみを感じてもらおうと、マグロの解体ショーを始めることにした。するとこれがたちまち大人気に。ショーを目当てに来る客が増え、値上げ前よりも繁盛するようになった。

 また、他喜力があれば、結果的に相手を思い通りに動かせるという。営業マンなら、商談相手に気に入られて、商談がまとまるなど「この人の話なら聞いてあげよう」という気持ちになってもらえるのだ。

 そうなれば、誘いを断ったとしても、「いつも喜ばせてくれるこの人が断るなら、よっぽどの理由があるに違いない」と思われて、マイナスの感情が生まれにくい。周囲を喜ばせながら、自分の思うように事を進めていく力が、他喜力なのだ。

「他喜力」の高め方

 良いことづくめの「他喜力」は、誰でも簡単に高められる。本書では8つの具体的な方法が掲載されているが、その中から特にすぐ実践できそうな2点を紹介しよう。

 1点目は、家族を喜ばせること。いきなり他人を喜ばせるのは難しい。だが身近な家族なら、すぐに試すことができる。初めは、遅く帰宅した家族にねぎらいの言葉をかけるところから。小さなことだけれど、案外それができない人が多い。声をかけて少しでも喜んでくれれば、次は何をしてみようかと考えるのが楽しくなるはずだ。

 2点目は、挨拶は一番初めを狙うこと。挨拶はされたら返せば良い、後輩が先に挨拶すべき、などと思っている人もいるだろう。しかしどんな時でも自分から先に挨拶してしまった方が良い。誰より早く笑顔で挨拶すれば、相手は「自分と会ったことを喜んでいる」という印象を受けて嬉しくなるもの。真っ先に自分のところへ来てくれたという良いインパクトも残せる。相手を喜ばせられる上に、思いついたらすぐ行動するクセをつける訓練になるのでオススメだ。

「他喜力」の素は、自分を喜ばせること

 他喜力のある人は、自他を問わず喜びを感じる力が強い。誰もが子どもの頃は喜びに敏感だったのに、大人になるにつれていろいろな経験から純粋に喜びを感じる力が弱ってしまうそうだ。感度が弱まっていると、何が相手の喜びになるのかも分からない。まずは自分の喜びを感じる力を回復させることが必要だ。

 そのために大切なのは「イヤなことはしない」。自分の仕事じゃないのに押し付けられている、行きたくないのに付き合いで行っている集まりがある、などイヤなことを我慢していないだろうか。相手が喜んでいたとしても、自分がイヤな気持ちでは意味がない。イヤイヤやることが当たり前になると、他人を喜ばせようという気持ちも生まれないだろう。

 イヤな事を避けるのは、一見甘えた意見のようにも感じられる。しかし、自分を大切にして、何に喜びを感じるのかを知ることが、他人の喜びにもつながる。他喜力を得るためには、時に勇気を持って断ることも大事なのだ。

 本書では、他喜力の磨き方のほか、他喜力を使って、周りを思い通りに動かすための方法も掲載。その中身は「褒める」「相談する」など、一見よくある行動だが、他喜力をプラスした具体的なテクニックとなっている。まずはしっかりと他喜力を身に着け、ここぞという時に使ってみよう。

文=冴島友貴