“おすしさいこうかよ”!大人の不機嫌で子どもに「いい子」を演じさせないための合言葉を学ぶ1冊
公開日:2023/12/24
子どもの頃、親に言われて傷ついたひとことが忘れられないという人は少なくないはず。それなのにいざ自分が親になってみると、子どもを強く叱ってしまったり、不機嫌な態度を取って萎縮させてしまったりして、自己嫌悪に陥る−−。そんな葛藤を抱えるすべての大人に向けて書かれたのが『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(こど看/KADOKAWA)だ。著者は精神科認定看護師の「こど看」氏。児童精神科病棟に10年勤め、さまざまな課題を抱える6〜18歳の子どもたちをケアしてきた経験から、子どもの心を守るために大人のどのようなかかわりが必要かを説いている。
なぜ子どもの心は傷つきやすい? 大人が理解しておくべき2つの特徴
子どもの心が傷つきやすいのはなぜなのだろうか。本書によると、それは「大人と子どもの心の成熟度の違いによるもの」。子どもは青年期の発達課題である「アイデンティティ(自分はほかの誰でもない唯一無二の存在であるという認識)」をまだ獲得していないため、自他の境界をはっきり引くことができない。よって他者の問題を自分の問題と混同しやすく、例えば家庭内の大人が不機嫌でいると、「自分が悪いことをしてしまったのかも……」と不安になり、見捨てられる恐怖から、「いい子」を演じてしまうのだという。
また、小学生から高校生にかけての「児童思春期」は、人間関係や進路、体の変化への不安など、数多くの壁にぶつかる時期であり、子どもが「助けて」と言える環境づくりが大切だと繰り返し著者は述べている。
これさえ忘れなければ!の合言葉「おすしさいこうかよ」
子どもの心を決して脅かさず、子どもが主体性を持って挑戦していくためのかかわり。本書では日々の褒め方から、子どもに「死にたい」と言われたときの対応方法まで幅広く取り上げるが、もっとも基本となる姿勢を端的に「おすしさいこうかよ」という合言葉で伝えている。
「おびやかさない」、「すぐに助言しない」、「叱責しない」、「最後まで話を聞く」、「意向を軽視しない」、「子どもが使う言葉を使う」、「疑わずにいったん信じる」、「感情を否定しない」、「余計なひとことを言わない」。
この9つのポイントの頭文字をとったのが「おすしさいこうかよ」。育児中の人に限らず、子どもにかかわるすべての人が心に持っておきたいフレーズ集といえるだろう。
文=杉本透子