YouTuberが廃ビルに突撃! 生配信を視聴中に外の騒音が気になって見たものとは?/3分間ミステリー 十の鍵②
公開日:2023/12/27
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 十の鍵』(和智正喜:著、りたお:イラスト/ポプラ社)第2回【全5回】
短編のミステリー物語。じっくり深読みをして、本当の“かくされた意味”にたどり着けるか? 物語に潜むトリックが人気の短編物語『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』シリーズ第10弾。今回はサブタイトルの「十の鍵」に秘密が隠されている⁉ 物語を読めば、シリーズ初のトリックに誰もが驚愕すること間違いなし。物語の考察が済んだら解説ページで答え合わせができるため、深読みが苦手な人にもライトに読み進められます。1話3分ほどで読める『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 十の鍵』の“不思議な世界”をお楽しみください。
突撃YouTuber!
オレはYouTubeを見るのが好きだ。
好き、というより、これしか楽しみがない。
だから、今夜も古いノートパソコンで、YouTubeを見ている。
見ている配信は、ガンノスケのチャンネルだ。
ガンノスケは、いわゆる突撃系YouTuberというヤツで、いろいろなところに突撃して生配信をする。
最近は、幽霊が出るというウワサのトンネルとか、呪われているという廃墟ホテルへ突撃している。
今日のガンノスケは、オバケが出るという廃ビルへきていた。
『見てください、これ。もうボロボロのビル。ずっと前につぶれた会社のビルなんだけど』
画面の中でガンノスケがしゃべっていた。
『こわされもせずに、ずっと放置されてんの。でね、夜になると、あの四階のはずれの部屋がね、ぼんやり明るくなるんだって。オバケだよねー、オバケ。じゃ、四階、行ってみようか!』
オレはごくりとツバを飲み……飲みこもうとしたが、ツバなんか、なかった。ぎゅっと手をにぎりしめようとしたが、そっちもうまくいかなかった。
画面の中では、ガンノスケがどんどん進んでいく。何人かのスタッフもいっしょだ。
暗い廊下の奥へ行って、階段を見つける。
──あれ?
なんだか、外がうるさい。
『あー、これはいますね。なにか邪悪な気配を感じてきましたよ』
配信に集中できないじゃないか。
『さぁ、いよいよ、四階につきました。実はここにくるまでの間に、スタッフのひとりが気分悪くなって、外にもどったんですよ。どうも霊にやられたんじゃないかと』
ガンノスケは四階の廊下を進んでいく。
──まったく。
配信に集中したいのに、外からガタガタうるさい音が聞こえてくる。
『ここです。夜になると灯りがつく部屋。いったい、なにがあるのか』
オレのたったひとつの楽しみをじゃましやがって。
──あぁ、もうホントにうるさい。
文句を言ってやろう。
オレは立ちあがって、ドアを開けようとした。だけど困った。ドアのノブがつかめない。
すると、ドアが開いた。
「うわああああああああ」
そして聞こえてきた、その悲鳴に、
──オレはおどろかなかった。
けれど、その悲鳴をあげた男の顔に、オレは心底、おどろいた。
そして、オレも悲鳴をあげた。
──ボォォォォォォォォォッッ!