知らない言語を話す宇宙人の親子に遭遇。しかし何を言っているかが理解できて…/3分間ミステリー 十の鍵④
公開日:2023/12/29
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 十の鍵』(和智正喜:著、りたお:イラスト/ポプラ社)第4回【全5回】
短編のミステリー物語。じっくり深読みをして、本当の“かくされた意味”にたどり着けるか? 物語に潜むトリックが人気の短編物語『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』シリーズ第10弾。今回はサブタイトルの「十の鍵」に秘密が隠されている⁉ 物語を読めば、シリーズ初のトリックに誰もが驚愕すること間違いなし。物語の考察が済んだら解説ページで答え合わせができるため、深読みが苦手な人にもライトに読み進められます。1話3分ほどで読める『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 十の鍵』の“不思議な世界”をお楽しみください。
なんでお弁当忘れるの!
「なんでお弁当忘れるの!」
学校に行く途中、突然、背中から飛んできた大声に、僕はあわてて振りかえった。
なんか聞き覚えのある声だと思ったら、全力でかけてくる母さんだった。
「なんでお弁当忘れるの!」
母さんはまたそう言って、僕に四角い包みを押しつけてきた。
「あ、お弁当」
「あ、じゃないでしょ!」
母さんにまたどなられた。
今日は給食がお休みで、お弁当を持っていかないといけない日だった。
朝、母さんにさんざん「お弁当、忘れないでよ。ちゃんと持っていってよ」と、言われていたのに、すっかり忘れていた。
「もー、ホントに気をつけなさいよ」
母さんはプンプンしながら、帰っていった。
僕はお弁当の包みを手にしたまま、小学校へ向かった。
そして、もうすぐ学校へつく、というあたりで、ひとりの子どもを見かけた。
背の高さは僕と同じくらい、銀色のツナギみたいな服を着ていて、頭は髪の毛もなにもなくて、ツルツル。
で、その頭は(顔も)緑色をしていた。目がばかみたいに大きい。
宇宙人だ。
宇宙人はもう、そんなにめずらしくない。
何年か前、おおぜいの宇宙人がやって来て、よくわからないうちに、地球に暮らすようになった。
それで、僕の学校でも、何人かの宇宙人の生徒を受けいれることが決まったはずだ。
きっと、この子も学校へ行くところなんだな。
でも、言葉とか通じるのかな?
友だちになれるかな?
僕がそんなことを思っていると、高いところ……空から、キュンキュンキュンキュンという不思議な音が聞こえてきた。音につづいて僕たちの目の前におりてきたのは、UFOだった。
UFOを見ても、僕はそんなにおどろかなかった。だって、目の前に宇宙人がいるんだから、そりゃUFOだって出てくるだろう。
着陸したUFOから、別の宇宙人が出てきた。目の前にいるのが小さな子どもの宇宙人だとしたら、あっちはきっと大人の宇宙人だ。背が高い。
その大人の宇宙人は、四角い箱をかかえていた。子どもの宇宙人に近づくと、
「%$%$$〜+*#>&%+;:;%#!」
そうわけのわからない言葉だか、音だかを発して、四角い箱を押しつけた。
僕は気になって、そーっと子どもの宇宙人の後ろに近づいてみた。
そして、箱をのぞいてみると、歯車みたいなものや電線みたいなもの、金属の棒、なんだか燃えないゴミを集めたようなものが入っていた。
「%$%$$〜+*#>&%+;:;%#!」
大人の宇宙人がまた……たぶん……同じ言葉をくりかえした。
あれ、なんて言ってるんだろう?
──あぁ、そうかっ!
僕はその宇宙人の言葉を、ようやく理解することができた。
そして、この宇宙人の子とも、なかよくやっていけそうな気がした。