2024年1月にアニメ化『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』異世界転生して可愛い動物をもふもふしまくる!
PR 更新日:2024/1/18
昔から、もふもふした生き物に目がない。柔らかな毛並みをたたえた猫、なめらかでふわふわなウサギ、ツヤのある毛並みと愛くるしい瞳で人を魅了する犬。もふもふに囲まれて生きる日々は、どれだけ幸せだろう。そんな妄想を抱く人々を、あっという間に虜にするコミック作品がある。向日葵氏による第4回ネット小説大賞受賞作品を原作として、高上優里子氏が漫画化した『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』(キャラクター原案:雀葵蘭/双葉社)。本書は、2018年4月に第1巻が発売され、2023年12月には最新刊となる12巻が刊行された。また、2024年1月7日よりTVアニメでも放映開始が予定されており、多くのファンから期待の声が寄せられている。
本書の主人公・秋津みどりは、物語冒頭で若くして命を落としてしまう。原因は過労死。しかし、自分の死に方に悔いを残す彼女の前に、神様が姿を現した。神様は、とある異世界で人間が他の種族を迫害していることを打ち明け、みどりに「転生して人類を滅ぼすべきか決めてきてほしい」と告げる。任務の重さに戸惑うみどりに、転生するなら「“特別な力”をあげる」と神様は囁き、みどりはその言葉に迷うことなくこう叫ぶ。
“もふもふしたい!”
“この疲れた心を癒やしてくれるのは、可愛い動物のもふもふしかないのよ……!”
かくして、みどりは「人間以外の生物に好かれる」という特殊能力を持ち、異世界へと転生した。転生先は、アスディロンの3つの大陸の中で、もっとも大きなラーシア大陸にあるガシェ王国。その王家に連なるオスフェ公爵家の第3子「ネフェルティマ(通称:ネマ)」として、みどりは新たな人生を生きることとなる。神様に授かった特殊能力のおかげで、さまざまな動物に愛され、家族からも惜しみなく愛情を注がれるネマは、平穏で幸福な毎日を送っていた。しかし、ある日国王の息子が契約した聖獣・ラースの背中に乗って遊ぶネマの姿を目の当たりにして、家族たちは仰天する。本来、聖獣は契約した主以外には懐かない。「ネマには特別な力があるのでは」と心配する父の予想通り、ネマはその後も、ドラゴンや珍獣などあらゆる種族と友好を深めていく。そんな彼女の特殊能力は、「珍しい生き物をもふもふする」という特権以上に、過酷な運命を招き寄せる。
その後、北方領土で魔物による被害が多発する事例が起こり、ネマは父と共に北方領視察に赴く。そこでネマが見たものは、人間に住処を追われ、飢えと恐怖に苦しむ魔物たちの姿だった。なぜ、魔物たちは理由なく住処を追われたのか。自然の摂理に反する行いを先導している人間がいることに気づいたネマたちは、未だ見えぬ敵の名称を「ルノハーク」とし、彼らの狙いを見極め、魔物と人間の共存を目指して試行錯誤を繰り返す。
多くの人々は、獣人や魔物を「恐ろしいもの」「排除すべきもの」として認識する。だが、ネマは違う。見知らぬ生き物を人々が恐れるのは、単に彼らを知らないからだ。実際、災いを生むとして迫害されていた「コボルト」なる生き物たちは、賢く穏健で、仲間想いの種族だった。ドラゴンはいつもネマに優しく、ゴブリンはネマに忠誠を誓い、フローズンスパイダーの赤子は小さな体でネマを守ろうとした。それは、ネマに特殊能力があったからじゃない。ネマが先入観を持たず、彼らを恐れず、ありのままの姿を受け入れ「わかり合いたい」と願ったからだ。
“私は会ったこともないかたをさげすむような、ひれつな人間にはなりたくありません。それとも、そのような見方が、きぞくのれいじょうとして正しいのですか?”
「淑女」と名高い家庭教師のアンリーの発言から、“言葉に踊らされ、他を差別し見下す選民意識”を感じ取ったネマは、口答えをした罰として頬を打たれながらも、毅然とした態度で上記の台詞を口にした。ネマの言葉は、何一つ間違っていない。だが、この姿勢を実際に身に着けている大人が、果たして何人いるだろうか。
「異世界でもふもふをなでなでしたい」とのネマの願いは、大いに叶えられている。だが、王国存続の危機にもつながる陰謀を暴き、守りたいものたちを守るための戦いの日々は、想像以上に過酷なものだ。タイトルにある通り、ネマは「がんばっている」。小さな体と逞しい心で、幾度となく涙を飲み込み、あらゆる種族が共存できる世界を望むネマの姿勢から教えられることは数多くある。もふもふタイムに癒やされ、少女が真剣に発する言葉の一つひとつに考えさせられる物語は、争いの絶えぬこの世界へ、多くの問いを投げかけるであろう。
文=碧月はる