哀しいヒロインの復讐劇を描く壮絶シリーズ、慟哭の第三弾!――『JK III』松岡圭祐 文庫巻末解説【解説:西上心太】
更新日:2023/12/26
TBS「THE TIME,」で話題の、青春バイオレンス文学!
『JK III』 松岡圭祐
角川文庫の巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。
『JK III』文庫巻末解説
解説
〈ゴミは……土に
主人公は女子高校生。タイトルの「JK」は、彼女が信奉するジョアキム・カランブー(Joachim Karembeu)なる人物の頭文字から取ったようだが、もちろん〈女子高生〉を意味する日本のネットスラングもほのめかしているのだろう。
*注意! 本文より先に解説を見る方も多いと思うが、本文およびこの解説には、これまでの二作品の真相に触れている箇所があるので、できれば第一作『JK』、第二作『JK Ⅱ』をお読みになってから、この先に進んでいただきたい。
警察は決定的な証拠をつかめず、不良グループは野放しのままだった。だがしばらくして
江崎瑛里華はK‐POPダンスの映像を次々とユーチューブにアップし、多くのファンをつかみ収入を得ていた。
死者となった紗奈と入れ替わるように登場した瑛里華が、紗奈一家を殺した不良グループと、死体遺棄に関わったヤクザたちを始末する『JK』。
麻薬取引に失敗したヤクザたちが制服警官を殺した末、多くの人質と供に渋谷109に立て
これまでの二作には、あっと驚くミステリー的な仕掛けがあった。『JK』のそれは紗奈の死と、瑛里華が誕生するまでの経緯である。瑛里華は大の男であろうとも、その人体を破壊する
ええっ! そうだったのかよ!
と、噓ではなく心底驚いたことをここに告白しておく。紗奈=瑛里華が体技と精神力を培ったのは、沖縄にある
『JK Ⅱ』では、犯罪現場の遺留物をめぐる問題が浮上する。『JK』では大雨の中での襲撃だったため、遺留物がすべて流れてしまっていた。だが渋谷109では人質の安全を考えながら、
その真相がわかった時、再び同じ言葉を叫んでしまった。その伏線もきちんと張られていたではないか!
紗奈の側には、もぐりの医師によって同じ顔に整形された
だが千鶴は紗奈にとって弱い鎖となってしまう。それが本書のストーリーを動かしていく。
紗奈は千鶴に遠藤恵令奈の身分と住まいを譲り、新たな身分となって大阪に移り住む。だが千鶴には紗奈のような肉体はもちろん強い精神力はなかった。孤独に
冨米野島から一度は救った千鶴が、自分と同じ顔をしていたことが原因で命を失ってしまう。紗奈は千鶴が生きていく手助けをしたつもりでも、実はアリバイ作りなどで
第二の魅力は紗奈にハンデを負わせたことである。これまでの紗奈はゲームの無敵モードのように、
「ゴミは」紗奈はつぶやいた。「土に還ってよ」
この言葉を放ち、紗奈は最後の闘いに挑む。
そして……。
「死人は逮捕できない」という言葉を残して紗奈は刑事の前から姿を消す。含みのあるラストシーンだ。このシリーズはこの三部作で終わりなのだろうか。もう彼女には会えないのだろうか。
いや、不可能を可能にする作家。それが
悲しみを秘めた殺戮少女、江崎瑛里華こと有坂紗奈。彼女の凄絶な人生が体感できるシリーズをお楽しみ下さい。
作品紹介・あらすじ
JK III
著 者:松岡圭祐
発売日:2023年12月22日
TBS「THE TIME,」で話題の、青春バイオレンス文学!
K-POPダンスの人気ユーチューバー、EEこと江崎瑛里華。その正体は、悲惨な出来事によって“幽霊”になったひとりの女子高生だった。一方、現実社会で“幽霊”の代わりを務める飯島千鶴は、タワマンの自室でひとり悶々としていた。2人とも訳あって素性は明かせない。しかし、出来心から千鶴は夜の街に繰りだし、悲劇の扉を開けてしまう。果たして彼女たちの運命は? 哀しいヒロインの復讐劇を描く壮絶シリーズ、慟哭の第三弾!
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