夜の虹の世界は、摩訶不思議『よるよ』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/27

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年11月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

「よる いるよ」「よるの にじに のるよ」「むむむむむむむ」……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、左から読んでも右から読んでも同じ響き、回文による絵本『よるよ』。いったいどんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

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夜の虹の世界は、摩訶不思議『よるよ』

よるよ

作:コジヤジコ 絵:中山信一

みどころ

「よる いるよ」

真っ暗な景色の中、こんな言葉から始まるこの絵本。
なにがいるかと言えば。

「よる いぬ いるよ」
「よる くま くるよ」
「よる ねこ ねるよ」

いぬとくまとねこ。それだけのことなのに、なんだかとっても不思議な雰囲気が漂います。そう、これは「回文絵本」。左から読んでも右から読んでも同じ読み方になる言葉、回文だけでできている絵本なのです。でも、回文だけで物語はダイナミックに展開していけるのでしょうか。

そんな心配をよそに、絵本の中では夜の海に星がひとつ落ち、海の中から輝く虹があらわれて、いぬとくまとねこによる、見たこともない大冒険がはじまっていくのです。

始まりは静かな夜。
やがて海の中からあらわれるのは、ひかり輝く虹。

「よるね はねるよ」
「のびのびの ぱしぱしぱしぱ」

夜の虹の世界は、摩訶不思議。はねたり、泳いだり、釣りをしたり、ふわふわしたり。やがて、虹の中に大きな穴を見つけて……?

回文家として人気のコジヤジコさんの文章に、何層にも重なり合わせたクレヨンの不思議な色彩が魅力的な絵を描かれているのは中山信一さん。漆黒の夜の海の世界に浮かびあがる極彩色の虹の光が、「回文」だけのまったり静かだった夜の世界を躍動させていきます。

声に出して読みながら、奇妙な世界に身をゆだね、想像をふくらませていく時間は思っているよりも心地よく、なんだかクセになりそう。くりかえす日本語の音の、ふしぎな響きを体感できる一冊です。

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編集長のおすすめポイントは……

呪文のようにも聞こえてきて

左から読んでも右から読んでも同じ響き。回文には制約がありながらも、声に出して読んでいるうちに、意味から自由に飛び立っていけるような感覚もあり。それは知らない国の言葉のようにも、呪文のようにも聞こえてきて。絵本の中の宇宙空間にもぴったりハマり、フワーっと不思議な世界に連れていかれるみたい。おそるべし回文の世界。お二人の組み合わせの絵本を、もっともっと体験してみたくなってしまいます。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。