“ヤクザは今 女子高生の中にいる”――事故がきっかけでご令嬢と中身が入れ替わってしまったヤクザたち。彼らのお嬢様デビューを見守る『アウトレイジョウ』
PR 公開日:2024/1/8
普段は清楚なご令嬢たちが、時として汚い言葉をはき、迫力のアクションをくり広げる。そこに大きなギャップがあるからこそ、その姿は魅力的にうつります。しかし一方でそこにはギャップを成立させる強い「理由」も必要です。その点、本作『アウトレイジョウ』(杠憲太:漫画、珪素:原作/白泉社)であればまったく問題ありません。なぜなら外見はみな上品なお嬢様ですが、中身は本物のヤクザだからです。本作はそんな「アウトレイジ」な「令嬢」たちの学園アクションコメディです。
その日、格式あるお嬢様学校、涼玲館高校の生徒たちを乗せた大型バスが土砂崩れに巻きこまれ街道から落下します。落下先にあった倉庫ではたまたまヤクザが抗争中。そこに居たヤクザの構成員31人が犠牲になるも、生徒たちは誰ひとり死ぬことはありませんでした。しかしヤクザだったはずの主人公、塩川鋭二(しおかわえいじ)が目を覚ますと、その身体は女子高生、桐野糸織(きりのしおり)になっていたのでした。
どうやら他にも同じように中身が入れ替わったしまった仲間がいる模様。そのうえ、抗争相手のヤクザたちも入れ替わっている様子。お嬢様学校という特殊な環境に会場をうつし、いっけん誰がヤクザなのかもわからない状態から、探りあいの抗争が続いていきます。
外見はお嬢様とはいえ中身はヤクザの男性です。もともと持っていた粗野な性格や言動をさらし、「どう見てもヤクザだろう」とすぐわかってしまう人もいます。授業にもテーブルマナーやヴァイオリンや華道まで、ハードルの高いものが含まれ、お嬢様を演じるのはなかなか骨の折れるものです。
ただ、全員がそんな不器用なヤクザというわけではありません。なかにはぶりぶりな女子高生の仮面をすぐに身につけたヤクザもおり、外見からヤクザか、お嬢様かを判別をするのはかなり困難を極めます。しかも抗争に勝つために真剣になればなるほど、お嬢様として周りにバレない技術も必要になってくる。そんな状況に腹をくくり、お嬢様道を磨くヤクザという構図は真面目にやればやるほど笑いを誘うことでしょう。
味方なのか、敵なのか、はたまたただのお嬢様なのか。周りから浮かないためにお嬢様としての日常を演じながら、そうやって中身の入れ替わっている人を探し、味方を増やし、敵ならば殲滅する。ただ暴力と暴力が真正面からぶつかりあうだけの抗争だったものが、見た目をお嬢様に変え、探りあいサバイバルという要素がからむことによって、サスペンスのような味わいを感じることもできる作品にもなっているのです。
もちろんひとたび敵と出会ってしまえば、お嬢様の皮をかぶったヤクザ同士の対決は迫力満点。ドスを振りまわし、「命、殺りますわよ(たま、とりますわよ)」などの日ごろのお嬢様修行の成果の垣間見えるタンカが飛びだすたびに喝采を送りたくなること間違いありません。
お嬢様のかわいらしさ、アクションのカッコよさ、仁義にあふれる真面目なヤクザのおもしろさ、探りあいサスペンスの緊張感。そんな様々な要素をいっぺんに楽しむことができる作品です。ぜひ、このお嬢様による迫力のタンカを体験してください!