板垣李光人が選んだ1冊は?「人間の本質的な部分を突くような人間らしさのある作品が好き」

あの人と本の話 and more

公開日:2024/1/14

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年2月号からの転載になります。

板垣李光人さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、板垣李光人さん。

(取材・文=斎藤春子 写真=TOWA)

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「三島由紀夫さんがTwitter(現X)をやったら、たぶんこんな感じなんじゃないかなと思うんです」

『不道徳教育講座』の魅力を尋ねると、板垣さんはこう答えた。

「本好きな共演者の方の影響で、三島由紀夫さんの作品を読んでみたくなって、いろいろと探して印象的なタイトルに惹かれました。三島作品は初めてでしたが、こんなユーモアのある方だと思わなくて。こんなに今どきの言葉で、軽く語りかけるような作品もあるのかと驚きました」

 嘘、裏切り、悪口、自殺……あらゆる不道徳な命題が並ぶ中、板垣さんを特に惹きつけた一編は?

「冒頭の方に出てくる『教師を内心バカにすべし』。教師は乗り越えるべき存在であって、内心はバカにして、知識だけ吸い尽くせって箇所は、もしも自分が大学とかの入学式でスピーチするなら、きっと引用すると思います(笑)。あと『罪は人になすりつけるべし』も好き。謝ればその場は丸く収まるけど、人間は自分がいちばん正しいと内心思ってるから、それは綺麗事。罪を人になすりつける方が人間らしい姿なんだって、まさにそうだなって。人間の本質的な部分を突く本だけど、ついつい笑ってしまうとこもいっぱいあって、その塩梅も天才的ですよね」

 本に限らず、人間らしさが描かれた作品が好きと語る板垣さん。出演作『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』も、ゴーレム(ゾンビ)ウイルスが蔓延する世界で最後まで戦う人達の人間らしさが光る作品だ。

 板垣さんが演じるのは、スラム街と化した地下街の悪党、天城ジン。

「ジンはすごく優しい子だと思います。彼がこのひどい世界で生きていく意味は、兄の存在がすべてで。ジンに限らないですが、この作品では誰かを強く想う、その姿の美しさや尊さを見て欲しいです」

 全人類を助けるか、最愛の1人を助けるか。そんな究極の選択を迫られる緊迫感に満ちた作品でもある。

「僕が選ぶなら、最愛の1人ですね。生きようとする意志も、大切な人がいなかったらたぶん持てなくなる。“きみセカ”の世界観は現実とかけ離れているけど、生きる目的、出会いや別れ、人が普通に生きていく中にあるものの輪郭を強調した作品だと思うんです。Season1から観てる人には、主人公・響(竹内涼真)の人生を一緒に歩むようなシリーズの深みを感じられると思うし、初めて観る人も、作品として絶対に楽しめる仕上がりになっています」

ヘアメイク:KATO スタイリング:伊藤省吾(sitor) 衣装協力:シャツ5万3900円(ウィリー チャバリア/ジェットン ショールーム)、パンツ3万7400円(ブルーナボイン/ブルーナボイン代官山店)

いたがき・りひと●2002年生まれ。13年から俳優活動を始め、主な出演作に『仮面ライダージオウ』『silent』『どうする家康』『フェルマーの料理』、映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』など。1月期ドラマ『マルス-ゼロの革命-』、『陰陽師0』に出演予定。

『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』

『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』

監督:菅原伸太郎 脚本:丑尾健太郎 出演:竹内涼真、高橋文哉、堀田真由、板垣李光人、須賀健太、黒羽麻璃央、吉田鋼太郎ほか 1月26日(金)全国東宝系にて公開●日本の地上波GP帯初の本格ゾンビアクションドラマとして話題を集めた大ヒットシリーズの集大成にして、初の劇場版。竹内涼真演じる主人公・響の長い旅はどのように終わりを迎えるのか。舞台は希望の塔ユートピア。しかしそこは、人間の欲望が生み出した絶望の塔だった。
(c)2024「君と世界が終わる日に」製作委員会