浜辺美波が選んだ1冊は?「衝撃的な事件の背景にある真実から目を背けないために手にした一冊です」

あの人と本の話 and more

公開日:2024/1/15

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年2月号からの転載になります。

浜辺美波さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、浜辺美波さん。

(取材・文=倉田モトキ 写真=干川 修)

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「センセーショナルな事件が起きると、ニュースの表層的な部分だけですべてを分かったように思い込み、その背景にある真実まで深く調べない人も少なくありません。それは私も同じで。だからこそ、自戒の意味を込め、読んでみようと思いました」

 2016年に起きた女子大生への強制わいせつ事件を題材にした小説『彼女は頭が悪いから』。ずっと気になって購入していたものの、読み終えたのは一昨年の暮れだったそう。

「重い内容ですので、すぐには手にできなくて。でも“絶対に読もう”と決めていました。創作ではありますが、あの衝撃的な事件をどのように描いているのかが気になったんです。また、被害者女性がSNSで誹謗中傷を受けるという痛ましい背景も克明に描かれていて、考えさせられることが多くありました」

 普段はファンタジーやミステリー作品を好んで読むことが多いという浜辺さん。しかし、「自分の知らないことに目を向けるのも必要」と話す。

「特に本作は日常と地続きのような内容だけに、しっかり向き合うことが大事だと思ったんです。それに知識や経験は役を多面的に捉えることにも繋がります。ですから、時々は心が痛くなるような作品の世界にも、頑張って飛び込むようにしています」

 次の出演作『サイレントラブ』で挑んだのも、初めて経験する世界だった。目が不自由になった音大生の美夏と、声を発しない蒼との出会いを描いた静かなラブストーリーだ。

「言葉って本音を隠すために使うこともありますよね。でも二人の間には会話がないからこそ、自分をごまかさず、互いを知ろうとする。台本を読み、その純粋さに惹かれました」

 ピアニストを目指す美夏を襲った突然の事故。大きな試練と向き合う彼女にとって、蒼は心の支えとなる。

「蒼は美夏のすべてを優しく受け止めてくれる存在なんです。ぼんやりとしか世界が見えない中、一番に安心感をもたらしてくれるのは、信頼できる誰かの温もりで。そのことを私はこの役を通して強く感じました」

 また、「二人はそれぞれに心の傷を抱え、それを無意識に癒やし合っているような関係性でもある」とも。

「セリフが少なく、互いの心情を分かりやすく描いた場面を極力抑えた作品なんです。でも、二人の距離が縮まったかと思えば、また離れたりと、目には見えない部分がはっきり伝わってくる。そうした、言葉以上に詰め込まれた二人の“想い”をぜひ感じていただければと思います」

ヘアメイク:George スタイリング:瀬川結美子 衣装協力:KOTONA、yoaa、NOMG、MANA/コンコルディア

はまべ・みなみ●8月29日生まれ、石川県出身。2017年公開の映画『君の膵臓をたべたい』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。23年には連続テレビ小説『らんまん』でヒロインを務めた。主な出演作に映画『ゴジラ−1.0』『シン・仮面ライダー』、ドラマ『ドクターホワイト』など。7月には主演映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』が公開。

映画『サイレントラブ』

映画『サイレントラブ』

原案・脚本・監督:内田英治 共同脚本:まなべゆきこ 音楽:久石 譲 出演:山田涼介、浜辺美波、野村周平、古田新太ほか 配給:ギャガ 1月26日(金)より全国ロードショー●交通事故の後遺症で視力が低下した音大生の美夏は、ピアニストになる夢が途絶えたことに絶望し、大学の屋上から飛び降りようとする。そんな彼女を救ったのは、偶然居合わせた校務員の蒼。蒼もまた過去の出来事から声を発しない日々を送っていた。二人は互いの“言葉を超えた想い”に惹かれ合っていく。
(c)2024「サイレントラブ」製作委員会