新婚でもバスタブの中で全裸で眠る!? 人を殺さない元・殺し屋が「レンタルおっちゃん」として活躍する『ザ・ファブル』第2部

マンガ

更新日:2024/2/23

ザ・ファブル The second contact
ザ・ファブル The second contact』(南勝久/講談社)

 殺し屋を引退した男の日常は、第2部に入っても、面白い。南勝久による『ザ・ファブル』(南勝久/講談社)。岡田准一主演で映画化されたことでも知られるこの大人気マンガは、セカンドシーズン『ザ・ファブル The second contact』(南勝久/講談社)に入っても、多くの人を虜にしてやまない。

『ザ・ファブル』の世界にまだ触れたことがないという人のために、第1部からのあらすじをご紹介しよう。主人公は、どんな相手も6秒以内に仕留める、伝説の殺し屋「ファブル」。ボスの命令で殺し屋稼業を休業することになった彼は、佐藤アキラという偽名で相棒のヨウコとともに、兄妹という設定で、ヤクザ・真黒組の庇護のもと、大阪で暮らし始める。だが、一般人としての暮らしをしたことがないアキラは、どこか常人離れしている。家では全裸で、毎日バスタブで就寝。チンピラに絡まれれば殴りすぎてしまうし、かといって、弱いフリをしても、加減が分からずあまりにも情けない姿を演じ、その割には異様に足が速い。サバイバル経験のせいか、サンマは頭から食べるし、毒見のために舌の感覚が鋭敏になりすぎてかなりの猫舌だし……。やがてデザイン事務所・オクトパスで「時給800円」で働き始めたアキラだが、彼の周りでは不穏な出来事ばかりが巻き起こる。

 第2部では、ボスから任を解かれ、殺し屋を引退したアキラは、オクトパスでの仕事を辞め、人助けの旅に出かけていたが、コロナ禍をキッカケに帰郷。元同僚・ミサキと結婚し、新婚生活をスタートさせる。アキラが私たちと同じようにコロナ禍という時間を経験したのかと思うと何だか感慨深いが、“普通”を目指そうとする元殺し屋はやっぱりチグハグで、おかしい。新婚なのに、未だに全裸で、バスタブで寝ているのには吹き出してしまうし、さらに、アキラの始めた新しい仕事が「レンタルおっちゃん」というのにも笑わされる。第2部でもアキラの日常はシュール。それでもアキラ自身は充実した毎日を過ごしていた。

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 だが、次第にきな臭い匂いが漂ってくる。長年拮抗していた真黒組と紅白組の勢力争いが勃発。真黒組のクロが、紅白組の若い衆に絡まれたのを偶然ヨウコが助けたことに端を発し、アキラも「レンタルおっちゃん」の依頼者を紅白組のゴタゴタから、これまた偶然救ってしまう。真黒組は、一般人に戻ったアキラに、あくまで無関係を貫けというが、紅白組は、実態が不明の殺し屋組織「ルーマー」を雇い、攻勢を強めようとする。かつての仲間たちが窮地に追い込まれる中、アキラが、彼らのことを放っておけるはずはない。元殺し屋・アキラは、“人を殺せない”というハンデを負いながら、ルーマーや紅白組とどう戦うのだろうか。

 敵が現れれば本領発揮。普段の姿は間抜けにさえ見えるのに、戦闘シーンのアキラはあまりにもカッコいい。ギャップ萌えとはまさにこのこと。とてつもなく変人なのに、とてつもなく強い。そんなアキラの姿にグッときてしまう。さらに、第2部では、妹・ヨウコの全力の恋も描かれているから見逃せない。ゲラゲラ笑わされるのに、ときにハラハラさせられたり、キュンとさせられたり、ジーンときたり。『ザ・ファブル』はこれでもかというほど、私たちの感情を揺さぶってくるのだ。

 あなたも、ひとたびページをめくれば、アキラとその仲間たちの日々に、心を打ち抜かれることは間違いない。このコミカルさとシリアスさのバランスは、絶妙。第1部も素晴らしかったが、『ザ・ファブル』は第2部も最高だ。

文=アサトーミナミ