電通問題から旧ジャニーズ事務所への忖度まで…元テレ東の名物プロデューサーが語る『混沌時代の新・テレビ論』が「暴露して大丈夫?」「驚きが隠せない」と話題
公開日:2024/1/17
1953年、NHKの本放送を皮切りにテレビは以後70年以上にわたって生活に欠かせないメディアとして君臨している。ところが近年はインターネットやSNS、YouTubeを始めとした動画サイトの台頭も相まって、若者の“テレビ離れ”が加速中。そんなテレビの権威が失墜しつつある今だからこそ、2024年1月11日(木)に発売された『混沌時代の新・テレビ論』を手に取ってもらいたい。
同書を手掛けたのは、元テレビ東京の名物プロデューサーにして現在は桜美林大学の教授を務める田淵俊彦氏。『日経スペシャル ガイアの夜明け』の立ち上げを担当したり、2011年に放送された尾崎豊の生涯を描いたドラマ『風の少年~尾崎豊 永遠の伝説~』を手掛けたりと、2023年3月に退職するまでの約37年間を番組制作に費やしてきた人物だ。
そうした経歴を持つ田淵氏が現場を離れた今だからこそ話せるテレビ局の実態を記したのが、『混沌時代の新・テレビ論』。近年巻き起こっているというテレビ局の人材流出に始まり、テレビがこの先メディアとして生き残れるかという命題などを、全7章にわたって熱弁している。
なかでも興味深いのが、第3章で語られるテレビ局による大手芸能プロダクションへの忖度問題だ。田淵氏はかつて放送されていた『ヤンヤン歌うスタジオ』や『あぶない少年』を始めとするアイドル番組のアシスタントディレクターを務めており、さらに縁あって旧ジャニーズ担当にも抜擢され、2016年に解散した「SMAP」の誕生にも立ち会っていたという。
つまり、テレビ東京と旧ジャニーズ事務所の関係性を深く知る人物だと言える田淵氏。彼がテレビ業界へ足を踏み入れた1980年代から1990年代といえば、旧ジャニーズ事務所の全盛期だった。田原俊彦、野村義男、近藤真彦からなる「たのきんトリオ」を始めとして、ほかにも「シブがき隊」や「少年隊」、「光GENJI」が国民的人気を集めるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったという。
そんな時代を指して、田淵氏は同書にて「少しでも歯向かうような素振りを見せようものなら、容赦ない制裁が加えられる。不利益を被るのだ」と断言。さらに実例として、1999年に巻き起こった“あるスクープ”にまつわるテレビ東京と旧ジャニーズ事務所との一幕を告発している。
ほかにもテレビ局と大手広告会社・電通の関わりや総務省からの圧力と癒着など、表舞台では決して語られないであろう実態が田淵氏の視点からズラリと記された『混沌時代の新・テレビ論』。巻末には田淵氏とテレビ東京制作局長の伊藤隆行氏、『YOUは何しに日本へ?』を手掛ける村上徹夫氏による特別鼎談(ていだん)が収録されるなど、気になる内容が盛りだくさんだ。
同書の発売に際し、ネット上では「真偽は別にして、ここまで暴露して大丈夫なのかと心配になるようなトピックが満載だった…」「表紙にある『ここまで明かすか!』に恥じない歪んだ業界の実態に驚きが隠せない」といった声が集まっている。
センシティブなトピックが並ぶ同書だが、あくまで田淵氏は問題提起をしているにすぎない。「はじめに」の項で「最終的にはテレビの未来を見据えた応援歌とし、閉塞感のあるこの社会全体へのエールとしたい」と語っているように、決して暴露が目的ではないのだろう。その点を留意した上で、気になる人はぜひ同書を手にとってみてはいかがだろうか。