又吉直樹、谷川俊太郎、俵万智の中で“わざと”遠足でお弁当を忘れたのは?様々な「言葉のプロ」から日本語について学べる言葉の本が誕生

暮らし

公開日:2024/1/23

言語表現の名手20人から学ぶ ことばの魔法
『言語表現の名手20人から学ぶ ことばの魔法』(田丸雅智/KADOKAWA)

 普段、当たり前のように私たちが使っている日本語。当たり前だからこそ、なかなか日本語について深く考える機会は少ないですが、ふとしたときに、「この言葉ってどういう意味なんだろう」「あの人の言い回しって魅力的だよね」といったふうに、日本語や言葉について考える瞬間ってありますよね。

『言語表現の名手20人から学ぶ ことばの魔法』(田丸雅智/KADOKAWA)は、FM愛媛で人気の日本語探求番組「コトバノまほう」の放送内容を一冊に凝縮した書籍。ショートショート作家の田丸雅智さんと、詩人・声優・漫画家・翻訳家・コピーライター・ラッパーなど、各業界で活躍するゲスト20名らが「言葉」について真剣に語り合う様子から、表現力や国語力に直結する気づきや学びが得られます。

FM愛媛で人気の日本語探求番組「コトバノまほう」の放送内容を一冊に凝縮した書籍

「作文でみんなを笑わせるために、遠足では“わざと”お弁当を忘れていった」

 これは、お笑い芸人であり作家である又吉直樹さんの小学生のときのエピソード。当時から「作文でみんなを笑わせたい」という気持ちが人一倍強かった又吉さんは、遠足の目的がクラスメイトとは違っていた。クラスメイトのみんなは遠足を楽しむことが目的であるなか、又吉さんは「遠足の後の作文を書くまでがゴール」として、友達のお弁当のふたを借りてみんなに少しずつおかずを分けてもらう、ということまで想定して、わざとお弁当を忘れていったことがあったそう。

advertisement

 ひとえに、人を笑わせたいという感覚があったからで、それが今のお笑い芸人や作家というお仕事につながっているのかもしれないというお話は、なんとも又吉さんらしく、面白いですね。確かに子どもの頃を思い出すと、周りとは違って一つ飛び抜けた、異質で、でも人を惹きつけるようなカリスマ性のある子っていたなと思いつつ、でもその感覚が大人になった今でもずっと続いている又吉さんはやっぱり稀有な存在なんだとも感じました。

「実は活字はあまり好きじゃない、本を読むのもどちらかというと好きじゃない」

 これは誰の一言かわかりますか? 実は詩人の谷川俊太郎さんの一言なのです。まさかと思わず疑ってしまうのですが、実は谷川さんはご友人から「本をあまり読まないよな」とからかわれることもあるくらいで、夏目漱石の作品を読んだのも中年を過ぎてからだそう。なんとも意外ですよね。でも、これには原因があって、谷川さんの父親は哲学者で子どもの頃から家じゅう本だらけ、それが少し重荷になっていたんだとか。そしてそこから、「詩は読むのも書くのも短いからいいな」と思ったというエピソードが微笑ましく、国語の教科書にも載っている谷川さんでもそんな風に思うことがあるんだというのが衝撃でした。

 今回はお二人の一部のエピソードを紹介しただけですが、こんな風に他では聞いたこともないような目から鱗なお話が随所に詰まっている本書。読むことで表現力を養ったり、国語の学習にもつながったりするお話も多く、中高生や教育関係の方にもおすすめできる一冊です

他では聞いたこともないような目から鱗なお話が随所に詰まっている
中高生や教育関係の方にもおすすめできる一冊

文=ねこの額書店

【著者プロフィール】
田丸雅智(たまるまさとも)
1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務める。また、全国各地で創作講座を開催するなど幅広く活動している。