許嫁の巫女三姉妹とドキドキ同居ラブコメ『甘神さんちの縁結び』がTVアニメ化決定。神社を舞台に繰り広げられる“夢と恋”の物語

マンガ

公開日:2024/2/9

甘神さんちの縁結び
甘神さんちの縁結び』(内藤マーシー/講談社)

 神社の三姉妹と、一つ屋根の下で同居することになった少年との恋物語『甘神さんちの縁結び』(内藤マーシー/講談社)がついにTVアニメ化される。コミックスの累計部数は115万部を突破しているヒット作(※)で、すでに多くのラブコメ漫画好きにチェックされているだろう。本稿では、アニメ化を聞いて本作を始めて知った人や、まだ読んでいない人に、予習がてらに物語の魅力を紹介していく。

 主人公は高校生の上終瓜生(かみはて うりゅう)。彼は親が亡くなって児童養護施設で育った。施設を出る年齢になっていた瓜生は、京都にある「甘神神社」の宮司に引き取られることに。神社では、宮司とその孫である大学生の夜重(やえ)、高校生の夕奈(ゆな)、中学生の朝姫(あさひ)という三姉妹が待っていた。そこで瓜生は知る「姉妹のうちの誰かと結婚し、婿養子として神社を継ぐ」というのが里親の条件だったことに……。

 タイプの違う複数ヒロイン、降ってわいた許嫁という立場、他人と一つ屋根の下の同居と、ラブコメの“絶対正義”要素がてんこ盛りの作品である。

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神社で同居することになった三姉妹といきなり許嫁に

 最初、瓜生はとまどっていた。彼の“夢”は京都大学医学部に入り医者になることで、しかも宮司になることはもちろん、神様に否定的だったからだ。「祈りなんかで人は救えない」「願いを叶えるのは神ではなく自分自身」と言う彼は、彼女たち(特に次女の夕奈)と反発し合う。実は瓜生は、子どもの頃に母親の病気が治るようにと毎日神様に祈り続けた。しかしその願いは叶わず彼女は亡くなったのだ。

 ただ宮司である姉妹の祖父に「京大進学率の高い高校へ編入させる」「宮司は医師になってもできる」と言われ、瓜生はとりあえず居候することを決める。婿養子の件は保留にし、彼女たちと深く関わる気はなかった彼だが、家事をこなし、神社を手伝い、三姉妹とお見合いという名のデートもする。そんななかで、三姉妹それぞれの性格や悩みや“夢”を知り「自己中心的で自己満足だと思われてもいい」「心の底だろうが土足で上がり込んでいく」と、さまざまなお節介をやくようになる。瓜生は性格的に困っている人間を放っておけないのだ。こうして彼女たちとの距離が近づいていく。そして三姉妹もまた、瓜生と過ごすうちに、彼が気になる存在になっていくのだ。

 ここまで読んで、まさに王道のラブコメだと感じるかもしれない。「他人同士が同居するうちにドキドキするようになる」というストレートな構造のようにもみえるからだ。だが物語は序盤を過ぎて大きく展開していく。三姉妹それぞれの思いや“夢”や秘密などが徐々に明らかになる。さらに予知夢、タイムリープ、魂の入れ替わりといった超常現象も発生し、甘神神社はカオスな状況に……。

 シンプルなようでシンプルではない、けしてあなどれないラブコメなのだ。

瓜生でなくても選べない?可愛いすぎる甘神三姉妹

 とは書いたものの、やはり本作の最大の魅力はシンプルである。それは三姉妹の可愛いさだ。タプの違う彼女たちのキャラクターをざっと紹介しておこう。

甘神夜重
ふわふわでおっとり可愛い20歳の芸大生。弱点は片付けられないこと。思い立ったらすぐにどこかへ行ってしまうので目が離せない。自由奔放かつ迷子というのが彼女のキーワード。

甘神夕奈
ツンデレ可愛い、瓜生と同い年の17歳。彼に「ガリ勉むっつりドスケベ自己中ナルシスト」と言い放ち反目し合う。自分に厳しく、やりたいことや“夢”すら我慢する頑固な性格。三人の中で最も「甘神神社」への思い入れが強い。

甘神朝姫
14歳の中学生で、あざと可愛い小悪魔的なスポーツ少女。最初から瓜生との距離が近く、彼をいじってくる。背伸びをしがちなザ・妹なキャラだが、自身の“夢”と大好きな姉たちの間で密かに悩んでいる

 この可愛い三姉妹と、瓜生との関係がどう変わっていくのかが見どころだ。ただ、もし彼女たちと彼との関係が進展するのであれば、瓜生の成長は欠かせない。彼の成長とは、自身の“夢”と、許嫁である前に家族となった三姉妹に向き合えるようになることである。それは、瓜生が養護施設で繋がりのない繋がりを大切にしてきたのと同じことだ。前述のように彼女たちの悩みや“夢”や秘密を解決していく過程で、彼らに生まれる感情と“縁”とは一体何なのか?

 ふわふわな長女、ツンデレ次女、小悪魔な末っ子の中から誰を“推し”にするのか迷うのも楽しいし、物語の展開にも目が離せない本作。ラブコメ漫画が好きな人、本稿を読んでアニメに興味をもって予習したい人は、ぜひ原作コミックを読んでみてほしい。

文=古林恭