クールなイケメン高校生×コインランドリーの管理人。男性同士の恋愛を描いた、ピュアな思いが溢れる、ちょっと切ないラブストーリー
公開日:2024/2/19
相手への思いが強ければ強いほど、空回ったり気持ちを伝えられなかったり、なかなかうまくいかない恋愛。ましてや同性を好きになってしまったら、いったいどうしたらいいのか――。近年は同性愛者に対する見方も変わってきているが、それでも自分が当事者になってしまったら、多分世間のあれこれなんて関係ない。相手に受け入れてもらえなければ意味がない。
『みなと商事コインランドリー』(缶爪さわ:漫画、椿ゆず:原作/KADOKAWA)は、イケメン高校生とコインランドリーを運営する管理人の、男同士の恋愛を描いた物語。pixivランキング1位を獲得した本作は、2024年1月26日には待望の5巻も発売された。また、2022年には「恋に臆病なアラサー男子×ピュア過ぎるイケメン高校生のゆるキュンBL」として連続ドラマ化もされ話題となった。
本作品の主人公は、大家族の中で育ったクールなイケメン高校生・香月慎太郎(かつき しんたろう)、そして祖父からエアコンもない古びたコインランドリー「みなと商事コインランドリー」を継いだアラサーの元社畜・湊晃(みなと あきら)。晃は上京して東京の会社で働いていたが、過労で倒れたことがきっかけで、地元に戻ってのんびり地域の人々に愛される店を営んでいる。
そんな中、晃が営むコインランドリーに、一人の男子高校生が客として来店する。それが慎太郎だった。
2人はそこから顔を合わせるたびに話をするようになり、歳の差を越えて仲良くなっていく。しかし何気ない会話から、慎太郎に晃がゲイであることがバレてしまった。慎太郎は動揺した様子でその場を去り、それから2週間顔を見せずにいたが。ある日再び顔を見せたと思ったら――真剣な面持ちで晃の手首をガシッと掴み、「俺 性欲あります」と一言。
突然の出来事に困惑する晃だったが、慎太郎はおかまいなし。「今すぐどうこうしようなんて考えてません」「お友達から始めてもらえませんか?」と、そのまま晃に告白したのだった。ここからの慎太郎は、真面目な顔でドストレートに、ことあるごとに晃への思いを猛アピール。
だが慎太郎は高校生で未成年。成人している晃が手を出すわけにはいかない。それなのに、顔が好みなうえ妙に大人っぽくて、いちいちドキドキしてしまう。
これが男女であれば、もう少し線引きもしやすいのだろう。しかし同性で「友達から」と言われているこの状況では、どこまで許容すべきなのかも、自身に生じる思いの正体も曖昧になる。
男同士で妊娠の可能性もない中、どちらかと言えば好きな相手からの溢れんばかりの思いを押しとどめるのは、ある意味自分との戦いでもあったのではなかろうか。また、将来ある若者の未来を自分が潰してしまうのでは、という思いやりも垣間見える。だが当然、慎太郎の思いは真剣そのもの。読み進めるうちに、気づけば2人ともを応援してしまっている自分がいた。
慎太郎の猛アピールの甲斐あって、晃の気持ちにも少しずつ変化が現れる。だが晃には、高校生の時から忘れられずにいる男性がいた。
晃はある事情から、その男性をずっと避けていたが――。また、慎太郎のクラスメイト・英明日香(はなぶさ あすか)も何やら恋に悩んでいる様子。物語の舞台となっているのが晃の「地元」なだけに、さまざまな人物の思いが交差し、人と人との関係が繋がっていくのも本作品の見どころの一つ。
この先、晃は過去を乗り越えられるのか、慎太郎の思いが受け入れられる日は来るのか、2人や周囲の関係は――。真剣で優しくて少し切ない、恋の葛藤と攻防戦を最後まで見届けたい。
文=月乃雫