パンの消費量No.1の京都でパン食べまくり旅! テーマを決めて非日常を味わう、ビギナーにおすすめの旅行コミックエッセイ
公開日:2024/2/16
旅に出てみたいけれど、行先やプランなど決めることが多いと、行く前から面倒くさくなってしまう。誰かとずっといっしょなのは息が詰まるからひとり旅がいいが、ひとりで楽しめるのか少し不安……。そんな旅ビギナーさんにおすすめしたいコミックエッセイが『ゆるり より道ひとり旅』(おづまりこ/文藝春秋)だ。
京都でパンの買い歩きをしたり、大阪で純喫茶を訪ねたり、神戸で心ときめくアンティーク探しをしたり……。著者・おづさんのひとり旅は決して大冒険ではない。しかし、好きなものを食べ、普段とは違うことをして、旅先の非日常を楽しんでいる様子が伝わってきて、思わずふらりと出かけたくなってしまう。
パン好きの憧れ! 京都でパンの買い歩き
「思いっきりパン屋さんでパンを買いまくる」パン好きなら、これがどれだけ胸躍ることかわかるだろう。パンの消費量No.1といわれる京都には、たくさんの有名パン屋さんが軒を連ねる。レディオベーグル、アンドブレッド、フリップアップ、Année(アネ)、ファイブラン、志津屋ベーカリー……。お店ごとの“マストバイ”を選ぶのも楽しそうだ。
パン屋さんでパンを買う行為は日常的かもしれない。しかし、「京都でパンの買い歩きをするぞ!」と自分でテーマを決めて旅をすれば、もはやそれは非日常だ。買って帰ったパンを冷凍して少しずつ食べれば、旅の余韻も楽しめる。
大阪で食い倒れ! うどんと純喫茶をハシゴ
大阪といえば食い倒れ。おづさんは、大阪の下町の路地で「かすうどん」(牛のホルモンをじっくりと揚げた油かすを入れたうどん)」を食べ、1951年創業の純喫茶でクリームソーダを飲み、大衆酒場でたこ焼きとハムカツをつまみに冷やしあめサワーを味わう。
おあげがどーんと横たわる、透き通ったダシのきつねうどん。カリカリ食感のホルモン。「お~きに~」「ありがとお~」「また来てや~」とリズミカルな店主の声も大阪らしい。旅先で飲食店に入り、地元の人たちに交じって食べたり飲んだりしていると、本来は自分がいるはずのないその土地の日常に紛れ込んだような、ちょっと不思議な感覚を覚える。
神戸でときめくアクセサリー探し
旅先でノルマのようにプランをこなす必要はない。なぜなら、旅先ですべてが予定通りに進むことなんてないからだ。目当てのお店が臨時休業でがっかりすることもあれば、代わりにふらっと入ったお店で思いもかけない素敵なものに出合えることもあるだろう。
レトロな一点もののアクセサリーやバッグが好きというおづさんは、神戸でアンティーク探しの旅をする。「ときめいたら買う! ときめかなかったら買わない!」と決めてアンティークショップめぐりをし、運命を感じるカバンやブローチ、指輪に出合う。迷ったり、さっき行ったお店に戻ったりしても、ひとり旅なら誰にも気兼ねしなくていい。
旅先で買った(消え物以外の)自分のためのアクセサリーや雑貨には、お店の様子や店主さんとの会話までがくっついてくる。目にするたびに「あのときの旅」が蘇るので、高いものでなくてもいいから、自分が本当に気に入ったものを買って帰ることをおすすめしたい。
『ゆるり より道ひとり旅』はほのぼのとした絵柄で親しみやすく、食べ物の描写がうまいので、読んでいるとお腹が空いてきてしまう。飛行機に乗って遠くへ行くのもいいけれど、日常をそっと抜け出すゆるりとした旅もいい。自分の好きなものを見つけに行く旅は、きっと人生の経験値を上げてくれる。
文=ayan