自分を否定しないのは難しい…。でも大切なのは、今の自分を「それで良い」と肯定すること/自分を否定しない習慣
公開日:2024/2/3
人間関係が苦しい、周りの人と比べて落ち込んでしまう、自分で自分を認められない――。それらが原因で生きづらさを感じている方はいませんか?
嫌なイライラ、怒り、つらさがスッと消える“4つの習慣”を、これまでに4000人以上看取ってきたホスピス医・小澤竹俊先生が考案。著者累計50万部を超える名医が、一度きりの人生を自分らしく、好きに生きる方法を教えます。
私たちは誰もが、いつか必ずこの世を去ります。そのとき、自分自身に対して「お疲れ様でした」と思えるように、本当の自分らしさを見つけ、後悔のないよう前を向いて、今日という一日を生きていきましょう。
※本作品は書籍『自分を否定しない習慣』(小澤竹俊/アスコム)から一部抜粋・編集しました
自分を否定しないというのは、難しいけれど
自分を否定する気持ちは、見過ごしてはいけない悲しい感情
はじめに、みなさんにお尋ねします。
あなたは、次のような思いを抱くことがありますか?
「自分は劣っている人間、つまらない人間だ」
「自分は誰の役にも立っておらず、価値がない」
「自分には生きている意味がない」
「早く自分の存在を消してしまいたい」
これらはみな、自分を否定する感情です。
そして今、世の中には、自分を否定してしまっている人がたくさんいます。
私がホスピス医になり、人生の最終段階を迎えた患者さんと関わるようになって30年近くになります。
その間、4000人以上の患者さんを看取ってきましたが、多くの方は最初のうち、「自分はもう社会の役に立たない」「生きていても何の価値もない」「つまらない人生だった」「早く死なせてほしい」といった言葉を口にされます。
体の自由がきかず、元気だったころのように働くことができないどころか、一人で用を足すことさえままならなくなったこと、残された時間が短く、未来を思い描くことができなくなったことに絶望し、自分自身や自分の人生を否定する気持ちに襲われてしまうのです。
しかし、自分を否定する気持ちを抱えているのは、いのちが限られた方だけではありません。
私は20年以上前から、各地の学校で「いのちの授業」を行い、ホスピスの現場で学んだこと、感じたことを子どもたちに伝えていますが、そこで出会った子どもたちからも、自分自身を否定する言葉や、「死んでしまいたい」といった言葉を聞くことがあります。
自分を肯定できず、生きていていいと思う気持ちを持てない。
小学生の中にも、そんな子どもがいることに、私は愕然としました。
おそらく、現役世代のみなさんの中にも、今、生きづらさを感じている人や、自分に価値がないと思い、苦しんでいる人、自分の仕事や生き方に意味を見出せず悩んでいる人がいらっしゃるのではないでしょうか。
私たちの周りには、自分を否定するきっかけがたくさんある
私が、この本を通してみなさんにお伝えしたいのは、自分を否定する気持ちを手放し、今の自分を「Good Enough」(それで良い)と肯定し、受け入れることの大切さです。
自分を否定しないこと、今の自分を「それで良い」と肯定すること。
それは、「自分は存在していていい」「自分は生きていていい」と、心から思えるようになることであり、お金では買うことのできない心の穏やかさ、本当の意味での幸せを手に入れることでもあります。
ただ、自分のことを否定しないのは、とても難しいことです。
詳しくは次の項でお話ししますが、自分自身を否定する原因となるものが、私たちの周りにはあまりにもたくさんあるからです。
自分を否定していることに気づくのは難しい
自分のことを否定しないのが難しいのは、「自分を否定していること」に気づくのが難しいためでもあります。
実は、自分を否定していることに気づいていない人はたくさんいます。
たとえば、「自分の存在を消してしまいたい」というのは究極の自己否定です。
しかし、「死んでしまいたい」という気持ちを抱いている人が「今、自分は自分を否定している」と認識できるケースは、そう多くはないでしょう。
特に、子どものころから「ダメな子」といったネガティブな評価にさらされること、周りの大人たちから叱られること、無視されることが多かった人などは、当たり前のように「自分はダメな人間だ」「自分は価値のない人間だ」と考え、さらには「自分のようなダメな人間は、いないほうが社会のためだ」「自分のように価値の人間は、いなくなっても誰も困らない」などと考えてしまいがちです。
あまりにも自然に自分を否定し、自分の尊厳を傷つけてしまっているのです。
また、すでに一生懸命頑張っているのに、「まだ努力が足りない」と自分を追い込んだり、本来、自分のせいではないことにまで「自分のせいだ」と責任を感じたり、心を痛めたりする人もいます。
こうした人は、自分からも他者からも「真面目」「責任感が強い」「優しい」と評価されますが、一方で、いたずらに自分を否定してしまっていることに、なかなか気づくことができません。
<第2回に続く>