「希望の自分」と「今の自分」の開きが自分への否定へつながる。開きを埋める4つの習慣とは/自分を否定しない習慣

暮らし

公開日:2024/2/5

 人間関係が苦しい、周りの人と比べて落ち込んでしまう、自分で自分を認められない――。それらが原因で生きづらさを感じている方はいませんか?

 嫌なイライラ、怒り、つらさがスッと消える“4つの習慣”を、これまでに4000人以上看取ってきたホスピス医・小澤竹俊先生が考案。著者累計50万部を超える名医が、一度きりの人生を自分らしく、好きに生きる方法を教えます。

 私たちは誰もが、いつか必ずこの世を去ります。そのとき、自分自身に対して「お疲れ様でした」と思えるように、本当の自分らしさを見つけ、後悔のないよう前を向いて、今日という一日を生きていきましょう。

※本作品は書籍『自分を否定しない習慣』(小澤竹俊/アスコム)から一部抜粋・編集しました

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自分を否定しない習慣
『自分を否定しない習慣』(小澤竹俊/アスコム)

自分を否定する気持ちはどこからやってくるのか

他者との比較やネガティブな評価が、自分を否定する気持ちを生む

 私は、この世に生まれたからには、すべての人に「幸せになる権利」があると考えています。

 そして、一人でも多くの人が幸せに生き、人生最後のときを迎えられるように、できる限りの力を尽くしたいと思っています。

 しかし、世の中には、自分自身を否定し、自ら幸せを遠ざけてしまっている人が少なくありません。

 では、自分を否定する気持ちは、いったいなぜ、どうやって生まれてしまうのでしょうか。

 いろいろなケースがあると思いますが、まず、「他者(もしくは過去の自分)との比較」が大きいのではないかと思います。

 私たちは幼いころから、家では兄弟と、学校では同級生と、社会に出れば同僚やライバルと、常に能力や人格、地位、財産などを比較され続けています。

 何らかの能力に秀で、試験や仕事に成功したり、欲しいものを手に入れたりすれば、一時的に満足感や優越感、自己肯定感が得られるかもしれません。

 しかし、自分より能力の高い人との勝負に負けたり、試験や仕事で失敗したり、何らかの理由で能力を発揮できない状況に陥ったり、地位や財産などを失ったりすれば、自己肯定感が損なわれ、「自分はダメな人間だ」「自分は価値のない人間だ」と、自分自身を否定することになります。

 現役時代、健康でバリバリ働いていた人などは、年齢を重ね、体力が衰えたり、心身の病気で思うように働けなくなったりしたとき、過去の自分と比べ、今の自分を否定することもあるかもしれません。

 また、他者から受けるネガティブな評価も、自分を否定する原因となります。

 最近では、ネットやSNSなどの発達により、私たちは家族や友人、上司や同僚といった身近な他者だけでなく、見知らぬ他者からも、容赦なく評価されるようになりました。

 中でも非常につらいのは、「消えてほしい」「あなたには価値がない」といった、存在そのものを否定されるような他者からの言葉です。

 こうした言葉をそのまま受け取ってしまうと、自分に自信が持てなくなり、何事にも真剣に取り組むことができなくなり、「自分なんて幸せになれるはずがない」と、自ら幸せを遠ざけるような行動をとったり、場合によっては自らいのちをたってしまったりすることもあります。

人は、他者に迷惑をかけずに生きられない

「他人に迷惑をかけてはいけない」「社会や他人の役に立たなければならない」という考え方に縛られることも、自分自身を否定する原因となります。

 他人に迷惑をかけないこと。

 社会や他人の役に立つこと。

 日本社会では、それは美徳とされていますし、わざと他者に迷惑をかけるようなことをしないというのは、もちろん大事なことです。

 しかし、そもそも人間が、他者にまったく迷惑をかけずに生きていくことはできませんし、誰もが、常に社会や他者の役に立てるわけでもありません。

 一人でできることには限界がありますし、心身の調子を崩したり、年齢を重ねたりすれば、できることはさらに限られていきます。

 だからこそ人間は、太古の昔から、家族や共同体をつくり、支え合い、助け合い、迷惑をかけ合って生きてきたのです。

 ところが、「他人に迷惑をかけてはいけない」「社会や他人の役に立たなければならない」と思い込んでいると、何らかの理由で他者に迷惑をかけざるをえなくなったとき、社会や他者の役に立つようなことが思い通りにできなくなったとき、そんな自分を許せなくなります。

 そして「自分は役に立たない人間だ」「自分は価値のない人間だ」と、自分を否定する気持ちが生まれてしまうのです。

自分のせいだと思い込むのは、自分を納得させるため

 ほかに、家族の問題や友人の問題、会社の問題、社会の問題など、実際には自分と直接関係のないことまで「自分の至らなさに原因があるのではないか」と考える人、それらを解決できない自分にふがいなさを感じる人もいます。

 なぜそうしたことが起こるのでしょうか。

 もちろん、真面目で責任感が強すぎるために、必要以上に責任を感じてしまうということもあるかもしれませんが、ほかに、「理不尽な目に遭ったとき、自分のせいだと思い込むことで感情を安定させようとする」人間の心理も、大きく関わっています。

「良い行いには良いことが、悪い行いには悪いことが返ってくる」という思い込みを抱えている人は少なくありませんが、現実は決してそうではありません。

 特別に「悪い行い」をしていない人でも、生きていればどうしても、自分の力ではどうにもならず、誰に怒りをぶつけることもできない苦しみに見舞われることがあります。

 ところが、人は、そうした世界の理不尽さを容易に受け入れることができません。

「自分の力ではどうにもならないことがある」「自分の力で変えられないこともある」という現実を受け入れることは、ときに絶望につながるからです。

 そこで、「あのとき、自分があんな行いをしたから、こんなことが起こっているのだ」(あんな行いをしなければ、こんなことは起こらなかったはずだ)と、自分に関連した物語に落とし込むことで、自分を納得させようとします。

 自分のせいではないことまで自分のせいだと思い込むこと。

 それは、苦しみや絶望の中に、何とか希望を持とうとする、人間の心の働きです。

 しかし悲しいことに、まるで自己免疫疾患のように、自分を守るためのそうした心の働きが、自分自身や自分の人生を否定することにつながってしまいます。

自分を否定する気持ちは、希望と現実の開きから生まれる

 自分を否定する気持ちが生まれる理由について、いくつかの例を挙げてきましたが、これらには共通点があります。

 他者との比較によって自分を否定するのは、「恵まれている他者(もしくは過去の自分)」という「希望」と、「今の自分」という「現実」に開きがあり、苦しみを抱えているからです。

 他人に迷惑をかけてしまう自分、社会や他人の役に立たない自分を否定するのは、「他人に迷惑をかけない自分」「社会や他人の役に立つ自分」という「希望」と、「今の自分」という「現実」に開きがあり、苦しみを抱えているからです。

 自分を納得させるために、自分のせいではないことまで自分のせいだと思い込み、自分を否定するのは、「理不尽なことが起こらない社会」という「希望」と、「理不尽なことが起こる社会」という「現実」に開きがあり、苦しみを抱えているからです。

 つまり、自分を否定する気持ちは、希望と現実の開きによる苦しみがあるから、生まれているのです。

 ですから、開きを埋め、苦しみを解決することができれば、自分を否定する気持ちを手放せるはずなのですが、苦しみには自分で解決できるものと、解決できないものがあります。

 たとえば、「今は成績が悪いけれど、優秀な自分でありたい」という希望があった場合、一生懸命勉強をすることで、ある程度希望と現実との開きを埋め、苦しみを解決し、自分を否定する気持ちを和らげることができるかもしれません。

 しかし、「社会や他人の役に立てる人間でありたい」という希望を抱えながら、病気などで体の自由がきかなくなっているという場合、開きを埋めるのは簡単なことではありません。

 では、埋められない開き、解決できない苦しみを抱え、自分を否定してしまっている場合はどうすればいいのか。

 そこで大事なのが、自分を支えてくれている存在に気づき、解決できない苦しみを抱えている自分を認め、受け入れていくことです。

 私は、自分を否定する気持ちを手放すためには、次の4つが必要だと思っています。

 1.弱い自分を認め、自分を支えてくれている存在に気づくこと
 2.自分をわかってくれる存在に気づくこと
 3.変えられるものと変えられないものを見極め、変えられないものを無理に変えようとしないこと
 4.変えられるものを変えようと、一日一日を頑張って生きること

 これから、この4つについて、詳しくお話ししていきましょう。

<第4回に続く>

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