自分を肯定する第一歩。それは「弱い自分を認め、自分を支えてくれている存在に気づく」こと/自分を否定しない習慣

暮らし

公開日:2024/2/6

 人間関係が苦しい、周りの人と比べて落ち込んでしまう、自分で自分を認められない――。それらが原因で生きづらさを感じている方はいませんか?

 嫌なイライラ、怒り、つらさがスッと消える“4つの習慣”を、これまでに4000人以上看取ってきたホスピス医・小澤竹俊先生が考案。著者累計50万部を超える名医が、一度きりの人生を自分らしく、好きに生きる方法を教えます。

 私たちは誰もが、いつか必ずこの世を去ります。そのとき、自分自身に対して「お疲れ様でした」と思えるように、本当の自分らしさを見つけ、後悔のないよう前を向いて、今日という一日を生きていきましょう。

※本作品は書籍『自分を否定しない習慣』(小澤竹俊/アスコム)から一部抜粋・編集しました

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自分を否定しない習慣
『自分を否定しない習慣』(小澤竹俊/アスコム)

自分を支えてくれている存在に気づいたとき、自分を肯定できるようになる

弱い自分を認めて初めて、人は支えてくれている存在に気づくことができる

 解決できない苦しみを抱え、自分を否定する気持ちにとらわれているとき、その気持ちを手放すためにまず必要なのは、弱い自分、何もできない自分を認め、そんな自分を支えてくれている存在に気づくことです。

 自分を支えてくれている存在とは、自分のことを「Good Enough」(それで良い)と言ってくれる存在のことである、といってもいいかもしれません。

 支えてくれている存在に気づくことができて初めて、人は自分がかけがえのない存在であることを知り、自分を肯定し、心の穏やかさを得られるようになります。

 そして人は、自分が解決できない苦しみを抱えていること、何もできない弱い人間であることを認めることができて初めて、支えてくれている存在に気づくことができるのです。

支えてくれている存在に気づいたとき、人は変わり始める

 以前、40代の女性の患者さんに関わらせていただいたことがあります。

 末期のがんであったその女性は、最初のうち、常に「結婚し、子どもが生まれ、これからどんどん幸せになろうと思っていたのに、なぜ私だけが病気にならなければいけないのか」「私が、どんな悪いことをしたのか」という思いに、非常に苦しんでいました。

 私たちは、反復と沈黙を繰り返し、そうした彼女の言葉を否定せず、徹底的に聴きました。

 そして、あるタイミングで、「初めて病気をしたときに、どんなことを感じましたか」「どんなつらいこと、苦しいことがありましたか」と尋ねたのです。

 彼女からは「抗がん剤で副作用がひどく、口内炎で食事がとれなかったり、体がだるく、手足がしびれて家事ができなかったことがつらかったです」という答えが返ってきました。

 そこで私が、「苦しかったときに、あなたが頑張れたのはなぜですか」と尋ねると、彼女は「家族がいたからです」と答えました。

 彼女が変わり始めたのは、その瞬間からでした。

 抗がん剤の副作用の苦しみを乗り越えることができたのは、夫や子どもがいてくれたからであり、今までの人生も、家族や周りの人たちに支えられていたからこそ、自分は生きてこられたのだということに気づいたのです。

「どんなお子さんですか?」という私の問いに「どんなに私がつらくても応援してくれる、とてもかわいくて優しい子どもたちなんです」と答える彼女の顔は、それまで見たことがないくらい、明るく輝いていました。

過去の苦しかった経験を思い出してみよう

 この患者さんは、私たちに苦しみを伝え続ける中で、「もうすぐ、家族を残してこの世を去らなければいけない」という、自分ではどうにもならない苦しみを抱えていることを、少しずつ受け入れていきました。

 そのうえで、家族や周りの人が自分を支えてくれているということに気づき、そんな自分自身を肯定し、心の穏やかさを取り戻していったのです。

 同じように、私は、多くの患者さんが自分の支えに気づき、自分を否定する気持ちを手放していくのを目の当たりにしてきました。

 今、健康や仕事、お金、人間関係などで何らかの苦しみを抱え、自分を否定してしまっている人は、つらいかもしれませんが、過去の苦しかった経験を思い出してみてください。

 そして、なぜあなたがその苦しみを乗り越えることができたのか、なぜ今まで生きてこられたのかを考えてみてください。

 身のまわりの人、すでに亡くなった人、ペット、映画や音楽などの創作物など、何かしらあなたの支えになってくれた存在があったのではないでしょうか?

 そうした存在に気がついたとき、あなたも解決できない苦しみから生まれる、自分を否定する気持ちを乗り越えるきっかけがつかめるかもしれません。

<第5回に続く>

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