メンヘラクズ彼氏にフォークで鼻を刺された!? 「#鼻フォーク」で親しまる著者の実体験漫画にDVに立ち向かう勇気をもらう

マンガ

公開日:2024/2/16

メンヘラ製造機だった私が鼻にフォークを刺された話
メンヘラ製造機だった私が鼻にフォークを刺された話』(前田シェリーかりんこ/KADOKAWA)

 もし、自分が交際相手からDVを受けていたら、戦うことができるだろうか。自分が相手から暴力を受けていると認め、その証拠を集め、警察や相談機関に相談することは可能だろうか。今では、DV防止法があり交際相手に対して、被害者への接近禁止命令などの保護命令を出すことができる。しかし、心身ともにボロボロな時に、自分が被害者だと認めることは、とても勇気がいることだろう。

「メンヘラ製造機」の異名を持っていた前田シェリーかりんこ氏が、メンヘラクズ彼氏にフォークで鼻を刺されるというまさかの事態に陥る様子を描いた漫画エッセイが、『メンヘラ製造機だった私が鼻にフォークを刺された話』(前田シェリーかりんこ/KADOKAWA)だ。X(旧Twitter)で心にも鼻にも刺さる話と話題になり、「#鼻フォーク」で親しまれている。実際にあったDV事件の重い話のはずなのに鼻フォークという強烈な言葉に意識を持っていかれてしまい、コミカルにさえ感じるのは、著者のお人柄なのだろう。

 本書に登場するクズ彼氏は、なんでも他人のせいにする暴力野郎だ。理不尽な言いがかりを付けられた著者は彼氏の部屋に行くが、そこで彼氏から暴力を受けることになる。負けずに著者も対抗してしまったことから、彼氏のさらなる暴走がはじまる。彼氏が泣きながらフォークを突きつけてきたのだ。第三者目線で、泣きたいのは著者のほうだろと突っ込みを入れたくなるが、そこからのフォークで一突き……。何故、鼻を狙った!? 目や急所を狙わず、何故鼻の穴に綺麗に刺した? とショッキング過ぎて逆に冷静に考えてしまう展開が巻き起こる。

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 その後すぐ、彼氏と距離をおくために著者は逃げるのだが、怪我をして焦っているにもかかわらずとても理性的。ゴルフバッグで扉をふさいで逃げ、隣人たちに助けを求める。一方で、この時の彼氏の異常さは、もはやホラーとしか言いようがない。彼氏はふせがれていた扉を押し開けると、凄まじい形相で、著者が逃げ込んだ隣人の扉をゴルフクラブで滅多打ちにする。まるでホラー映画のようで心臓がバクバクしてしまった。隣人が呼んでくれた警察が到着し、どうにかこの場を切り抜けることができるのだが……。その時助けてくれた隣人たちは、その後も著者を支えてくれる仲間となる。

 注目してほしいのは、この事件を著者がどのように解決していくかだ。結末までぜひ読んでほしい。著者がこの事件に対して選んだ復讐の仕方は、彼女しか思いつかない突飛なもの。それは「この体験を漫画にする」ことだ。読めば読むほど、著者のハートの強さに尊敬の念が止まらなくなる。

 本書は、何かに迷っている人、お困り事に泣き寝入りしそうな人にぜひ読んでほしい。著者の諦めずDV事件に対処していく勇敢さは格好良くさえ見える。はじめの暴力シーンは血みどろバイオレンスな描写もあるが、鼻にフォークが刺さっても気丈に立ち向かった著者に勇気を貰える。また鼻にフォークを刺された著者の顔面に対して心配している人もいるかもしれないが、安心してほしい。フォークは抜かれ、無事、顔は元に戻る。

 著者と仲間たちに沢山の幸あれ。

文=山上乃々